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ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』

SNSで紹介されていた小説ガブリエル・ゼヴィンの『トゥモローアンドトゥモローアンドトゥモロー』が面白そうで読もうと思ったのですが、発売前だったので『書店主フィクリーのものがたり』を図書館で借りてきました。

面白くて1日で読んでしましました。面白さというのが希望を持って生きていこうとする人々の生活を読むことで、自分にも小さな勇気が湧いてくるような。そんな感情を持つことができる小説でした。

妻を交通事故で亡くした小さな書店経営者A.J.フィクリーが店に置き去りにされた赤ん坊を養女にすることから始まる物語です。フィクリーは意地悪な中年男でしたが、赤ん坊と出会うことで他人と繋がることを恐れなくなり、そして物語は進んでいきます。登場人物は普通にいるような人たちばかりです、新しく家族になったり、崩壊したりとアメリカで現在でも普通に起こっていることが描かれています。なぜ普通の人々の物語が胸をうつか、それはフィクリーが赤ん坊だったマヤからうけた愛情をまわりの人々、出版社の営業担当アメリア、ランビアーズ署長や妻の姉イズメイに振りまいていく、好循環を感じることができるからでしょう。

その良い影響をうけた人物の中で、ランビアーズ署長はかなりよい人物でした。フィクリーの影響で読書が好きになり、「署長独選読書会」を主催するまでになってしまうところも楽しかったです。そしてランビアーズがイズメイに恋をして告白をする時の会話も最高です。

「あんたは、とてつもない美人だよ」とランビアーズはいう。
「並ですよ」と彼女はいう。
「とんでもない」
「美しいからといって、ひとをたやすく誘惑できるわけじゃないわよ。このことは、生徒たちにもしじゅういいきかせているの」
「それが、表紙がひどい本は読みませんという女性のいうことですかね?」
「あのねえ、あなたに警告しているの。あたしは、表紙はいいけど、中身がひどい本かもしれないのよ」
彼はうめく。「そんなことぐらい、おれだってちょっとはわかってる。」

「告げ口心臓」

物語のなかにはフィクションの小説家も出てきます、「遅咲きの花」というフィクリーとアメリアが好きだという小説を書いたレオン・フリードマンがそうです。彼のサイン会をアイランド・ブックスで行ったところのエピソードもユーモアもありミステリアスな箇所もあり大変おもしろかった。欲をいえばもっと読んでみたい、そうなんです全体的にもっと長く読んでいたいという思いが湧いてきます。もうちょっと読みたい、でも腹八分目くらいがちょうどよいんだよという作者側の考えなのでしょうか。

この本を読む前まででも読みたい本が山のようにありました。題名から悪い予感はしたのですが、やはり読みたい本が増えてしまいました。フランクリン・オコナーやポーの小説は読んだことありましたが、ロアルド・ダール、ブレット・ハート、リチャード・ボーショなどまだまだ知らないことが多いなと感じることもできました。


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