普段ソーシャルゲームを遊ばない人、遊ぶ時間がない人にこそ遊んでほしい『リバース:1999』(ネタバレなし)
こんにちは、木霊トコです。この記事は筆者が今プレイ中の『リバース:1999』のいわゆる布教記事となります。ゲームがさほど好きでない人に是非おすすめしたいのです。私も普段ゲームはしないのですがこのゲームは本当におすすめします。
『リバース:1999』とはなんぞや?
具体的なストーリーだとかは早速お手持ちの端末でプレイするか、公式HPや以下の方々のnote記事をご覧になる方が良いと思います。
1.ストーリーについて
あらすじは以下のようなものです。
脚本は暗く重厚なものとなっていますが、ただ残酷な世界を描くだけではなく時代のうねりや不条理な社会に翻弄されつつも、その日その時その場所で、それでも生きていくことを決めた人々にフォーカスをあてています。
例えば、1・2章の舞台、1929年の2月14日のシカゴの描き方。歴史に造詣が深く勘の良い方はすでにお気づきかもしれませんが、この日は禁酒法下に栄えたマフィアたちによる抗争による「聖バレンタインデーの虐殺」が起きた日のことです。また1929年といえば世界恐慌のきっかけであるウォール街大崩落が起きた年でもあります。とはいえ、「2月頃の話でしょ。10月に起きるウォール街崩落と何が関係するのさ?」と思われる方も多いかもしれませんが、大戦後の好景気に湧く世界においての投資家、マフィア、そして一般労働者や貧民。神秘学者もただの人間でもそのような社会において賢明に生きる人々の姿が描かれます。話の主軸はストームを知る、いってしまえば未来人ですが、当時の人々の生活にも目が向けられているので「時代」を単なる舞台装置のレベルに留めず主役に昇華しています。
時代によってはただの一般市民がヴェルティたち神秘学者をその特異な見た目や能力から「気持ち悪い」と差別したり、ヴェルティの所属する聖パブロフ財団も公的な機関としての硬さ・不条理さ・エゴが見え隠れしたり、敵もそんな差別が存在する世界への復讐という論理に基づいて財団と敵対するレジスタンス組織だったりと影が常に差し込む世界となっています。分かりやすい悪も正義もいません。ただ各々人類も神秘学者も必死に生きているだけです。
それでも差別や不合理に負けず、自身の理想や希望を追い求めて生きているヴェルティたち。架空の20世紀での彼女たちの物語は難解で複雑でありつつも、2024年という現代の私達プレイヤーにとってそう縁遠くはなく、むしろ身近に感じられるに違いありません。ノベルゲームという物語に重きを置くゲームがありますが、魅力的な物語をアニメーションや音声で表現する「リバース:1999」はノベルゲームの域を超え、もはやちょっとした映画かもしれません。ボイスだけ外国語に変えることもできるので洋画のような楽しみ方もできます。ストーリーは後で見返すこともできるので時間のあるときに一気に楽しむ事もできます。
余談ですが、精いっぱい生きるヴェルティたちの描き方として百合があります。というかヴェルティがどうしようもない女たらし。口説き文句が武器。敵味方問わず作中女性陣のほとんどがヴェルティにお熱です。すぐ口説く。
但し、過酷な人生の経験からくる血の通った誠意のこもった等身大の言葉なので、軽薄さやご都合主義などは感じられずプレイヤーをイラつかせません。むしろ生き方や誠実さにこちらも惚れる。
補足ですが、女性同士の恋愛を主軸にしたゲームではありません。念の為。そのような要素もあるだけで、百合が好きな人は嬉しいし、そうではない方も「友情」として受け取れるほどには描写は控えめなので安心してください。
2.キャラクターについて
先程出てきたヴェルティだけでなく、様々なキャラクターが登場するのですが、彼らがまたいい。
見た目も中身もかわいい女の子は無論、イケイケなおじ様・お姉様、翻訳機で話すワンちゃん、英国紳士のリンゴ、鏡の欠片までいます。キャラクターデザインと設定に開発者の「好き!」が溢れてる。しかも全員に声、設定と大量のフレーバーテキスト付いてくる。彼ら一人一人に歴史上の事件や文化、著名な作品(映画「善き人のためのソナタ」、文学「不在の騎士」、演劇「夏の夜の夢」)などのモチーフがあり、元々知っていていてもそうでなくとも開発者の教養に驚かされます。
3.ゲーム性について
もちろんソーシャルゲームですので当然遊びやすさも気になるところです。私は遊んだことのあるゲームの数はけして多くありませんし、ゲームを遊ぶことよりも設定やテキスト、グラフィックに注意が向いてしまうので詳しい説明はできませんが、手軽な操作と飽きづらさのバランスが取れているという印象を持ちました。まずは以下の公式映像の58秒から2分13秒までを御覧ください。
映像の通り、直接プレイヤーが画面を操作するのではなく、テーブルゲームのように手札をカードを用いてゲームは進行していきます。場に出ている味方の人数がそのままカードの使用・移動のできる手数となります。カードは毎回無作為に配られ、その都度限られた手数をどのように活用するかを決めなければなりません。カードの効果を吟味してどの順番で使えばカードを有効に使えるかどうか熟考しなくてはなりませんし、使用を合体のための移動としても使うなど頭脳パズルのような側面もあります。その時の盤面に合わせて考えること、戦略が大きく変わり、操作は簡単、しかし飽きない、というゲーム体験を作っていると感じました。独特なルールは懇切丁寧に説明が行われるほか、実践できるよう練習用ステージが大量に用意されているためとっつきやすくなっています。
ボイスやエフェクト、独特なシステムこそあれど、基本はカードゲームのようなルールですのでスマートフォンで普段ソーシャルゲームを遊ばない人でもきっと楽しめると思います。
4.開発者のこだわりと知識に満ちた一つの作品
普段プレイするソーシャルゲームを話すことはインターネット上の世界を狭めかねない、という言説を耳にしたことがあるので少々不安なのですが、そんな心配が霞むほどに、このゲームをオススメしたい!
特に、普段はゲームよりも読書したり、美術館や博物館を訪れたり、文化・教養系の番組を視聴したりして文化や歴史を知識的に勉強するのが好きな方、マニアックな知識(世界史、神話、ビートルズやキュビズムなどの文化・カルチャー史、宇宙開発etc)が持つ方、おそらくきっとはまられると思います。
とにかく、開発者のゲームに対してのこだわりというものがひしひしと伝わってくるんです。UIデザイン、テキストデータ、作中の設定、イラスト、サウンド、全てにおいてしっかりしたクオリティです。お金のかける箇所を吟味して設計している気がします。
たとえば、今では最早珍しくなくなってしまった「全編フルボイス」という宣伝文句ですが、このゲームでは英語、日本語、中国語などの多言語のフルボイスなのに加えてキャラクターの出身地に合わせて言語のイントネーションを変えているんです。英語のボイスの場合、アメリカ英語、イギリス英語、仏、伊、独、中国、日本(所謂カタカナ英語)がきちんと意識されて、声優さんが吹き込んでいらっしゃいます。
また広報用動画を一本とっても、世界観に合うよう1930年代から1960年代にかけて隆盛したカートゥーンアニメーションに似せた映像を1950年代の画面規格でつくるという気合の入れよう。
ほかにも、定期的に開催されるイベントなども当時の(当記事時点では1960年代)の史実に即したものです。そしてそれらに対しての手間工夫のかけ方がまたいいんです。筆者がプレイし始めた時は「リメカップ窃盗事件」なるイベントが開催されていましたが、この事件は実際に1966年3月のサッカーのカップが盗まれるという事実を元に当時のイギリスのスウィンギング・ロンドンやヒッピー・ムーヴメントといった若者の(というかこれを皮切りにカルチャーに若者という層が現れたというのがこの時期の特徴なんですが)文化的潮流と絡めたりして「時代」の魅力、特色を徹底的に活かしたイベントとなっていました。
5.なぜゲームを普段しない人におすすめできるのか
これまで「リバース:1999」の魅力を紹介してきたわけですが、最後にゲームを普段しない人に勧めたいのかをお話したいと思います。
まず、「リバース:1999」はストーリーやグラフィック、練りに練られた世界設定などのゲーム以外の要素も力が入っています。ゲームのシステムもテーブルゲームのようなルールで普段ソーシャルゲームを遊ばない方にも馴染みやすいです。
次に、「リバース1999」は時間を多く割かなくとも快適に楽しめるように設計されており、勉強・仕事が忙しかったり他の趣味に時間を使いたい、という方にピッタリです。
まとめ
とまあ、万人受けはしないけれどもハイクオリティな作品世界と物語、遊びやすい丁寧な開発設計、開発者の狂気のようなゲームへの拘り、と刺さる人には刺さるのがこの「リバース:1999」という作品です。私はすでにもはや串刺しにされました。ではまた。
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