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「あんのこと」をみたら、おばあちゃんの知恵袋を思い出した。

「あんのこと」を見た。とてもいい映画だった。

その日は昼過ぎに一本、別の映画を見ていた。公開して間もない「インサイド・ヘッド2」。デートのふさわしい映画だ。
しかし、相手がトムヤムクンを作るからと言って帰ってしまった。19時に新宿に一人。帰るにはなんだか寂しい時間帯。そこでずーっと気になっていた「あんのこと」を見ることにした。

内容はとても面白かった。ただ、あまりにも温度差が違いすぎて、風邪をひくかと思った。「インサイド・ヘッド2」も面白かったのだが、「あんのこと」の印象が強すぎた。

小さいころ、「みかんとおまんじゅうがあったら、おまんじゅうを先に食べてはいけない」と口酸っぱく言われていた。みかんとおまんじゅう。要は相対的に甘いものを先に食べてしまうと、本当は甘いジャンルに含まれるものもそう感じられなくなってしまうということだ。

みかんとおまんじゅう問題は、日常の些細な幸せを得るため無意識にやっている人も多いと思う。しかし、実は私たちが知っている“順番”というものは、もっと重要で深いテーマなのだと思う。

ここでちょっとしたクイズをしよう。

次の文はそれぞれの性格や評価を説明する文である。あなたはどっちが好きだろうか?

拓也:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
正広:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい

(心理学者のソロモン・アッシュが行った有名な実験を参考に)


多くの読者は左から右に文章を読む。きっと拓也(誰?)と正広(だから誰?)の人物評価についても、左から右に読んだことだろう。果たして、どっちが好きになるだろうか?

人を好きになるということは難しいことなので、千差万別になると思うのだが、隣のデスクに居てほしいと言われたら、拓也のほうなのではないだろうか。

拓也を見てみると、「頭がいい」が最初に来ている。まず、「へー。拓也は頭がいいのか」という印象が刷り込まれる。そうすると、勤勉、直情的ということもプラスに捉えられていく。頭がいいから批判的な思考力をもっているのは当然だし、頑固ということですら、自分の信念を曲げないと解釈もできそうだ。

一方の正広。まず「嫉妬深い」が最初に来てしまった。これは良くない。そのあとに「頑固」とても机を並べたいとは思えない。そうなってくると、「頭がいい」も頭がいい“だけ”で実際は臨機応変な対応が出来ないやつ、などと皮肉めいた感じに聞こえるから不思議だ。その上、勤勉だなんて。早く帰ってくれた方が会社のためになるのに。


と、拓也を持ち上げて正広を貶めたのだが、それぞれの項目は同じだが、順番だけ入れ替わっているのである。

入れ替わっている“だけ”だが、こうも印象は違ってくる。これは最初に持った印象でその人の全てを分かった気になってしまい、その後の評価に影響を及ぼすという効果で、 “ハロー効果”と呼ばれている。

ただ順番が違うだけで、拓也は隣の席に来てほしい人No,1になり、社内の評価も抜群、出世コース間違いなし。一方で、順番が違うだけで正広は煙たがられる存在になり、上司の覚えも悪く、誰かの旅行のお土産も正広だけもらえなかったりする。可哀そう、正広。

私たちは、普段順番なんて気にしない。思いつくままにしゃべり、頭に浮かんできたままに行動する。でも、自分が甘いものが食べたいか、酸っぱいもので口をさっぱりしたいか、どちらを望んでいるかで、みかんを先に食べるかおまんじゅうを先に食べるかを決める。

口の中の状況だけでなく、自分自身の見られ方や相手の感情の動きまで、応用できることなのだと思う。難しいけど。


今回は、「あんのこと」が“みかん”だったのだろうか。僕は映画に何を求めていたのだろうか。すっきりしたかったのかもしれないし、消化できないモヤモヤを欲していたのかもしれない。

本当は感想をこのnoteにまとめて書きたかったのだが、自分のなかで整理がつかず、みかんとおまんじゅうの話になったのだ。

だから、食べるとしたら「あんのこと」「みかん」「おまんじゅう」の順番になるだろう。「インサイド・ヘッド2」はおまんじゅうの後でも大丈夫。

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