PALLET 第二話

第二話「あなたの色を染めさせて」

〇アートショップ『デン』・店内

ブラン、瓶の方を向く。

ブラン「お前なら助けられるか!?」

純黒『随分と偉そうだな。それが助けてもらおうとする言い方か?』

ブラン、唇を噛む。頭を下げるブラン。

ブラン「助けてくれませんか、純黒様…」

嘲笑う純黒。

純黒『傑作だな!!純白の継色者を辱しめさせるのは!!』

息を吐く純黒。

純黒『答えはノーだ。お前が純白である以上お前の潜在色を喰って潜在色になれなんだからな』

泣き始めるブラン。

ブラン「デンさんは…こんな僕を受け入れてくれた大切な人なんだよ…助けてくれよ、頼むから…」

純黒『潜在色が純白であることを恨むんだな』

高笑いする純黒。ハッとした顔になるブラン。

ブラン「潜在色が純白じゃないなら」

純黒『ん?』

ブラン「無色の場合はどうなるの?」
 

〇『アンファング シュタット』キリコ丘

息を切らすエリナ。余裕な表情のシャク。

シャク「おいおい、大した事ねぇな、エボニーの隊長さんはよぉ!」

エリナM「まずい…潜在色が少ない状態では奴には…」

エリナ、息を吐く。シャクを睨むエリナ。

エリナM「次で決める」

エリナ、戦闘色(赤・紫)をポケットから取り出し、筆に赤と紫色をつけ描く。描くたびに苦悶な表情のエリナ。

エリナ「ディスクライブ」

潜在色を加え、戦車を描くエリナ。

エリナ「コンクリート」

バルドルをかざし戦車を具体化。

エリナ「壱期の眼に映りし装甲車(エンド・ウォー)」

T「ベース:赤(50%)紫(25%)青(25%)」

戦車が砲弾を放つ。シャク、刀を振り下ろす。爆発音が響く。爆炎の中から狡猾に笑うシャクの姿。

シャク「おいおい、あんだけの大作描いてこの程度かよぉ!!」

膝をつくエリナ。

エリナM「まずい…強い」
 

〇アートショップ『デン』・アンの部屋前

階段を上がるブラン。アンの部屋の前につきドアを叩く。

ブラン「アン君!!君にお願いがあるんだ!!君の父さんを助けたいんだ!!」

返事がない。

ブラン「アン君!!」

アンの声「(震え声で)誰だよ、あんたは」

ブラン「僕はブランだ!!君のお父さんを…大切に思っている人だ」

アンの声「なら、あんたが助けろよ」

ブラン「僕に出来るならとっくにやっている!!でも君じゃなきゃダメなんだ!!」

アンの声「俺に何が出来るって言うんだ!!」
 

〇同・アンの部屋

電気を消し真っ暗な部屋。布団にくるまり震えて泣いているアン。

アン「無色の俺に何が出来るって言うんだよ…」

ブランの声「アン君…」

アン「俺に頼るなよ…」

 
〇同・アンの部屋前

純黒『おい、お前潜在色が無いんだろ?』

アン『…そうだ』

純黒『潜在色がないなら、俺を取り込めよ』

アンの声「…お前は誰だよ」

純黒『俺はな』

純黒『純黒だ』
 

〇『アンファング シュタット』・キリコ丘 頂上

ボロボロの姿で跪くエリナ。刀を首に当てるシャク。

シャク「さっさと純黒を出せよ。そしたら命だけは助けてやるよ」

睨むエリナ。

エリナ「殺すならさっさと殺せ」

シャク「断る」

シャク、エリナの服を刀で切り刻む。全裸になるエリナ。

シャク「お前が命令するな」

動じないエリナ。あざ笑うシャク。

シャク「誉れ高いねぇ~これが騎士団という奴ですか!!」

睨むエリナ。

エリナ「…お前たちの目的は何だ」

シャク「は?」

エリナ「お前たちが純色を集める目的だ」

シャク「だからよぉ」

目つきが鋭くなるシャク。

シャク「命令すんなって」

エリナの心臓部に刀を突き刺す。
 

〇アートショップ『デン』・アンの部屋前

ドアを開けるアン。

アン「純黒だと…」

周りを見渡すアン。居るのは目の前にいるブランのみ。アン、手元の瓶を見る。

アン「これが…純黒?」

純黒『そうだ』

アン「何で、純黒がここに…」

純黒「話は後だ。俺を取り込め」

アン「…俺が純色のことを知らないからそんなこと言ってるのか?」

純黒『お前には潜在色がないんだから、侵食するものがない』

アン「だが、潜在色がなくても俺の意識を侵食する可能性もあるんだろ?」

ブラン「それは僕が何とか…」

アン「何とか?人の命なんだと思ってんの?」

ブラン「……」

アン「第一、無色だから都合が良いんでしょ?どうせ、俺なんか人じゃないんだから、死んでも困らない訳だし」

ブラン「そんなこと…」

アン「潜在色がある奴に俺のことなんかわかるはずないだろ」

俯くブラン。

純黒『ならお前はずっとそこにいればいい』

アン「…急になんだよ」

純黒『今のままが良いならそのまま部屋に居ろ。一生親父を見殺したことを後悔しろ』

ブラン「純黒!!」

純黒『一生自分の立場を悲観していろよ。悲劇のヒロインでいれば幸せなんだろ?』

瓶を掴むアン。

アン「…いい加減にしろよ。お前たちが俺を巻き込んでいるんだろ」

純黒『あぁ、そうだな』

アン「ならお前たちが責任取れよ」

ブラン、土下座をする。

ブラン「…アン君の言う通りだよ」

アン「……」

ブラン「ほんとうに僕たちが戦いに巻き込んだ…だからこそデンさんを救いたいんだ…」

アン「だから、あんたが…」

ブラン「僕の潜在色、純白なんだよ」

アン、驚いた顔になる。立ち上がるブラン。

ブラン「純白ってさ白以外使えないんだよ。だから君と同じ非常色も戦闘色も扱えない。白は単独でメインベース色になれないからね。僕もさ、何も出来ない自分が嫌だったよ。そんな中でデンさんは優しく接してくれた。僕を救ってくれた。だから、今度は僕がデンさんを救いたいんだ」

目を逸らすアン。

アン「継色者とか選ばれし者だろ。俺なんかと違って…」

ブラン「名前だけだよ、そんなの。それに君には僕にはない描ける才能がある。君は無色だけど無色には何にでもなれる、無限の可能性があるんだよ」

ブラン、手を差し出す。

ブラン「君と一緒にこれからを描いちゃダメかな?」

涙を流すアン。ブランの手を握る。

アン「俺はどうすればいい…?」

ブラン、笑顔になる。

純黒『お前には覚悟があればいい』

アン、涙を拭う。

アン「親父を救いたい」
 

〇『アンファング シュタット』 キリコ丘 頂上

エリナを突き刺すシャク。シャク、血が流れないことに気が付く。

シャク「お前まさか」

エリナの目つきが変わる。

エリナ「知ったからには始末しないとな」

シャク「小癪な!!」

シャク、刀を頭に振り下ろす。エリナ、3本目の腕が出現しシャクの刀に触れる。直後刀が消える。

シャク「バケモンが!!」

不敵に笑うエリナ。

エリナ「失礼な」

シャク「ぶっ殺してやるよ!!」

シャク、戦闘色(赤・青・黄・紫)を取り出し筆につける。

シャク「ディスクライブ!!」

潜在色(赤)と合わせてミサイルを描く。

シャク「コンクリート!!」

バルドルをかざし具現化。

シャク「地獄惨劇流星弾(グランドゼロ・クラスター)」

T「ベース:赤(40%)青(20%)黄(20%)紫(20%)」

無数のミサイルが放たれる。エリナ、3本目の腕から刀を具体化。刀を構える。直後吐血し跪く。

エリナM「くそっ、もう限界…」

無数のミサイルが直撃。大爆発を起こす。爆炎の中に現れる灰色のシェルター。

シャク「なんだありゃ」

灰色の槍がシャクの右腕に突き刺さる。

シャク「ぐっ!!」

跪くシャク。

シャクM「誰の攻撃だ!?」

シェルターが開く。灰色の顔のアンとブランが現れる。

シャク「お前たちは誰だ?」

アン「お前に名乗る必要はない」

シャク「灰色の顔なんざ、聞いた事ねぇ」

純黒の声『お前が探しているのは俺だな』

目の色が変わるシャク。

シャク「やっと見つけたぞ、純黒」

純黒の声『お前たちはどうやって俺を見つけた?』

シャク「ん…?何だこの違和感?」

直後シャク、高笑いする。

シャク「そうか、偽物の方か!ボスに報告しないとな、やっぱ継色者の目は頼れねぇって」

ブラン「偽物?どういうこと?」

シャク「聞きたきゃ俺から情報を聞き出しな」

アン「…純黒?」

純黒の声『…あいつ、俺に何をした?一体…』

ブラン「今は考えないで。あいつを倒して聞き出さなきゃ」

純黒の声『…お前に正論言われるとはな』

シャク「俺に勝つ気で居るとはな!威勢が良いな」

シャク、戦闘色(赤・紫・黄)と筆を取り出す。

シャク「ディスクライブ」

潜在色と合わせてガトリングガンを描く。

シャク「コンクリート」

バルドルをかざし具体化。

シャク「放物躑躅血(マゼンタ・インパチェンス)」

T「ベース:赤(60%)紫(20%)黄(20%)」

シャク「さぁ、楽しませてくれよ」

ガトリングガンを発射する。手を繋ぎながら逃げる。アン、逃げながら戦闘色(青・橙)を取り出す。

アン「ディスクライブ、コンクリート」

嵐を描きながらバルドルをかざす。具現化される嵐。

アン「一過性の出来事(エンリル・ブランニュー)」

T「ベース:灰(65%)青(20%)橙(15%)」

嵐が弾丸を防ぐ。

シャク「なかなかの早描きだ!だが…」

跪くシャク。

シャク「…は?」

シャク、腹部を触る。掌につく血。

シャク「一体、いつ攻撃…」

アンの隣のブランの手には拳銃。拳銃から煙が出ている。

シャク「バカな…ディスクライブもコンクリートも一度しか言っていない!!いつ描いて…」

アン、不敵に笑う。

アン「俺が嵐だけしか描いてないと?」

シャクM「こいつ、まさか嵐だけでなく拳銃も同時に描いていたのか!!」

アン「ちなみにこの人は絵が下手くそだから描けないよ」

ブラン「言わないでよ」

苦笑いするシャク。

シャクM「こんな化け物がこの町に居たとはな…」

シャク「一つ聞いて良いか?」

アン「なに?」

シャク「お前、俺たちと組まないか?」

アン「は?」

シャク「お前がいれば、俺たちは純色を全て手に出来る。そしたら思い通りになる世界を描ける。お前の望む世界に俺たちが協力できる」

アン「ふーん…」

微笑むアン。

アン「父親を殺そうとしたこと、忘れてない?」

シャク、鼻で笑う。

シャク「まぁ、そう都合よくいかないか」

上着を脱ぐシャク。体に刻まれてる赤色の刻印。

シャク「なら、死んでもらおうか」

睨むシャク。睨み返すアンとブラン。

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