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ガオ・イェン『緑の歌』

あるポッドキャスト番組で紹介していた漫画、台湾の漫画で日本のバンドや本が重要なアイテムとして出てくる漫画と説明されていました。題名を聞き逃してしまいましたが、いつか読んでみたいと思っていました。なかなか見つからなかったのですが、いつも行く本屋にあったのを見つけて購入しました。

同じ時期に購入した雑誌『イラストレーション・村上春樹と装丁』の表紙もガオ・イェンさんの作品でした。村上春樹の小説は映画『ドライブ・マイ・カー』の原作になった短編集しか読んだことないのですが、本の装丁に興味があったので購入してみました。読んでみるとガオ・イェンさんは村上春樹の『猫を棄てる』のカバーと挿絵を描いている著名なイラストレーターであることがわかりました。

雑誌『イラストレーション』に掲載されている『猫を棄てる』の挿絵はたぶん春樹少年を描いているのでしょうか。少年の孤独や不安な感情がわかる美しいイラストです、そして植物が日本のものと若干違うので不思議な感じもします。

『緑の歌』のカバーと目次の絵も植物や生き物が描かれています、ですが漫画の内容は台湾の市街が舞台で表現の方法が全く違うものとなっています。主人公のリュの孤独と不安な感情そのままな冷たい感じの町の風景が続きます。リュの表情もかわいらしさやはかなさを伴っていますが、彼女の感情をよく表しています。

リュがただか弱い女性ではなく、大学の授業を欠席したりCDを買うために一人で東京にいったりと大胆な行動をするところがギャップがあって面白いところです。はっぴいえんどの音楽も村上春樹の『ノルウェイの森』もナンジュンへの片思いな感情もすべて成長していくための養分として吸収されていきます。こう書くと悪女みたいですが、すべて運命的な出会いがあったように描かれています。

読んでいると感じるこのこっ恥ずかしい気持ちは何なんでしょうか。おもしろい小説を読んだり、音楽に感動して繰り返し聞いたり、映画を観ていろんな感情が沸き起こり居ても立っても居られない感じになったりします。その直後は自分が何者かになったようか気がするのですが、翌日にはそれが勘違いだったと気づき虚しい気持ちになったりします。そんな20歳のころの自分に戻りたいような絶対に戻りたくないような微妙な感情が沸き起こってくる作品でした。




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