9/3(日)日記

喫茶店の仕事。
14時、喫茶店が混みだした。
新規の4名様が来店し、客席がちょうど満員になった。

60歳の社員の店員が、トレーに乗せたお冷とメニューを客席に持っていく際に、

店内にある段差につまづき、
前方におもいきり倒れこみ、お冷4つをフロアにぶちまけた。

喫茶店の店内。
クラシックのBGM、グラスに氷を入れる音、
調節された声量のお客の会話が心地良いバランスで、
窓の外に照らされる日曜の街の路地に溶けていく。

視界には、
まさに、床にダイブ真っ最中の親父が1人。

バーン!ゴシャン!
キン!テンテンテンテン
ドガガ ギー

ただならぬ音が響く。

床と客席の下がビチョビチョ。

全国大会をかけた
ビーチフラッグ部のキャプテン
くらいの捨て身と清々しさ。

この社員さんは、少しプライドが高い。

雑巾を持っていきつつ、
大丈夫ですか?と言うと、

わずかな声で「どうしよ・・」と聞こえた。

社員「お、ああ、ああ!大丈夫だ!大丈夫!
おお、森野!
今は2023年9月3日だよな?」

うわあ、くだらない。と思った。
私「はい2023年ですよ。」

社員「いやあ、タイムスリップしてたわぁ。
信じてもらえるかわかんないけど、
お前にとってはこの一瞬で、
2年間三国志の世界にいた。」


私「もしかして、
こけた衝撃で、時空の裂け目に飛び込んで
タイムスリップしたってこと?」

社員「たぶんね」

私「劉備に会えましたか?」

社員「う、うん。劉備に会えた。」

私「すごい
・・・
Aさん、やめましょ」

社員「いやまじだから。」

私「歳をとってこけるのは、しょうがのないことです。」

社員「いや、マジで。
ポケットにおみあげあるし。」

私「映画とかの最後の方に
元の世界に戻った主人公がやっぱり幻だったんだって少し落ち込んだ後に、
やっぱり幻じゃなかっただ!って空を見上げるあれですね。あれをおみあげって言うんだ」

社員が、胸ポケットから何かを手のひらに出す。

私「ズボンのポケットじゃなくて、胸かよ腹立つ」

社員「ほら、小さい消しゴム。」

私「小さい消しゴムじゃん。
三国志の時代にまだ消しゴムないでしょ。」

社員「こ、この消しゴムを、5年後の未来、
テスト前の消しゴムを忘れた重要人物の高校生に、
渡してあげないと、いけないんだ、、、」

私「それ仕事で使ってた消しゴムじゃん。
準備不足の重要人物の友達に消しゴム貸してあげるだけの仕事かよ。
事務仕事にも程がある。
三国志の話は?」

社員「疑ってるなら、証明しろやくそ!」

私「キレないでよ。
タイムスリップしてない証明は
無理難題ですよ。」

社員「できないなら、もう鰓呼吸すんな」

私「鰓呼吸したことないです。」

私「僕は20歳くらいでタイムスリップはやめましたよ。
60歳でタイムスリップはちょっとイタイかも・・」

社員「60歳でタイムスリップって遅いかな?
じゃあもうこれで最後にしようかな」

私「タイムスリップ1度もしてないだろ。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?