「PALLET」第一話
あらすじ
人々は生まれつき色を持つ。それを潜在色と呼ぶ。潜在色は赤・橙・黄・青・紫・白・黒の7種類と言われている。世界は潜在色を中心に考えるようになり、非常色を用いてバルドルに評価された絵を描くことで取引を行い、戦闘色を用いてバルドルに評価された絵で戦うようになった。バルドルに評価されないブランは、店主デンより息子アンに外の世界を教えて欲しいと頼まれる。潜在色が純白のブラン、潜在色が無色のアン。二人に共通するのはバルドルに評価されない。二人は自らの存在価値のため、理想の世界を作るためブランの父の組織に所属しているエリナと共に人類に色を授けた純色探しの旅に出る。
用語解説
潜在色
→自分が生まれつき持っている色のこと。種類は赤・橙・黄・緑・青・紫・白・黒。
人々は潜在色に応じて自分に適した仕事に就くことが多い。
Ex. 赤の就職先→スポーツ選手など【体力が大事な仕事】
橙の就職先→ヘルパーなど【優しさが大事な仕事】
黄の就職先→アイドルなど【華やかさが大事な仕事】
青の就職先→科学者など【繊細さが大事な仕事】
紫の就職先→政治家など【二面性が大事な仕事】
白の就職先→公務員など【相手の色に染められるのが大事な仕事】
黒の就職先→芸術家など【何物にも染まらないのが大事な仕事】
潜在色を失うと人でなくなるか、死ぬと言われている。潜在色は非常色としても戦闘色としても価値が高いため、一部【潜在色狩り】が行われているとも言われている。
純色
→人々の潜在色を塗りつぶす色。潜在色の種類と同様、純赤、純橙、純黄、純青、純紫、純白、純黒が存在する。この色は単独で生きているが現在はどこかの地で長い眠りについているとの噂。昔からの伝説であるため、この純色を探し求める組織もある。純色は継色者のみ使用できる。継色者は純色の色の準ずる色しか使うことが出来ない。(Ex.純赤の継承者は赤色のみしか非常色も戦闘色も使用できない)
継色者
→純色を継承している者。継色者は純色を探せる『目』を宿している。組織に狙われるため、通常純色であることを隠して生活している。
非常色
→現代で言うお金の役割をする色。取引をする際はこの色を用いて絵を描く必要がある。白と黒以外は存在している。国際色機関により作られている。よって勝手に作ることは禁止されている。
戦闘色
→戦いの際に用いる色。取り扱えるのは営業許可が認められた店舗のみである。基本町に一つしか取り扱える店はない。通常は使用されないが、護衛として一家庭に各色一種類は所持している。非常色と混ぜて使ってはいけない。
バルドル
→非常色、戦闘色で描いた作品を評価するバーコードリーダーのような機械。これをかざすことにより描いたものが具現化する。配合した色の組み合わせによって色力を上げる。
色力
→作品の価値。非常色の場合、色力が上がれば上がるほどより良い対価を求められる。戦闘色の場合は色の配分や潜在色との相性が良いなどで特性の力が上がる。(白との違い:色力の上り幅は1.5倍、白は2倍のイメージ)
ディスクライブ
→自分の潜在色を出現させ、非常色や戦闘色と合わせて描くこと。
コンクリート
→非常色又は戦闘色と自分の潜在色を合わせて描いた作品を具体化させること。
メインベース色
→戦闘色、非常色、潜在色を使用した際の一番割合を占める色のこと。メインベース色によって具現化に適した画がある。(同じ割合の配合の場合潜在色がメインベースになる)また、戦闘色は色によって具現化した作品に特性を付与する。
赤→戦闘色では作品の【耐久力】を付与する。メインベース色にする場合適正画は【無機物】。
橙→戦闘色では作品の【バランス】を付与する。メインベース色にする場合適正画は【植物】。
黄→戦闘色では作品の【知名度】を付与する。メインベース色にする場合適正画は【人】。
青→戦闘色では作品の【独創性】を付与する。メインベース色にする場合適正画は【気象】。
紫→戦闘色では作品の【攻撃性】を付与する。メインベース色にする場合適正画は【動物】。
白→自分が具現化した作品の付与した能力を【倍にする】。メインベース色になれない。ただし純白はメインベース色可。
黒→相手が具現化した作品の付与した能力を【消す】。メインベース色になれない。ただし純黒はメインベース色可。
第一話『WHAT,S COLLAR?』
〇ノワールのアジト『ヴァニラ』廊下
エリナ・ロータ(21)、手に【純黒】と書かれた瓶を持ちながら逃走。追うヴァニラの部下。
部下「待て!!」
エリナ、曲がり角を曲がる。ノワール・フレーイシュマン(34)と遭遇。ノワール、エリナを突き飛ばす。転倒するエリナ。
ノワール「まったく、人の物を盗んだら泥棒と学校で習わなかったんですか?」
エリナ「お前たちの物ではない!!」
ノワール「あなたたちの物でもないですよ。さぁ、大人しく返しなさい。今返せば苦しまずに殺してあげますから」
エリナ、瓶を見つめる。
エリナ「私がここに来た目的はこいつだ。だから…死んでも渡すわけにはいかない」
エリナ、瓶を開け液体を口に流し込む。エリナの顔の4分の1が真っ黒になる。
ノワール「純黒を飲むとは自殺行為ですね」
ノワール、背中に背負っていた筆を取り出し、コートの中から戦闘色(紫)を取り出す。
ノワール「ディスクライブ」
潜在色(紫)と戦闘色を混ぜ空中に虎を描く。
ノワール「コンクリート」
バルドルをかざし具現化。
ノワール「深淵に潜む檮杌{マンティコア}」
T「ベース:紫(100%)」
空中に描いた虎が動き出す。エリナの右腕に噛みつき引きちぎる。エリナ、右腕を抑え倒れこむ。右肩から大量の血が流れ出る。
ノワール「あなたは純黒に飲まれて死にます。その前に回収させて頂きましょうか」
ノワール、エリナの首を絞め、口に手を突っ込む。エリナ、腕にかみつく。
ノワール「まだ、随分と元気ですね!!」
ノワール、エリナを押さえつけ戦闘色を取り出そうとする。エリナ、左腕でポケットから筆を取り出し描き始める。
エリナ「(嗚咽しながら)ディスクライブ」
ノワール「無駄ですよ!!戦闘色なしで…」
エリナ「コンクリート」
エリナ「窮鼠の一噛{ジャスト・カウンター}」
エリナ、ノワールを蹴り上げる。足には赤の鉄板。
ノワール「潜在色だけじゃ描けないはずが…」
エリナの足元を見るノワール。足元には大量の血。
ノワール「血を戦闘色の代替とは…なかなかやりますね」
肩で息をしながら右腕を拾うエリナ。ノワールを睨みつけるエリナ。
エリナ「コンクリート」
エリナ、床下にバルドルをかざす。
エリナ「蘇芳染奈落{ブラジリン・ホール}」
T「ベース:青(25%)血(75%)」
バルドルをかざしブラックホールを具現化。エリナ、ブラックホールに引き込まれる。ノワールの後ろから集まる部下。
ノワール「逃げられましたか…これじゃ他も動き出してしまいますね」
ノワール、後ろを振り向く。
ノワール「急いで彼女を始末し純黒を回収しなさい!!」
部下「はっ!!」
〇同・『色探部屋{デューラールーム}』
ドアを開けるノワール。世界地図と 2人の磔。磔された人間の目はそれぞれ橙、黄の目の色をしている。世界地図を叩くノワール。
ノワール「逃がしませんから」
■『アンファング シュタット』(朝)
〇同・カイサ宅 ブランの部屋(朝)
ブラン・カイサ(19)、自宅にて絵の練習中。赤の絵の具を取り出す。絞り出そうとするも中身が出ない。
ブラン「弱ったなぁ…」
ブラン、部屋を出る。
〇同・リビング(朝)
ブラン、階段を降りてくる。ビアンカ・カイサ(45)、朝ごはんの支度中。ビアンカ、ブランの方を振り返る。
ビアンカ「あら、どうしたの?まだ朝ご飯出来ていないわよ」
ブラン「いや、絵の具が切れちゃって」
ビアンカ「あら、そうなの?朝ごはん作ったらお母さん、買いに行くわよ」
ブラン「いや、デンおじさんから借りるから」
ビアンカ「あんた、またツケにする気?いい加減にしなさい。デンさんに失礼でしょ?」
ブラン、俯く。ビアンカ、朝食の支度を再開する。
ビアンカ「いい?あなたは非常色が取り扱えないんだから、言わばデンさんに対して無銭飲食をしているようなもんなのよ!」
ビアンカ、後ろを振り返る。ブランが居ないことに気が付く。
ビアンカ「あの子ったら!!」
〇アートショップ『デン』店の外(朝)
木造の民家のような見た目。ブラン、店のドアを開ける。
〇同・店内(朝)
店主のデン・リルバーン(42)、居眠りしている。ブラン、大きく息を吸い大声で呼びかける。
ブラン「おはようございます!!」
デン、飛び起きる
デン「バカ野郎!いきなり大声出すな!!心臓に悪いだろ!!」
ブラン「もう営業時間中でしょ?それよりも赤貸して」
デン「戦闘色か?それとも普通の絵の具か?」
ブラン「僕が普通の絵の具以外選ぶと思う?」
デン「お前の場合、むしろ普通の絵の具の方があり得んだろ」
ブラン「どういう意味?」
デン「絵の具が勿体ないってこと」
ブラン「あー!こっちはお客さんだぞ!!」
デン「冗談だよ。いくつ必要だ?」
ブラン「3つ」
デン「一応聞くが、非常色は?」
ブラン「ないから出世払いで!!」
デン、深いため息をつく
デン「ったく、ブランよぉ…いつまで出世払い続ける気だ?」
ブラン「そんなこと言ったって、僕の絵じゃバルドルが評価くれないんだもの…」
デン「はぁ…何で非常色を扱えないんだよ?白が潜在色であっても非常色も戦闘色も扱えてるだろ?」
不貞腐れるブラン。
ブラン「僕に聞かないでよ」
デン「ちゃんと潜在色診断してもらったのか?」
ブラン「それで白って診断されたって。前にも話したでしょ?」
デン「(ボソッと)ならあいつももしかして…」
ブラン「ん?」
デン「いいや、何でもない。それよりもブラン、出世払いの代わりにやって欲しいことがある」
デン、ポケットから写真{アン・リルバーン(15)}を取り出し渡す。
ブラン「誰この人?」
デン「そいつはアン。俺の息子だ。まぁこう言っちゃ何だが、俺と似ないで大人しい奴なんだよ。そんな息子にな、外の世界があることを教えてやってくれないか?」
ブラン「外の世界?」
デン「あいつはずっと自分の世界しか見ていない。あいつに光を与えてほしい」
ブラン「アン君に何があったの?」
目を逸らすデン。デン、無理矢理な笑顔を作る。
デン「とにかくブランみたいなやつだったら仲良くなれるんじゃねぇかと思ってな」
照れるブラン。
ブラン「そんな褒めないでよ~」
デン「ほんと簡単だな」
ブラン、デンを睨む。
デン「冗談だ。じゃあ頼んだぞ。アンはそこのクリス公園に居るから会いに行ってやってくれ」
デン、赤の絵の具をブランに渡す。
ブラン「もう、勝手だなぁ」
ブラン、写真を見る。
〇クリス公園 ベンチ
アン、公園に居る子どもを描いている。直後頭を抱えだすアン。
クラスメイト①「どうして君は潜在色がないの?あ、さては人じゃないんでしょ!?」
クラスメイト②「うわ、こっちに来るな!!俺の色が無くなったらどうするんだ!?」
アン、くしゃくしゃに紙を丸めて、放り投げる。風に流される紙。アン、フードを深く被り立ち上がる。公園を出るアン。すれ違いで公園に入るブラン。
ブラン「この公園に居るのか…どこにいるのk…痛い!?」
ブランに紙が当たる。丸めた紙を開くブラン。子どもの絵が描かれている。
ブラン「上手いなぁ…僕もこういう風に描ければなぁ…にしてもこんなにくしゃくしゃにして勿体ない…誰が描いたんだろう?」
ブラン、くしゃくしゃの紙をポケットにしまう。ブラン、公園に居る人物を見渡す。写真と見比べる。首をかしげるブラン。
ブラン「どこにも居ないじゃないか…うん?そういえば」
ブラン、後ろを振り返る。遠目にアンの姿が見える。
ブラン「あの子、アン君じゃないか?」
〇アートショップ『デン』店内
掃除をするデン。ドアを開けるアン。
デン「アン?どうした今日は早かったな」
アン、無視して二階に上がっていく。下から声をかけるデン。
デン「今日、ブランと会ったか?」
振り返るアン。
アン「誰?」
アン、二階に上がり部屋に入る。直後ドアを開け入ってくるブラン。
ブラン「アン君ってもう帰ってる?」
デン「あぁ、ついさっきな」
ブラン、ポケットから紙を取り出し勢いよく見開く。
ブラン「アン君がこんなに絵が上手いなんて知らなかった!!」
階段を上がろうとするブラン。ブランの肩を掴むデン。
デン「何をする気だ、ブラン!?」
ブラン「いや、この才能があるなら今の世の中、思い通りに出来ますよ!バルドルでも最高の色力が認められますって!!」
ブラン、階段下から声をかける。
ブラン「アン君!!君の才能は外で披露するべきだよ!!その才能があれば…」
ドアを開け部屋から出てくるアン。
アン「いきなりウザいんだけど。気持ち悪い」
アン、ドアを強く閉める。戸惑うブラン。
ブラン「僕マズいこと言ったのかな?」
デン「…少し、奥に来てくれ」
〇同・作業室
キャンパスボードなど画材道具が乱雑に置かれている部屋。作業机の丸椅子に座るブラン。デン、書類を一枚渡す。
ブラン「これは」
デン「ブランも受けた潜在色診断書だ。結果を見てほしい」
ブラン、書類の一番下に目を通す。潜在色の欄に「無色(not collar)」と記載。
ブラン「無色って…」
デン「あいつは…潜在色が無いんだ。生まれつき」
ブラン「そんな…潜在色がないと!」
デン「そうだ。戦闘色、非常色が扱えない。あいつはあれだけ絵が上手いのにバルドルに評価をされることがない。あいつが…引き篭もった原因がこれなんだ…」
〇同・アンの部屋
ベッドに入り込むアン。アンの机に大量に置かれている丸められた紙や破られた紙。破られた紙には父と笑顔で肩を組む絵。
〇同・作業室
デン「ブランの診断が誤診ならあいつにも希望があるんだけどな…」
ブラン、号泣する。
デン「おいおい、いきなり泣くなよ!」
ブラン「申し訳ないです!!彼の気持ちを知らずにずけずけと話して…」
デン、頭を掻く。
デン「いや、俺が悪い。ブランに言わずにアンのことを頼んだからな…」
ブラン「僕、彼に何て謝れば…」
デン「ブランは悪くない。俺がアンの現実から逃げて他人に任せたのが悪い…」
ブラン「(泣き声で)デンさん…」
デン「情けねぇんだが親として、何て声をかけてやればいいかわかんねぇ。潜在色がないなんてある奴が理解できるわけないんだからな…」
ブラン「僕に頼んだのは…」
デン「そうだ、ブランなら書けない、評価されない辛さを理解できると思ったからだ。アンは一人ぼっちだ。アンの側にいてくれないか?」
ブラン「もちろんですよ!…まずはきちんと謝ってきます」
ブラン、作業室のドアに向かう。天井にブラックホールが出現。天井からエリナ(3分の1が顔が黒い)が落ちてくる。ブラン、振り返り驚く。
デン「何だ!?」
純黒『随分と遠いとこまで来たな。ここはどこだ?』
ブラン「誰!?何の声!?」
エリナ、血を吐きながら立ち上がる。
エリナ「余計なことは喋るな、『純黒』」
デン「純黒だと!」
ブラン「えっ純黒?」
エリナ「何でもない。突然お邪魔して申し訳…」
エリナ、再び吐血し倒れる。
純黒『無理すんな、もう半分近く潜在色を失っているんだからよぉ』
ブラン「大丈夫ですか!?」
ブラン、エリナに近づこうとするもデ ンが引き留める。
ブラン「デンさん!!」
デン「この子に触れるな!!お前も感染するぞ!!」
ブラン「どういうことなの!!」
デン「こいつが本当に純黒なら、触れたらお前も潜在色を喰われる」
ブラン「どういうこと…?そんなこと聞いたことないって!!一体何を言ってるの!!第一純黒って!」
デン「お前もこの状況を見ろ!!」
顔が半分黒くなっているエリナ。
デン「この子の潜在色が黒に染められているのがわかるだろ。もうこの子は…」
ブラン、デンを振り払いエリナに近づく。
デン「ブラン!!!」
ブラン「それが助けない理由にならない」
エリナの左腕を掴むブラン。エリナの体が白く輝きだす。エリナから黒色が除かれていく。純黒、エリナの右腕から出てくる。
純黒『貴様!!何をした!!』
ブラン「この力は何…?」
純黒、ブラン口に飛び込む。
純黒「貴様の潜在色を貰ってやる!!」
デン「ブラン!!」
純黒、ブランの口から出てきてエリナの左手に握られている瓶に入る。
純黒「こいつは最悪だな、まさかお前がそうだとは」
ブラン、自分の顔を触る。
ブラン「黒くなってない…」
デン「ブラン、お前はもしかして…」
ブラン「どういうこと…?」
デン「ブラン、お前の潜在色は…純白だ」
〇同・寝室
エリナをベッドに寝かせるデン。デン、ポケットから筆と戦闘色(青)を取り出し絵の具を筆に塗る。
デン「ディスクライブ」
デン、己の潜在色(橙)と合わせて筆に塗る。エリナの右腕を描く。
デン「コンクリート」
デン、バルドルをかざす。右腕に色がつき動き始める。
デン「臨時逓腕(オルタナティブ・ピュグマリオン)」
T「ベース:橙(50%)青(50%)」
デン「とりあえず、応急処置だ。後でワニスを塗っておく。ただ、完全に元通りにはならんだろう」
エリナの顔を覗き込むブラン。
デン「彼女が心配か?」
ブラン「そりゃね。いくら知らない人であってもあんな姿を見たら…」
純黒『こいつの実力不足が悪いんだよ』
ブラン、純黒が居る瓶を睨む。
ブラン「さっきからこいつ、何?態度デカくない?」
純黒『それはこっちのセリフだ』
ブラン「何、どういうこと?意味わかんない」
デン「…ブランはほんとに何にも知らないようだな」
ブラン「どういうこと?」
デン「少しだけ純色たちの話をしよう」
ブラン、しかめっ面になる。
デン「そんな顔をするな。ブランにもわかりやすく話すから。まず、質問だが潜在色は大きく分けると何種類ある?」
ブラン「7種類でしょ?」
デン「そうだ。そしてこの純黒はこの潜在色の祖先の一つにあたるんだ。純黒の他に純赤、純橙、純黄、純青、純紫、純白がある。これらを総称して純色と呼ぶ。この純色が今の私たちの世界を作ったきっかけになったと言っていい」
純黒『だからお前たちに潜在色があり、戦闘色やら非常色が生まれたのは俺たちの力を恵んでもらった結果なんだよ』
ブラン「僕はその恩恵受けてないし」
デン「そうだ。なぜブランが今まで戦闘色も非常色も使えなかったのか。それはブランが純白の継色者だからだ」
ブラン「継色者?」
デン「通常の潜在色はあくまでも一色しか使えないことではなく、適正色という意味に過ぎない。だから、潜在色が赤の人でも赤色以外使用することが出来る。だが、ブラン、お前は純白以外の色を使うことが出来ないんだ」
純黒『正しくは純白に近い白、まぁだいたい5種類くらいの白しか使えないってことだ』
ブラン「僕は戦闘色や非常色が使えなかったのって」
デン「お前に合った色じゃなかったからだ」
純黒『にしても継色者とか出てくるのはな。また始まるのかもな』
ブラン「始まるって?」
純黒『…ほんとお前って何にも俺たちのこと知らないんだな』
ブラン、ムッとする。
ブラン「知らなくてすみませんでした!!」
デン「俺が説明するから。純色はな、純色同士で戦争していたんだよ。自分色に染めるために」
ブラン「戦争…」
純黒『俺たち純色はな、継色者を通じて戦わないと真価を発揮しないんだよ。この継色者が誕生しているってことはな、戦争のカウントダウンが既に始まってるってことだ。まぁ俺からすれば今更自分色に染めたいなんて面倒くさいけどな。大人しく寝れる環境さえありゃ良い』
デン「なら、なぜ彼女と行動している?何の目的があるんだ?」
純黒『むしろこっちが知りたいっての。こいつらが俺を勝手に起こすして奪い合いしてまで必要としたんだからな』
デン「必要としただと?」
目を覚ますエリナ。
ブラン「あ、目を覚ましたね」
エリナ、ベッドから起き上がりデンが作成した右腕を動かす。激痛が走り苦悶な表情になるエリナ。
デン「やめておきなさい。まだ、動かせる程時間は経っていない」
デンを睨むエリナ。
エリナ「私には時間がない…自分の潜在色が無くなる前に報告しなくては」
ブラン「その心配ないよ」
エリナ「はぁ?何を言って…」
ブラン、瓶を指さす。純黒、不貞腐れた表情でエリナを見る。エリナ、ベッドから立ち上がる。
エリナ「どういうことだ!!なぜあいつが瓶の中に戻っている!?」
ブランを指さすデン。
デン「こいつがお前を助けたからだ」
照れるブラン。
ブラン「いやー大したことやっていないですよ~」
エリナ「私の!!私の潜在色は!?」
デン「無くなっていない。安心しろ」
エリナ、ベッドに座り込む。
エリナ「だが純黒の侵食を防げるなんて一体何が…?」
デン「まぁ、純白を持っていたおかげで…」
エリナ「純白!?今なんと!?」
デン「だから純白と…」
エリナ「純白様は!?純白様はどこに!?」
デン、ブランを再度指さす。エリナ、ブランの前で跪く。
ブラン「急になんですか!?」
エリナ「やっとお会い出来ました。純白様」
エリナ「私、エボニー所属、シアン・マディナ部隊、小隊長エリナ・ロータと申します。私はあなた様を探しておりました。ヴァイス・カイサ様、あなたの父上殿のご命令で」
デン「ヴァイスだと!?」
ブラン「父さん…!」
〇ヴァイスのアジト『エボニー』戦略室
世界地図を眺めるヴァイス・カイサ(??)。横に並ぶシアン・マディナ(38)。
シアン「エリナ達が心配ですか?」
ヴァイス「あぁ、そうだな」
シアン「全員は無事ではないかもしれませんが…エリナなら大丈夫です」
一呼吸するヴァイス。
ヴァイス「純色を誰にも揃えさすにはいかない。私たちが揃えるんだからな」
シアン「そうです。そのためにも…」
〇アートショップ『デン』・寝室
エリナ、ブランに手を差し出す。
エリナ「純白様の意思を継ぐ、ブラン様に協力をして頂きたい」
ブラン「僕の力をですか?」
エリナ「今、世界中で純色の奪い合いが発生しています。世界にある7色の純色を一つに集合させてはならないために、あなたの目が必要です」
ブラン「僕の目がなぜ必要ですか?」
エリナ「あなたは気づいていないでしょうが、純色が潜在色の人には純色までを導く目を宿しています。実際に体験してみた方がわかると思います。ブラン様、自分の潜在色を意識しながら目を閉じてください。そしてそのまま目を開けてください」
ブラン「わかりました」
ブラン、困惑しながら目を閉じる。直後目を開く。目が白濁している。
エリナ「今純白様の目が白濁しています。何か見えますか?」
ブラン「薄ら赤い線が伸びています」
エリナ「それが純色への道筋になります。薄らということはまだ近くにはないということですね」
デン「一つ聞かせてくれ。ブランが見えているのは純白の在り処なのか?」
エリナ「はい。そうです」
デン「なら、なぜお前たちのアジトを指してないんだ?お前たちが純白を持っていないのか?」
エリナ「…私たちは純白様を奪われました。それを取り戻すために私は純白様の目を持つ、ブラン様を探しに来ました」
デン「なら、聞かせてほしい。お前たち、さっき純色を一つに集合させないために行動していると言った。でも、純黒が言うには必要としたのはお前たちだと話している。それに別の組織から純黒を奪っているのは紛れもないあんたの組織だ。純白以外の純色を手に入れている理由がないだろ?純色を集合させたいのはお前たちの組織じゃないのか?」
エリナ、苦笑いを浮かべる。
エリナ「鋭いですね。そこまでわかっていらっしゃるなら私たちの本当の目的を伝えます」
エリナ「私たちの目的は…純色を全て集めユートピアを作り上げることです」
デン、驚き呆れ顔となる。
デン「ユートピアとか、こりゃ恐ろしいなそれが出来た暁にはお前さんたちのボスが教祖様か?」
エリナ「もちろん、このユートピアは強制するわけではありません。今のこの潜在色を望むなら変えないでも大丈夫です。私たちはあくまでも自分たちのユートピアを作るのではなく、皆さんのユートピアを作るんですから」
苦笑いのデン
デン「…俺たちはとんでもない奴を助けてしまったのかもな…ってブラン?」
目を輝かせるブラン。
ブラン「その意見、大賛成!!」
〇『アンファング シュタット』キリコ丘
座りながら酒を一気飲みするシャク・デット(50)。後ろには敬礼している部下たち。シャクの隣には鎖に繋がれた人物が土下座している。シャク、土下座している人の頭を上げる。目は漆黒。目線先にはデンの家。
シャク「お前たち、人から借りたものを返さないやつってどう思う?」
部下たち「クソだと思います!!」
シャク「人から盗んだものを返さないやつってどう思う?」
部下たち「よりクソだと思います!!」
シャク「そんな奴から根こそぎ奪うのは」
部下たち「自然の摂理!!」
シャク、立ち上がる。
シャク「さぁ、返してもらおうか、純色を」
〇アートショップ『デン』 寝室
頭を抱えるデン。
デン「もしかして共感したのか、ブラン…」
ブラン「当たり前じゃん!!デンさんはそんな世界、望まないの!?」
デン「お前も大人になれって…そんな甘い世界じゃないことは、お前が一番痛感してるだろ」
ブラン「だからこそじゃん!!」
デン「は?」
ブラン「世知辛い世界で誰が生きたいの!!この人たちは僕たちの理想の世界のために純色を集めているんだよ!?協力しない方がおかしいじゃん!!」
デン「あのなぁ、ブラン…」
ブラン「デンさんは年を取り過ぎたんだよ!!そんな保守的でどうするの!?この考えが理解できないなんて…」
デン「目を覚ませって!!」
一同静まり返る。
デン「いいか、理想はな…一番絶望に近いんだ。夢見るのは一人で十分だ」
ガラスが大量に割れる音。
エリナ「なんだ、もう敵が来たのか!?」
デン「この地域にも敵が紛れていたのか!!」
シャクの声「おい!!居るんだろ!!純黒さんよぉ!!」
ブラン「いきなり何すんだ…」
部屋を出ようとするブラン。ブランの肩を掴むデン。
デン「私が引き留めるからお前たちは逃げろ」
デン、ドアに向かう。
ブラン「僕も行くよ!!」
デン「お前では足手まといだ」
ブラン「でも!!」
デン「お前は俺に出世払いするんだろ?なら、生きろ」
部屋を出て行くデン。
〇同・店内
仁王立ちをしているシャク。シャクの背後には銃を構える部下たち。部屋の奥から出てくるデン。
デン「そんな乱暴なことしなくてもいいだろ」
シャク「お前が盗人か?」
デン「一体何のことだか…」
部下の一人が発砲。デンの腹部から出血。跪くデン。
シャク「とぼけるなよ。いんだろ、純黒が」
デン「何のことだか…」
デンを蹴とばすシャク。
シャク「答えないなら探すだけだ」
デン「待て…」
部下たちがデンの肩に発砲。デン、倒れこむ。
シャク「無駄死にだな」
〇同・アンの部屋
響く発砲音。アン、布団に入りガタガタと震え始める。
〇同・店内
部屋の奥から飛び出すブラン。デンの倒れている姿を見る。
ブラン「デンさん!!!」
シャク「お、さてはお前が純黒所有者だな」
ブラン「お前、デンさんをよくも!!」
部下たち、ブランに襲い掛かる。ブランの後ろから部下たちに飛び蹴りを喰らわすエリナ。エリナ、ポケットから戦闘色(青・赤)を取り出し、胸ポケットから筆を取り出す。
エリナ「ディスクライブ」
己の潜在色(青)と戦闘色(赤・青)を使って刀を描く。
エリナ「コンクリート」
バルドルをかざし具現化。
エリナ「藤牡丹宗近(ハイドレンジア・バルムンク)」
T「ベース:赤(50%)青(50%)」
エリナ、刀を部下たちに振り下ろす。血飛沫が舞う。
シャク「ほう、なかなかやるな」
エリナ「貴様、ルージュの一員か?」
シャク「俺を知ってるとはな」
エリナ「乱暴な真似はよしてもらおうか」
シャク「純黒を隠さなきゃ、こんなことしないんだよ」
エリナ「私が持っている」
シャク「は?」
エリナ「私がヴァニラから純黒を奪ったと言ったんだ」
シャク、満面の笑みを浮かべる。
シャク「見つけた」
シャク、筆を高速で取り出す。もう片腕でバルドルを取り出す。
シャク「ディスクライブ」
己の潜在色(赤)と戦闘色(紫)を使い、刀を描く。
シャク「コンクリート」
バルドルをかざして具現化。
シャク「燦燦と輝く村正(クリムゾン・レーヴァテイン)」
T「ベース:赤(50%)紫(50%)」
シャク、エリナに刀を振り下ろす。真っ向から受けるエリナ。
シャク「お前がエボニーの一員か!」
エリナ「いかにも」
シャクの腹を蹴るエリナ。シャク、店の外に飛ばされる。
エリナ「ブラン様。ここから逃げてください」
ブラン「でも!デンさんが!!」
エリナ「ブラン様は死んではいけません」
店の外に出るエリナ。血を吐くデン。
ブラン「デンさん、しっかりしてデンさん!!デンさん!!」
〇同・アンの部屋
震えているアン。
アン「助けて…誰か…」
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