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幕末浪士はホルモンがお好き!?〜寺田屋を訪ねて

日本の夜明けぜよ
かつて、高らかに声を上げた
幕末の志士たち
柱に残る刀傷に
試行錯誤した時代の面影が残る……
京都・伏見
古き時代の面影を微かに残す町に
かつて、時代の舞台となった
一軒の旅籠がある
寺田屋
あの坂本龍馬が
襲撃された宿である

日本の夜明けって、いつだろう??

日本の夜明けぜよ……
さて、まだ残暑厳しい折、
寺田屋を訪ねた。
クーラーはなく、
扇風機がささやかに風を送っている
夜が更けてきた

まず、お通しの焼枝豆が供される
土佐の浪士たちが一堂に会し、
酒を酌み交わしながら
この国の行き先を議論している……
そんな光景が脳裏に甦る

お肉のように見えますが、鰹です

鰹刺。塩で。
今日は、いい鰹が手に入ったそうだ。
京都と土佐は距離がある
当時、土佐の脱藩浪士たちは
寺田屋で鰹刺を食していたのか。
興味深い……

炭火で焼かれたタン。
しかし、炭火で焼いたホルモンは
彼らは食べていた。
旅籠の二階で浪士たちが
ホルモンをツツキながら
薩摩、長州、徳川、
そして、朝廷の思惑について
あれこれと考えている……

炭火で焼いた上シロが供される。
「この上シロのように、この国を上等な
 シロモノにせねば、いかんぜよ!」
早くも少し酔いが回ってきた、
一人の浪士が声を上げる。

険しい空気を柔らげようとしたのか、おやじギャグ。
……反応するものは、誰もいない……。
寒い、寒い、寒い空気が漂う。

畳敷の旅籠の二階。
と、そのとき、
トントントンと
誰かが階段を上がってくる
部屋の空気が張り詰める。
浪士たち、刀に手をかける

……お待たせしました。
旅籠の旦那が手にしていたのは、
レバーである。
寺田屋のホルモンの顔と言えば、
分厚いレバー。
目の前で、炭火で炙り始めた。
浪士たちも好んで食べたという。
塩と味噌で食べ比べられるのが、うれしい。
しかし、浪士たちの議論は続く……
しばらく刻が過ぎ、議論が煮詰まってきた

……
ずるっずるっずるっ
張り詰めた空気が弛緩する
浪士の一人がうどんを啜っている

かすうどん
細かく刻み油で揚げた牛の小腸が入った
浪速のうどんである

まわりの浪士たちの顔が険しくなった
「おんしは、この国の一大事に、
 なに呑気にうどんを啜っちょるか!」
「それとも惚けたように見せかけて
 何かこころに孕んでおるか?え!」
……うどんを食い終わった男が、ぽつり、
「何も孕んではおらんぜよ」
おもむろに袖からハラミを取り出し、
網にのせる
ぱちっ、と一度、炭が爆ぜる
ハラミ焼

浪士たちの議論は、まだ続く……
奇しくも、幕末と同じく
時代の大転換期のいま
奇しくも、京都・伏見の旅籠と
同じ名前の、とある飲み処で
扇風機のぬるい風のなか、
汗をじっとりかきながら、
京都・伏見の旅籠を思い浮かべながら、
そこに集った浪士たちが
ホルモン好きだったと仮定し、
幕末の浪士たちに想いを馳せて
締めのハラミを噛み締めた

……はむ、はむ。

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