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アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』③



モンテ・クリスト伯の誤算

1巻から4巻まで読んできて、モンテ・クリスト伯の復讐が終わるのかは彼の胸の内次第になってきました。すべての復讐の対象とその家族がモンテ・クリスト伯の操られるままとなっていいるからです。どのように復讐が行われるか、それだけが読者の興味となってしまっていたのではないでしょうか。モンテ・クリスト伯がカドルッスに自分の正体を明かし、その結果カドルッスが死にいたるところまでは計画通り進んでいたのにです。メルセデスがモンテ・クリスト伯がエドモンであることを知ったうえで、さらには偽りの罪で牢獄に入れられたあともメルセデスのことを思い続けたことをしったうえで、息子であるアルベールの命乞いをしてきたことが発端になります。

「おれはばかだった。」と、彼は思った。「復讐しようと決心したとき、心臓をむしり取っておけばよかったんだ!」

ワイド版岩波文庫『モンテ・クリスト伯』第6巻P229

復讐を果たすことのみを生きるのぞみとしてきたモンテ・クリスト伯の気持ちにゆらぎが生じてきた瞬間です。翌日に行われるモンテ・クリスト伯とアルベールの決闘、そこでどちらかが死ぬのかはモンテ・クリスト伯に委ねられています、しかしそれはこの時点ではです。

アルベール・モンセールの意外な行動

アルベールは決闘の場所に馬に乗ってきます、そしてその格好はネクタイにカラ、胸の開いた服に白チョッキというものでした。当時の決闘のしきたりにまったく則っていないため立会人の友人たちを驚かせます。さらにそのあとにアルベールがはっする言葉はさらに立会人を困惑させます。

「わたしは声高く声明します。伯爵、あなたの父えの復讐は、まさに正しいことだったのです。そして、息子たるわたしは、あなたがそれ以上のことをなさらなかったことを、むしろ感謝しないではいられません。」

ワイド版岩波文庫『モンテ・クリスト伯』第6巻P256

ここまでこの小説を読んできてわかったことは貴族たちは伝統をまもることで自分たちの権利を保ってきているということです。決闘を直前でやめる、しかも父親の敵討ちから逃げ出すことはまさに伝統から逸脱する行為です。立ち会った友人からしても自分たちの立場を怪しくするという意味で軽蔑する行動なのでしょう。それをわかったうえでのアルベールの行動は、なにを重要しするかということなのでしょう。

そして結末へ

物語はモンテ・クリスト伯の復讐とともに復讐あいてのこどもたちが次々に自立していくという展開となってきました。さきほどのアルベールの行動だけではありません。ダングラールの娘ユージェニーは親の決めた結婚から逃げ出し、芸術家として貧乏になるかもしれないが自由に生きることを望みます。ヴィルフォールの娘ヴァランティーヌはマクシミリヤンとの身分の差を越えた愛を望みます。これらはモンテ・クリスト伯の仕組んだことではないことが面白いと感じます。
第5巻と6巻にはノワルティが自分がフランツの敵であることを明かし、その結果フランツとヴァランティーヌとの結婚を破断にするところや、エデルがモンセール伯爵がフェルナンと名乗っていたときの悪行を告発するところなど読み応えがたくさんあります。たくさんのおもしろエピソードがあるため、物語の展開が多岐にわたっている感じはします。ですので最後の1巻でどのようになっていくのか、ますます楽しみでなりません。





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