『ビリー・サマーズ・下』スティーヴン・キング
上巻の舞台はイリノイ州南部の街でした、主人公のビリー・サマーズは小説家志望になりきってターゲットが現れるまで待ち続けるという役割があったのでその街から出ることはなく話は進んでいきました。下巻では最後の仕事を終わらせるためにアメリカ中を走り回ります。イリノイ州→オクラホマ州→カンザス州→コロラド州→ネバダ州→ニューヨーク州とすべて車で移動します。上巻での動きがまったくない状態から下巻になった途端に動きまくります、ロードノヴェルといった感じでしょうか。
上巻でディヴィット・ロックリッジとして生活しているときの近所付き合いをしているときに気をつけていることがありました。
ビリーがこれまで殺し屋として失敗しなかったのは自分に課したルールを守ってきたからなのだろう。こうゆうルールは下巻でも出てきます。
ビリーが海兵隊時代にイランで偶然手にした赤ん坊の靴をお守り代わりにしていました。そして今回の依頼のなかでもディヴィット・ロックリッジとして近所付き合いをしていた少女からもらったフラミンゴの絵をお守り代わりにするところは印象的です。キングはこのような小道具の使い方が上手いですよね。
このようなある意味ルールを決めそれを信じて生きてきたビリーにとって、クライアントの裏切りというのはわかりきったことだったのかもしれません。ドルトン・スミスというもう一人の自分を作り出したときから、復讐のプランができていたかのような流れです。
ビリーが小説を書くことになったのも、アリスという旅の仲間と知り合うことも運命だったのでしょう。この旅はビリーが自分の殺し屋としての最後の仕事というだけではなく自分の人生にけりをつけるという意味もあったし、書きかけの小説をアリスに託すという意味もあったのかもしれません。
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