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取材原稿の書き方について思うこと#03〜原稿は創作せよ

取材原稿について、誰かの何かのお役に立てるかな?と思って書いてる3回目。前回は取材のときのお話を書きましたが、今回は取材後から原稿執筆に入るまでです。前回のお話はこちら。

取材が終わったら音源を起こすのですが、私は自分で起こすのが面倒なので、音源起こしツールを使っています。最近の音源起こしツールは賢い😄。使うツールはNottaが多いかな。あと、オンライン取材ならMicrosoftのTeamsを使うと、取材を録画しながら自動で音源起こしをしてくれます。

余談ですが、ライターの中には音源起こしをしない人もいます。メモを取って、音源は必要なところだけ聞くという人もいますし、録音すらしない人もいます。スゴイ。私は、テレコは一台だけだと壊れたら心配なので、二台用意しています。

取材が4人以上の座談会形式になると、音源を聞いても誰の発言か分からなくなることがあります。特に同じ年代の同性の方が話す音源は声に特徴がないと分からないことがある。ちなみに昔の会社で、10人の座談会の音源起こしをお願いされたことがありました。10人……。お願いしてきた人は、「ちゃんと一言一句起こしてね」的な圧をかけてきましたが、そりゃ無理だろと内心思いました。アタマがおかしい……。「そういう場合はテレコじゃなくて、ビデオで録画するとか考えろよ、ボケッ」と思いましたが、黙ってやりました。とほー。あ、話が脱線してしまった。まあ、10人の発言をテレコでというのはありえないですが、人数が多めで、「これは音源を起こすときに誰の発言かわからなくなりそう」と思ったときは、取材時に、話者が変わった時、最初の発言と誰が話したかを逐一メモっています。例えば、鈴木さんが「うちのお店は、納豆を30年作り続けていて、味はまったく変えていません……」のようなことを話始めたとすると、ノートに「す:うちのお店は、」みたいな感じで書いています。

音源起こしが終わったら原稿の構成を考えます。じつは、私は以前、原稿を書く時に、音源起こしをしたものを頭から不要だと思う部分をちまちま削っていきながら原稿を整えつつ構成を考えていました。ある意味、器用といえば器用なのかもしれませんが、めちゃ時間がかかりました。なんか異様に体力を消耗するなと思っていて、ある時、他の人にどうやって原稿を書いているのか聞いたんです。すると、その人は「まず、音源起こしを読んで、ポイントとなる部分にマーカーを引く」と言いました。ポイントとなる部分というのは、自分が印象に残ったワードや発言です。そして、「マーカーを引いたところを抜き出して文章を『作る』」と言うのです。話を聞いていて、私は「文章を作る」という言葉が心にひっかかりました。それまでは、インタビュイーの発言をそのまま生かすことが大事だと考えていたから。「作る」というのは、勝手に創作することになるから良くないんじゃないかと。でも、良くない取材原稿として指摘されることが多いのは「インタビュイーが話したことをそのまんま書いている」ものなんです。

話したことをそのまんま書くと何が悪いのかというと下記のようなことになるからです。
・話し言葉になっている(例:っていうか、……みたいな)
・インタビュイーは知っているけど、読者には意味が分からない内容になっている
・ムダに文章が長い
・回りくどい
・同じ要素が文章中に何度も出てくる……など

なので、「文章を作る」ことが必要なのです。ここまできて私は「取材原稿は創作するものだ」と思いました。創作といってもライターの主観を入れるのはNGなのですが、「創作する」という発想がないと取材原稿は書けないんじゃないかと。なぜならば、音源起こしにマーカーを入れるとき、どこにマーカーを入れるかはライターの感性が必要です。取材テーマがありますから、絶対に入れないといけない部分は分かるでしょう。でも、1時間の取材をすると音源起こしが2万とか3万字になります。その中でどこを面白いと思うのか、どのフレーズが読者の関心を惹きそうかは、ライターの感性で選ぶしかない。例えば、クソマジメに原稿を書くと、「これは余談ですが〜」的な話は無視してしまうかもしれない。でもじつは、その余談の中に取材テーマを補強する内容が含まれていることもあるわけです。それと、「インタビュイーのどの言葉を補足しないと読者に伝わらないのか」といったこともライターが気づく必要があります。

取材していると分かるのですが、インタビュイーは理路整然と話す方ばかりではなく、その場で思ったことをポンポン言ったりします。そうなると、取材の最後に話したことを原稿では最初に持ってきたことがいい場合もあります。「音源起こしからポイントを抜き出し→それを構成に合わせて並べ替え→抜き出した言葉やフレーズに肉付けする」というのが取材原稿作成の一つのやり方だと思います。

つづく


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