PALLET 第三話

第三話「いってきます」

〇『アンファング シュタット』キリコ丘 頂上

シャクの赤色の刻印が光り始める。

アン「なんだ、あいつの体…」

ブラン「何が起きてるの…?」

エリナの声「まったく、禁忌を犯しているのはどっちかしら」

アンとブラン、振り返る。全裸でボロボロの状態のエリナ。二人とも目を逸らす。

ブラン「エリナさん!!服着てください!!」

エリナ「服?あぁ、そういえばあいつに切られたんだった」

アン「そんなこと、忘れないで下さい!!」

戦闘服を描き、具現化するエリナ。シャクを見つめる純黒。

純黒『あいつら…純色に近づく気か?』

シャク「乱世の梟雄よ、赫灼たる唐紅の血を啜り、我が肉体を受肉し、祀り、三位一体の理と為せ」

シャクの赤色の刻印が浮かび上がり、巨大な龍を描き具現化。

シャク「滅死大災害(アポカリプス)」

黒龍がシャクを飲み込み、赤々と燃え上がる。口から紅炎を吐く。紅炎を避けるアン、ブラン、エリナ。

ブラン「一旦、シェルターに避難しよ!!」

ブラン、アンを引っ張る。しかし、アン、足が動かない。

アン「ごめん…体力が…」

ブラン「アン君!!」

シャク「消し炭となれ」

紅炎を吐くシャク。アンたちの前に立ち3本目の腕で紅炎を受けるエリナ。

ブラン「エリナさん!!」

エリナ「ぐっ!!」

エリナの3本目の腕が消滅する。ブラン、手を繋ぎながらアンを背負う。

エリナ「まずい!早く入ってください!!」

シェルターに入るブラン、アン、エリナ。
 

〇同・シェルター内

過呼吸のアン。仰向けで息を整える。

ブラン「アン君!!」

アン「ごめん…運動不足で…」

エリナ「アン様は少し休んでてください」

シェルターの外に出ようとするエリナ。ブラン、エリナの裾を掴む。振り返るエリナ。真剣な眼差しのブラン。

エリナ「純白様?」

ブラン「エリナを犠牲にして助かるつもりないからね」

エリナ「ですが、純白様…」

ブラン「命令だよ、僕たちと一緒に戦うって」

微笑むエリナ。

エリナ「父上殿と同じですね。ほんと」

ブラン、笑顔になる。

ブラン「エリナさん、あいつの禁忌って何なの?」

エリナ「それは…」

純黒の声『あの刻印、純赤と似ている』

ブラン「似ている?」

純黒の声『あいつら、純色を作ろうとしている。それが禁忌だろ?』

エリナ「そう…あれは国際色機関の7つの禁忌の一つよ」

純黒の声『それに…お前の存在も禁忌だろ?』

ブラン「エリナさんが…?」

純黒の声『こいつの潜在色に侵食した時から人間にない違和感があった。そしてさっきの戦いで確信に変わった。お前、人間じゃないな?』

エリナ「…今は詮索しないで貰えませんか?カイサ様に禁じられておりまして…」

純黒の声『だってよ、どうすんだ、純白様はよぉ?』

エリナをじっと見つめるブラン。

ブラン「…ちゃんと話してくれるんだよね、父さんは」

エリナ「私からも伝えます」

ブラン「…父さんから真相聞くまでこれ以上聞かないよ」

エリナ「純白様…ありがとうございます」

ブラン「それと、条件」

エリナ「何でしょうか?」

ブラン「純白様呼び禁止ね」

エリナ「それはさすがに…」

ブラン「じゃあ、名前で呼んで」

エリナ「…かしこまりました。ブラン様」

起き上がるアン。

アン「ごめん、何とか休めた」

エリナ「そうしましたら」

ブラン「反撃開始だね」
 

〇同・キリコ丘頂上

紅炎を吐くシャク。シェルターは無傷。

シャク「紅炎が効かないとはな…そんなに色力が高いのか」

シャクM「というか…」

× × ×
潜在色を発現させるアン。
× × ×

シャク「あいつの潜在色が何故灰色だった…?灰色の潜在色は存在していたのか…?第一あいつら純黒しか…」

ハッとするシャク。不敵に笑う。

シャクM「そうか、居るんだな。もう一人」

シェルターが開く。3人出てくる。

シャク「やっと出てきたか」

3人、刀を抜く。

シャク「刀で討伐するとは…」

シャク「龍も舐められたもんだな」

紅炎を吐くシャク。ブラン、刀を片手で構える。

ブラン「いざ、断刀」

斬撃で紅炎を切り裂くブラン。斬撃を避けるシャク。

シャク「あいつ!!片腕で軽々と!!」

シャク、横を見る。空中で居合の構えのエリナ。

エリナ「余所見してたな」

空中を蹴るエリナ。シャクを一瞬で横切るエリナ。直後血が噴き出すシャク。

シャク「ぐぅ!!」

エリナ「やはり固い。今ので切り落とせないとは」

龍の尾で空中から叩き落されるエリナ。地面にめり込む。

シャク「こんな程度で!!俺を抵抗する気か!!」

体から砲台が出てくる。

シャク「滅殺!!」

砲台からミサイルが発射される。爆発する丘。

アンの声「コンクリート」

空中に突如出現するアンとブラン。

シャクM「あいつら、いつ!?気配がまるで…」

アンたちの背後に巨大なエリナの第四の手。

シャクM「こいつら、あいつの掌に隠れていたのか!!」

シャクの目の前で惑星が具現化。

アン「曄然煌々繧繝日輪(ヨウゼンコウコウウンゲンニチリン)」

T「ベース:灰(60%)白(20%)黒(20%)」
惑星が爆発する。アンとブラン、掌に入る。掌が閉じる。地上にはボロボロの姿のエリナ。

エリナ「はっ!!」

掌が消える。エリナの背後に現れる掌。掌が開き中から出てくるアン、ブラン。

アン「あいつ、倒せたかな」

エリナ「いや、逃げられましたね」

ブラン「嘘、あの爆発から!?」

エリナ「むしろ、劣勢と踏んで最初から逃げられるよう戦っていました。やられました。奴らは」

エリナ「私たちの情報を持ち帰った」

アン、意識を失い倒れこむ。ブランも引っ張られ倒れこむ。駆け寄るブラン。

ブラン「アン君!!しっかりしてアン君!!」
 

〇アートショップ『デン』 店内

お店に入るブラン。車いすで出迎えるデン。

デン「ブラン、アン目を覚ましたぞ」

ブラン、目に涙を浮かべる。

ブラン「良かったぁ…」

デンに抱き着くブラン。

ブラン「デンさん、いつも迷惑かけてごめん…」

デン「馬鹿言うんじゃねよ、そんな言葉お前から聞きたくないっての」

デン、ブランの肩を掴む。

デン「お前の明るさでこっちは救われてんだ」

ブラン、再び強くハグする。
 

〇同・寝室

ドアを開けるブラン。ベッドに座り窓の外を見るアン。

ブラン「アン君」

振り返るアン。

ブラン「体調大丈夫?」

アン「まぁ、何とかね。やっぱ純黒の力は恐ろしいよ、やっと黒さが取れたよ」

ブラン「…目を覚まして良かった」

アン「エリナさんは大丈夫なの?」

ブラン「うん。もう体を動かしても問題ないって」

アン「そっか…」

沈黙する二人。

ブラン「僕さ、エリナさんと純色を一緒に探そうと思うんだ」

アン「うん」

ブラン「その…無理を承知で言うんだけど」

アン「行くよ」

ブラン「え」

アン「何で行かないとでも?」

ブラン「だってこの旅はアン君に関係ないものだから…それにまた危険な目に遭わせるかもしれないのに…」

アン「何言ってんの?」

肩を掴むアン。

アン「俺と一緒に描きたい世界、まだ出来てないだろ?」

ブラン「アン君…」

アン「それに、敵は俺のことも認識したんでしょ?ってことは狙われるのも時間の問題でしょ?」

ブラン「それはそうだけど…」

手を差し出すアン。

アン「ブランと一緒なら大丈夫」

ブラン、微笑み手を掴む。

ブラン「そしたら体力をつけなきゃね」

アン「なら、ブランは絵心学べよ?」

笑い合う二人。
 

〇『アンファング シュタット』

ブラン、アン、エリナの3人。エリナの手元には純黒の瓶。見送りに来たビアンカとデン。

ビアンカ「ブラン!忘れ物ない?大丈夫?」

ブラン「大丈夫」

デン「アン」

アン「なに、父さん」

デン「…いつでも帰ってきなさい」

アン「…世界を俺色に染めあげたらね」

優しく微笑むデン。

デン「そうか」

エリナ「お母様。ご子息のブラン様を命に代えてもお守りします」

涙を浮かべるビアンカ。

ビアンカ「…私の息子、夫をよろしくお願いします」

エリナ「かしこまりました」

ビアンカにハグをするブラン。

ブラン「今度は3人で生活しようね!!」

頷くビアンカ。

エリナ「さぁ参りましょう。ブラン様、アン様」

アン「…俺には様いらないんだけど」

エリナ「大事なブラン様のパートナーですから。慣れてください」

ブラン、アンを見る。

ブラン「でも良かったの?」

アン、ブランを見る。

アン「何が?」

ブラン「まだ、体が回復しきってないんじゃないの?」

アン「いつまでも、この町に居るわけにいかないだろ。俺たちも早く合流しないと」

ブラン「でも…」

アン「それに」

ブランの背中を叩くアン。

アン「ブランがいざとなれば背負ってくれるだろ?」

ブラン「何回もするわけないだろ!」

じゃれあう二人。エリナに頭を下げるデン。

デン「うちの息子も頼みます」

エリナ「任せてください!!アン様は…ブラン様と私を勇敢に守ってくださいました。今度は私の番が守らせて頂きます」

頷くデン。瓶の中の純黒が目を覚ます。

純黒『なんだよ、まだ出発してないのかよ』

エリナ「そうでした。ほら、行きますよ、お二方」

ビアンカ「3人とも。最後に私たちに言うことがあるでしょ?」

振り返り笑顔になる3人。

三人「行ってきます」
 

■ダルヴァザ(夜)
 

〇カージナルのアジト『ルージュ』王の間

椅子に座っているカージナル・ポーター(68)。目の前には跪くシャク。

シャク「この度は私の失態に対する寛大な処置、感謝申し上げます」

カージナル「そう簡単に処分するものか。私たちは家族だ」

シャク「ありがとうございます」

カージナル「それにしても、純黒に加え、さらに禁忌者とはな…エボニーも随分と小賢しい真似を」

シャク「彼らはこれから大きな敵になると思われます。正直このままエボニーとぶつかると私たちも甚大な被害を受けるかと」

カージナル「だから、エボニーと組むってことか」

シャク「そうです。彼らは確実にエボニーに合流します」

カージナル「だが、盗んだ純白はどうするんだ?まさかこのまま返すつもりか?」

シャク「大丈夫です。彼らの中に」

シャク「純白の継色者が居ますので」

不敵に笑うカージナル。

カージナル「面白い」

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