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フランシス・ホジソン・バーネット『小公子』『小公女』『秘密の花園』
本屋に行ったら新潮文庫のところに『小公子』『小公女』『秘密の花園』が揃っていました。読んだことはないですが、ものすごく有名で揃っていたことになんとなく運命を感じて購入することにしました。3作品とも児童文学というくくりだと思います。小公子は川端康成の訳が子供向けにしてあるからそんな感じですが、『小公子』『秘密の花園』は児童文学というくくりが必要ではないおもしろい小説でした。翻訳者が違うことも影響しているのかもしれませんが、『小公子』は大人の世界に子供が紛れ込んだようなかんじがします。そして『小公女』と『秘密の花園』は子どもの世界から大人の世界をみているのようなかんじになっています。
『小公子』の面白さは、とにかくセドリックの思考です。彼の誰もを疑わない考えは常識を飛び越えます。それぐらいじゃないと嫌われ者のドリンコート男爵の心をひらくことはできなかったでしょう。セドリックが日本で大学生になったらマルチ商法にだまされるのではないかと心配になるほどです、逆にマルチ団体のカリスマになってしまう可能性もありますが。
『小公女』はセーラーの揺るがない自信が読みどころです。その脅威の精神力で金持ちであるときも貧乏になっても、他人にたいする態度は変わりません。逆にミス・ミンチン女学園の先生や生徒のほうが変わらないセーラーの態度に萎縮しだしていくところがおもしろ箇所です。
『小公子』も『小公女』も主人公に信念がありすぎてすこし面白みにかけます。そこは脇役がフォローしています。『小公子』は子どもと対等に政治談義をする食品小売店のホップスさん、セドリックと出会うことで靴磨き家業を成功させる幸運の持ち主ディック、360°全方位でいじわるをするドリンコート男爵などが話を盛り上げます。『小公女』は自他ともみとめるおばかな同級生アーメンガード、セーラーとの格の違いにうろたえ続けるミンチン先生、ミス・ミンチンに支配され続ける妹のアメリア、最後までいじめっこ役をまっとうする同級生ジェシーとラヴィニア、金持ちから貧乏人なったセーラーに変わらず忠誠心を持ち続ける召使仲間のベッキー、人間の品格を一瞬で見抜くインド人ラム・ダスなど多種多彩な登場人物が脇を固めます。
『秘密の花園』はメアリ、ディコン、コリンの三人のこどもがお互いに影響しあい成長していくところが爽やかな感動を与えてくれます。そして3人の中が深まっていくにつれ荒れ果てた庭園に生気がもどってくるところも読みどころです。3人にはだれも割ってはいることができぬまま話は終わるので、その他の登場人物では庭師のベンとコリンの母親は少しだけ目立つ感じです。ラストにはイギリスの自然を生かした美しい庭園の様子が目に浮かぶように感じられることができました。
『小公子』『小公女』『秘密の花園』は3作品とも少年・少女がつらいめに会いながらも生きる希望を持ちながら生きていく小説です。まったく別の小説ですが、今回は続けて読むことができたのは大変意味のあることだったのでは無いでしょうか。
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