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怖い話)家族全員孤立死の家

近所に廃屋がある。
いや、正確に言えば、築70年を超えるおんぼろ貸家であるから、廃屋とは、言い過ぎかもしれない。
ここに、三人兄弟妹が住んでいた。
三人兄弟妹ということ、妹に子供がいたこと以外、彼らの家族史はわからない。
子供は成人後、さっさと独立してしまい、その家には、長い間、三人兄弟妹が住んでいたが、彼らは、各々、干渉せず、割合、大きな家の各部屋に分かれて生活していた。
15年ほど前、一階の縁側の廊下で起居していた次兄が、遺体となって発見された。
死因は病死であったが、死後、1週間以上もたって発見されたため、遺体は青黒く変色し、悪臭がひどかった。
10年ほど前、長兄が死んだ。夏場であった。2階に起居していた長兄の死因も病死だったようだが、死後、かなり時間がたっていたようで、腐敗が著しく、溶けて原形をとどめぬほどであった。開け放たれた窓からハエが侵入して、部屋一面に、ウジが広がっていた。
異様なのは、兄弟妹とも、お互いの生死について一切の関心を持たず、死後かなりの長い時間、遺体が発見されなかったことだ。
残された妹は、2年ほど前に亡くなった。
彼女も病死であった。
発見が遅れ、たまたま近所を訪れた、工事業者が悪臭に気が付いて警察に通報したことから、発見された。
妹の遺体も、腐敗がひどく、下の畳まで腐敗していた。

現在も、その家は残されている。
仕事からの帰路、その家の前を通り過ぎる。軒先はすでに崩れ落ちていて、骨だけになっている部分もある。入り口のガラス戸は、住人がいるころ、お金がなかったせいだろうか、サイズの足らないガラスがはめられて、2センチほどの隙間が空いている。
その家の不気味な存在感はすさまじく、暗闇の窓に、白い人影を幻視して、おののくことがある。
それどころか、日中といえども、あの三人の姿が写ってしまいそうで、決して、カメラなど向けられるものではないと感じる。

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