古典初心者が読む瀬戸内源氏 巻一 ~秘密のデート
『源氏物語』巻一 瀬戸内寂聴 訳 講談社文庫
しばらくnoteを更新していませんでしたが、ようやく始動です。
現在NHKで放映されている大河ドラマ「光る君へ」で巷では源氏物語と紫式部がスポットライトを浴びてます。これを書いている私ことKは、歴史や古典には大変疎いのですが、頑張ってこの機会に瀬戸内源氏を読破したい、紹介したい!と意気込んでます。講談社文庫だと十巻、かなり長編なので、ビビッてますが…。
でも、読み始めると予想を裏切りこれが面白いんです。しかも本の文末に寂聴氏の注釈や物語の手引きもあり、親切ですよ。これを踏まえて読むと内容もわかりやすい。文章も今の言葉に置き換えられていて、小説のように読めるので嬉しいです。
巻一では、桐壺、帚木、空蝉、夕顔、若紫と五つの章から成り立ちます。
光源氏が誕生し母と死別、やがてこの世の人とも思えないほどの美男子に成長。そんな源氏の十七歳のラブハントが描かれます。
登場するのは、すこし年上の左大臣家の娘、葵の上。源氏は十二歳で元服して、彼女と結婚。源氏の後ろ盾を作る策略結婚みたいなものでしょう。案の定、葵の上は素直になれないお嬢様です。プライド高め意識高すぎて、源氏はこの正妻に寄り付きません。
続いて中流階級の空蝉に夢中になりますが、源氏が高貴すぎてフラれます。あと神秘的で官能的な夕顔を囲おうとしたり。源氏、かなりイケイケです。
そして、若紫の章で後に源氏に引き取られる少女、紫の上が登場。はたまた源氏の運命のファムファタル、藤壺の宮との危険な情事もあります。宮は源氏の父である帝の妃なのです。その藤壺の宮との密か事、それでそのあと…ヤバいです!
このふたりのバレたら終わりの恋の共犯関係が背景にあることで、物語がよりドラマチックに動き出します。そこが読ませどころです。
でもにくいのが、紫式部はこのふたりのメイクラブを描かないし、描写しないんです。暗示としてなんとなーくほのめかしてるだけ。ここすごいです。これって並みの文学じゃないですよね。
ここは、若紫の章の病気を患った源氏がその祈祷治療のため山寺を訪れるシーンです。僧侶の宿世の語りを耳にして、おそらくですが源氏は藤壺の宮との禁断の愛を思い出したのではないでしょうか。
一瞬、これって寂聴オリジナルの小説⁉と勘違いしそうになりました、私は。
源氏の罪、藤壺の宮の罪…劫罰の炎に焼かれるふたり…嗚呼、なんて。
そもそもこの物語の語り手は後宮に仕える女房という設定ですが、まるでそこは紫式部ではなく瀬戸内寂聴が語っているようで、なるほど“瀬戸内源氏”とはこういうことか、と腑に落ちたのでした。瀬戸内寂聴恐るべし。
今から千年も昔、紫式部という子持ちの一寡婦がこれからこの先どんな物語を紡いでいくのか目が離せません!そんなこんなを古典初心者のKが紹介していければ。物語を読む愉しみとはこういうことでしょうね。
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