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【ネタバレ感想】劇場版名探偵コナン「100万ドルの五稜星」

 「100万ドルの五稜星」見ました。
 情報量が多く、何度も見たくなる魅力がありますね。去年の映画とはまた違った名作に感じました。

 めちゃくちゃ長いので暇でしょうがない時等にお読みください。

 本感想では映画本編だけでなく、コナン最新105巻、及びまじっく快斗最新5巻までのネタバレを含みます。



歴代で一番「まじっく快斗」

 「意思を継ぐ者がいる」というティザーでのコナンのセリフが肝要で、三世代に渡る、北海道に眠るお宝もとい兵器にまつわる物語でした。ゴールデンカムイかな?
 おじさんの登場人物が多く、名前と関係性を覚えるのに苦労したのですが、私は二度目でやっと全貌を網羅できました。

 脚本の構成が本当に秀逸で、快斗と盗一の親子関係から広がる物語として、「誰かの意思を継ぐ」ということのあらゆる側面を描いており、一本筋が通っていて素晴らしかったです。

 同じようにカップル+キッドの構成で作られた「紺青の拳」が京極さんと園子のラブロマンスが強めだったのに対し、本作は平次の告白シーンがあるとはいえ、中森警部と青子が出てきたり、ラストの飛行カットや「怪盗コルボー」のネタバラシなど、主軸としてはどちらかというとキッド寄り、まじっく快斗寄りの物語だった印象です。
 それにしてもゲスト声優にも関わらず、全編に渡って「変装した黒羽盗一」とかいう作中最大級のビッグネームを演じた大泉洋さん、凄すぎる。

 コナンにおけるキッドは、基本的に素の姿は見せず、キザでミステリアスで紳士的という風に描かれてきていましたが、まじっく快斗での素の快斗はまだまだ幼く、『キッド』という名前に相応しくかなりおちゃらけた少年です。青子や白馬も、コナン側の同世代である新一や蘭たちに比べると実はかなり子供っぽいです。
 今作のキッドの登場BGMがサーカス風だったり、歯をニッと出し、ケケケッと笑う『怪盗キッド』独特の笑い方だったり、まじっく快斗をかなり意識しているなと感じました。

 象徴的なシーンは、中森警部が拓三を庇ってカドクラに撃たれるシーンですね。
 まじっく快斗では、黒羽家は自宅に母親である千影が不在なことが多く、快斗は普段青子に食事を作ってもらって、中森親子と食事を一緒にとることが多いんですね。中森警部は快斗がキッドの正体とは露知らず、息子同然に可愛がっています。
 つまり、中森警部は怪盗と刑事というライバル関係なだけでなく、好きな女の子の父親であり、快斗の最も身近にいる大人でもある。父親を亡くした(と思っている)快斗にとって、もう一人の父親のような存在です。
 そんな中、自分を追って北海道まで来た中森警部が撃たれてしまい、怒りに我を忘れて紳士の仮面が外れてしまうキッド。自分が遠因となって生死の境を彷徨う中森警部にショックを受けて、雨の中立ち尽くすキッド。重傷の父親のために北海道へ飛んできた青子を見守るキッド……こんなんオタク全員見たかったやつだって。

平次、伊織、沖田、鬼丸、そして聖

 金や陰謀のために暗躍する汚いおじさんたちに対し、完全に部外者の平次は、事件に対応しつつも自分の恋路に必死なのも美しい対比でした。和葉へのピュアな恋心がまぶしく、聖・紅葉という恋敵たちやコナン・蘭の先輩カップルからの茶々入れがありつつ、高校生らしいやり取りがたくさん見られたのも良かったです。蘭と平次が二人で会話するシーンなんてこれまでほぼなかったのでは。
 最近の映画は警察や黒の組織といった大人たちの物語が主軸になっていたのもあり、まじ快組含め高校生組が等身大で青春している様子が描かれているのが逆に新鮮で、コナンのラブコメと言えばこれだよな!と基本に立ち返った感覚さえありました。
 
 残念だった点を挙げるとすれば、紅葉・伊織の使い方でしょうか。もう少し何か一捻りあったらよかったな、と思いました。
 
優秀な伊織が、あてずっぽうであちこちにお嬢様を連れ回しているのが、「緋色の弾丸」の時の秀吉・由美カップルのように、大人の都合で色々な観光名所を無駄に回らされているな…という印象になってしまったので。
 原作では、伊織が元ゼロであり、安室さんの部下である風見とは警察学校時代の同期だったことが判明しているので、今作のキービジュアルに伊織がいた時、そのあたりを匂わせてくることを期待していたのですが、特になかったですね。 
 とはいえ、平次の告白を阻止するためだけに大量のスタングレネードをヘリに用意し、「よし、援護や!」「かしこまりました」で街中に爆弾をぶん投げまくるという爆笑必至のめちゃくちゃさは、流石あの安室さんの同僚やってただけのことはあると思わされるところもありました。

 土方歳三がキーパーソンの映画で、YAIBAの沖田と鬼丸が出てきたのも熱かったですね。二人とも既にコナンには出ていましたし、沖田が出てくることが分かっていた時点で鬼丸の登場は予想できましたし(CVも前から土方さんと同じ津田さんだし)、唐突感は個人的には感じなかったです。
 六代目沖田総司が剣道界では有名であるという点に言及されていたのも良かったですし、沖田の五段突きが映画で見れたのもめちゃくちゃテンション上がりました。
 土方の声を津田さんに指名したのは青山先生ということで、鬼の副長である土方と鬼丸が繋がっており、沖田の前世の記憶が鬼丸の怒号に反応していたので、コナン世界での鬼丸は本当に土方の血縁or生まれ変わりなのではとも思いました。映画のテーマとも合いますし、そうだとしたら熱すぎる。

 この映画のダークホースと言えば、やはり公開前から発表されていたゲストキャラクターの一人、福城聖でしょう。
 青山先生が「主人公でも通用するビジュアルにした」と語り、作中でも女性ファンがついている描写があるほどの容姿、医大生で居合の達人という過積載設定、CVにはラノベアニメの主人公を多く演じられている松岡禎丞さんという、圧倒的な主人公ポテンシャルを持っているにも関わらず、和葉に横恋慕した時点で絶対に負けるのが決まっていたキャラでもありました。悲しい。刀構えるところキリトすぎた

 自ら親の意思を継ぐキッドや、恋のライバルである平次とあらゆる面で対になるように造形されているのが分かるので、見る度に彼の抱えている親のしがらみや境遇について、描かれていない点も色々考えさせれる味わい深い良いキャラクターでした。
 父から深く愛されているのにこうなってしまったのが、リアルな毒親の教育を受けた結果という感じがして、本当に切ないし苦しいです。
 「お前の夢はええんか」「もう忘れたよ」「…忘れんなや、アホが!」の会話は、見る度に涙なしでは見られなくなります。聖の投げやりな言葉に平次が苦しそうな、悔しそうな顔をしているのも切ない。
 どうにか福城聖を幸せにできないものか…色々やらかしているので、流石にしばらくは塀の中だとは思いますが。

来年の映画の予想

 来年の映画、ファンの間では結構予想されていた「長野県警」で当たりでしたね。それに加えて小五郎もメインとは…!
 長野県警が好きという人は多いと思いますし、私も大好きな三人ですが、ライト層に長野県警の認知度がどれぐらいあるのかはいまいち読めないですね。
 実際、映画が終わった後、周りのお客さんから「最後の声って誰だった?」と言う声を何回か聞きました。

 長野県警組は、現実の長野県警に「長野県警を優秀に描いてくださってありがとうございます」と青山先生が感謝されたことすらある、コナン界の警察の中では屈指の有能キャラたちです。
 長野県警が揃っている回は「コナンがいなくても事件が解決するのでは?」というレベルの有能さを見せるため、「長野県警がいる回は眠りの小五郎をやらない」というジンクスがあります。
 そのため、来年は眠らないまま事件の解決に貢献する、「水平線上の陰謀」以来のカッコいい小五郎の活躍が見られるかもしれないのが激アツです。最近のおっちゃんはポンコツ一辺倒だったのでこれは楽しみ!

 コナン映画といえばラブロマンスの要素も必須ですが、長野県警がメインとなればやはり大和警部と上原刑事の恋模様が描かれることを期待してしまう人が多いはず。
 上原刑事は、長年思い続けている相手である大和が巻き込まれ、死んだとされた事故の捜査のために、関係が疑われる地元の名家に嫁入りして寿退社するという荒業をやってのけている女性で、その後大和の生存が分かり、いろいろあって夫が亡くなったため、旧姓に戻して刑事に復帰しているという、未亡人属性ながら幼馴染に一途な、コナンのヒロインの中でも一風変わった経歴を持っています。
 大和は上司と部下の関係だからという理由で一線を引いているのですが、二人は明確に両想いなのが示唆されているので、何か進展があるのではと期待せざるを得ません。

 また、諸伏高明警部は黒の組織への潜入中に自決してしまった、スコッチこと諸伏景光の兄です。
 公安への所属自体も身内には秘密にしなければならないため、景光の殉職は知らされていないのですが、弟が公安に配属され殉職したことにも薄々勘付いており、毛利小五郎の弟子である安室さんが景光の友達で公安関係者であることにも、弟の遺品と思われるスマホを受け取った時点で自力で気付いて黙っているという状況です。驚くべき優秀さ。
 「警察学校編」で描かれていますが、諸伏兄弟は両親を逆恨みで殺害されており、更に子供の頃好きだった女性も事件で亡くしているという、安室さんに負けず劣らないほど悲惨な境遇にあります。

 つまり、来年の映画は安室さんが出てくる可能性も極めて高く、景光について何か言及される可能性もあります。また安室さんの上司で、元々長野県警に勤めていた黒田兵衛や、景光と幼馴染だったことが分かっている群馬県警の山村ミサオ警部が出てくる可能性も高いです。
 地方警察がここまでメインで出てくることは今までなかったので、どんな映画になるか今から楽しみですね!

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