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これでばっちり!基本からおさえてインフレ・デフレの達人になる!

インフレとデフレのおさらい

さてさて、いよいよ本題に移りたいところなのですが
なんの話からはじめたものか。

前回の経済入門のおさそい記事で貨幣観がどうのこうの言いましたが、いきなりはややこしい。
(←わたしの説明力不足のため・・・)
ということで、その辺はおいおいやっていくことにさせてください。


そんなこんなで
いろいろと考えたのですが、まずはみなさんも良く聞くであろうお馴染みの
「インフレーションとデフレーション」

ここから始めるのも悪くなさそうです。

同時に物価の変動をはかる消費者物価指数や、GDPギャップについても見ていきます!

インフレ・デフレは基本中の基本のように思えますが、意外と重要ですし、ニュースにもたくさん登場するのでここでしっかり確認しておきましょう!


需要と供給

簡潔に言ってしまうと
・インフレーション
とは需要に対して供給が足りていない状態(供給不足) 
デフレーションとは、供給に対して需要が足りていない状態(需要不足)
になります。

「需要」というのは、消費者が財やサービスを購入する量のこと。買いたい人が欲しい商品の量のこと。
「供給」というのは、生産者が財やサービスを提供すること。売る人が売りたい量のことです。


商品は「財とサービス」の2種類あります。
とは物品・モノのことで食べ物や衣服、車といった有形物
サービスとは教育や医療、警察や保険を売ることなど無形物のことです。


さてここで、まだみなさんの記憶に新しいであろう出来事で、
需要>供給 (供給不足)がおきた事があるので思いかえしてみましょう。

それが2020年のマスク不足です。
急に始まったコロナ禍で、マスクの需要が増えました。

ところが、みんな(消費者)が欲しいマスクの数はまったく足りないので、
値段が爆上がりしましたよね。
マスクインフレとでもいう状況が起きました。

マスクが足りなくて値段が上がったが、みんなが買っていた

まさに欲しい人(需要)に対して、マスク(供給)が足りない状況が起こりました。供給不足です。
景気がよくて需要がふえたわけではないのが悲しいところですね・・・

物価上昇=インフレではない???

ひとつ注意が必要なことがあります。

マスクの需要が増えて、値段が高くなりました。
が! 物価が上昇すること=インフレーションではないという事です。

・インフレーションは物価が上昇すること
・デフレーションは物価が下落すること

そう認識している方も多いと思います。

たしかにそういった側面もありますが、そのように認識しているとインフレとデフレをとらえ間違う可能性があります。

なぜなら「物価が上昇しているが、需要は減っている」、という場合があるからです。

もう一度おさらいになりますが、
インフレーションとは需要>供給なので、供給不足であり需要が増えている状態になります。

なので、物価の上昇=インフレーションというわけではありません。

少しややこしくなってきたでしょうか・・・

そもそもインフレーションとは「膨らむ」という意味です。
需要が増えて、どんどん経済規模が膨らんでいくというようなイメージですね。

そして、逆にデフレーションとは「縮む」という意味になります。
需要が減って、経済規模が小さく縮むイメージになります。


そう考えると、少しインフレとデフレのイメージがつかみやすくなりませんか?

さあそれでは、「物価が上がっているのに需要が減る」とはどのような状況なのかを見ていきましょう。


インフレはひとつじゃない

①コストプッシュ型インフレ

さぁ聞きなれない単語が出てきました!
しかし、これはまったく難しくありません。

言葉のとおり、「コスト=費用」が「プッシュ=押す」ことで生じるインフレのことです。


輸入される原材料やエネルギーの価格の値段(コスト)が上がっているので、最終的な価格が上がるインフレ、という事になります。

(「輸入される」というところがポイントです。輸入物品は、日本国内で製造されておらず、日本国民の所得にならないので厄介なのです。)


では、パン屋さんで考えてみましょう。

日本の小麦は約8~9割が輸入にたよっています。
最近では天候の影響による不作や、国際情勢などにより小麦の価格が上がっています。ですから、パン屋さんはまず小麦の仕入れの値段が上がっていることになりますよね。
さらに2022年現在、輸入される原油の価格があがっています。そうすると電気料金やガス料金も高くなります。

いままで1つのパンを作るコストは10円だったところが、今は20円のコストがかかるとします。
パン屋さんはしょうがないので、余計にかかった費用10円分を価格に上乗せして販売することにしました。

ひとつ100円だったパンが110円で売られるので物価が上がりますよね。
これが「コストプッシュ型インフレ」です。

仕方ないから値上げするパン屋さん
物価はあがっている


ここで注目するべき点は、パンの値段は上がった(物価の上昇)けれど、パン屋さんの収入は上がっていないという点です。高くなった材料分の費用を上乗せしただけで、利益が増えたわけではないからです。

そしてこのような物価上昇がいろいろな業種で起きて、さらにそこで働いているいる人たちの給料は増えないと考えてください。
パン屋さんに小麦を売る卸業者や、スーパーなども誰も収入は増えていないですよね。

給料が増えていないのに、モノの値段が上がるということは、今まで買えていた量が同じ値段では買えなくなるということです。

となると、今までは3個買っていたものを、2個で我慢しておこうとなります。

でました。これですよ。

まさに「物価は上がっているのに、需要が減る」という状況が出来上がりました!!

・・・・・
テンション高く言ってみましたが、これはかなりマズイ状況です。

パン屋さんは1日100個パンが作れるけれど、需要がない(パンが売れない)ので仕方なく1日80個だけパンを作ることにします。

そうするとパン屋さんの収入はますます減りますし、従業員も解雇されるかもしません。解雇された従業員は収入がなくなるので、さらに買い物をしなくなり、またまた需要が減っていく・・・

まさに悪循環!

実はコストプッシュ型インフレとは、デフレ化要因なのです。

このように景気が良くない(給料が増えない)のに、物価だけが上がっていく状況をスタグフレーションと言います。


ここでおさらいなのですが
インフレーションとは「膨らむ」という意味でした。需要が増えて、どんどん経済規模が膨らんでいくというようなイメージです。

しかしコストプッシュ型インフレとは、デフレを引き起こして需要が不足することで経済が縮小してしまう可能性がある。つまりインフレとは名ばかりで、実態は経済が縮んでいく隠れデフレーションなのです。

これはまさに悪いインフレというわけですね。

悪いインフレがあるということは、良いインフレというものもあります。
それでは次にそちらを見ていきましょう。


②デマンドプル型インフレ

こちらもまた聞きなれない単語が出てきました。

しかしこちらも怖くはありません!
このデマンドプル型インフレというものが、私たちが一般的に想像するインフレです。

デマンドとは需要のことで、プルは引っ張ることです。

つまり需要がけん引していく物価上昇になります。
需要が増えて、どんどん経済規模が「膨らむ」インフレですね。

ここでまたパン屋さんに登場していただきましょう。

1日に最大パンを100個までしか作れないパン屋さんがあります。

ですが、1日120個のパンを買いたいというお客さんがきました。パン屋さんは100個しか作れないので、100個しか売ることができませんでした。
これはパン屋さんが20個分の売り上げを損したことになります。

このような状況が増えると、パン屋さんは1日に作れるパンの量を増やそうします。従業員をふやしたり、思い切って工場を新しく建てる投資をするかもしれません。

すると、パン屋さんは売り上げが増えて収入がふえます。新しく雇われた従業員も収入がふえます。工場をたてるための建設業の人の収入もふえます。
収入がふえれば、その分お金を使う量もふえるでしょう。

どんどん売れるから、どんどん作って、どんどん儲かる


需要が需要をよんで、同時にみんなの収入もふえて、消費をふやす
ことになります。
そうすると需要>供給の状態へとなっていき、物価が上昇します。

これは「良いインフレ」です。
みんなが豊かになる物価上昇なので、もちろんこちらの方がいいですよね!


日本の現状

日本は長年デフレです

たしかに、今の日本では物価の上昇が起こっています。
しかし物価の上昇=インフレではなく、需要がどうなっているかも加えて総合的にインフレかデフレを判断しなければいけません。

今起こっているのはコストプッシュ型のインフレです。インフレとは名ばかりの、総需要が縮小しているデフレーションの状態です。


物価は上がっている

こちらのグラフを見てください。
物価がどれだけ上昇しているかを表しています。
0%だと前年と比べて物価は同じです。

出典 総務省

少しずつ物価が上がっているのがわかると思います。
22年4月に急に上昇しているのは、ウクライナ情勢がおおきく関わっています。

ちなみに、物価を計るのには3つの指数があります。
上のグラフにも3つの線がありますよね。
この線のそれぞれの違いを確認しましょう。


消費者物価指数(CPI)

消費者物価指数のことを「CPI」といいます。
これは物価の変動をあらわす指数です。

それぞれの線の違いは下記のとおりです。

総合(CPI) 青線
500品目以上の物価を対象に出されます。スーパーなどで、
決められた品目の値段がどれだけ変わったかを調べています。

生鮮食品を除く総合(コアCPI) オレンジ線
CPIから天候の影響を一時的に受けやすい生鮮食品を除きます。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI) みどり線
生鮮食品にくわえ、エネルギーは地政学的リスク(紛争やテロ)や投機的な影響があるので除きます。

一時的な影響が大きいものをのぞいた品目でみるほうが、より正確な物価変動がわかるのでこのようになっています。



21年の9月ごろから、「CPI」と「コアCPI」が0%を超えました。インフレ傾向のようにみえます。
しかし、この時点ではみどり線の「コアコアCPI」はマイナスになっています。
需要が足りず物価が下がっているという事です。

22年の4月からいよいよ「コアコアCPI」も上がってきました。輸入物価の上昇が様々な品目に影響を及ぼしはじめています。

しつこいようですが、これは景気が良くて需要がふえているから物価が
上がっているわけではありません。


今起きているコストプッシュ型インフレをわかりやすく言うなら、消費増税にとてもよく似ています。
買う量は増えてないのに出費が増える。なおかつ誰の収入も上がらない。
まさに消費増税みたいじゃないですか?

ほんとうにインフレになっているかは、需要が増えているかも見なければいけません。消費者物価指数が上がっているから日本はデフレを脱却した!というのは危険な判断です。

(日本は財やサービスを作り出す力(供給力)は十分にあるのに、消費する力(需要)が足りていないのは少し悲しいですよね。決して日本人がまじめに働いてないから景気が良くならない、というわけではないのです。)

GDPギャップ

さて、そうなると本当に日本は需要が不足しているのか気になりますよね?!

供給力に対して、需要が足りているかはGDPギャップを見るとわかります。
GDPギャップは、需給ギャップやインフレギャップ・デフレギャップとも言われます。

インフレギャップは、総需要が供給能力を上回ること(需要過多)です。
パン屋さんがパンを売り損ねることを防ぐために従業員を増やしたり工場を建てたりするような状況です。
この場合には設備投資、人材投資、公共投資、技術開発などのように各種の投資が必要になります。➡景気が良い

デフレギャップは、実際の需要が潜在供給能力を下回ること(総需要不足)です。パン屋さんは本来、パンを100個つくることができるが、売れない(需要がない)ので80個しか作らなくなるような状況です。
デフレギャップは不況の時に起きやすいです。価格が下がっても需要が増えないとデフレへと突入していきます。➡景気が悪い

この図を見てください。

出典 内閣府

0%から上の数値だとインフレギャップで、
0%から下だとデフレギャップ・需要が足りない状態になります。

コロナ以降は需要が大きく減少し、いまだにデフレギャップの状態です。日本はまだまだ需要不足な状態だということになります。
需要は不足しているのに、輸入物品の高騰によって物価は上がっている
コストプッシュ型インフレだということが分かると思います。

さらに、リーマンショックや震災、消費増税などの時期に、大きく需要が減っていることが分かります。
特に消費増税は、すこし需要が回復してきたかな?というときに、冷や水をかけるかのように需要を減らしています。完全にデフレ脱却ができていない時期に、消費増税をすることはデフレに逆戻りさせるので、まさに「デフレ化政策」ともいえるのではないでしょうか。


まとめ

今回はインフレーションとデフレーション、そして消費者物価指数、
さらに需要や供給についてお話ししました。
ニュースで物価が上昇しているー!インフレだー!などと見かけたときには、どの消費者物価指数のことなのか、どういったインフレなのか、などぜひ注意深くチェックしてみてきださいね。

それでは、今回でてきた言葉のまとめです。

1.インフレーション 需要>供給
  需要に対して供給が足りていない状態(供給不足) 
2.デフレーション 供給>需要
  供給に対して需要が足りていない状態(需要不足)
3.コストプッシュ型インフレ
  輸入される原材料やエネルギーの価格の値段(コスト)が上がっている為   
  最終的な価格が上がるインフレ
4.デマンドプル型インフレ
  需要がけん引していく物価上昇。供給能力を上回る総需要がある状態5.スタグフレーション
  
景気が良くないのに、物価が上昇していく経済現象のこと
  輸入物資の高騰によって起こるインフレ(コストプッシュ型インフレ)

6.消費者物価指数・CPI
  
500品目以上の物価を対象にだす物価指数
7.コアCPI
  CPIから一時的な影響を受けやすい生鮮食品を除いた物価指数
8.コアコアCPI
  CPIから生鮮食品とエネルギーを除いた物価指数
9.GDPギャップ(需給ギャップ)
  
経済全体の需要と、潜在的な供給力との差
10.インフレギャップ
  
総需要が供給能力を上回っている状態
11.デフレギャップ
  
実際の需要が潜在供給力を下回っている状態

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