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【東南アジア旅行記】#1. 7週間の旅の始まり 羽田空港からシンガポールへ

 2022年11月7日

 これが旅路
 駆け抜けてゆけ、振り返ることなく
 自身が見たい世界の形を忘れるな
 目的がはっきりしているのなら、どんな出会いも別れも悲しむ必要なんてない

だけど、どうしても嫌だ、行きたくない。何も変化せず、動かず、騒がず、このままずっと寝ていたい。旅なんて、いつだってそうだ。人は変化を望まない。だけど今動けば、何か変われるだろうか。そうあってほしい。

一年以上乗っていない国際線、この感覚を忘れそうになり、久しい。今回は深夜便でまずシンガポールに飛ぶため、22時前には空港へ到着するように移動した。羽田空港の人入りはまばらで、いまだ海外への往来には無言の緊張感がただよっていることがうかがえる。チェックイン機などを見ると、色々とシステムが便利なほうへと変わっているようであったが、比較しようにも最後に国際線の飛行機に乗ってから時間が経ち過ぎており、世界も変わり過ぎた。

今回、少しでも荷物を減らしたいと服もかなり少なめにしたが、メインとサブのバックパックで既に10kgを超えてきているので、無理をせぬようにやっていきたい。刃の短いものであれば機内持ち込みが出来ると知って購入したちいさなハサミも、何なく荷物検査を通過することができたのでほっとする。わたしの乗る飛行機の搭乗ゲートはかなり端っこの方に位置しているらしく、保安検査場からだいぶ離れているようだった。いくつかのゲートの前をのんびりと通り過ぎながら目的の場所まで歩く。どうやら、他にも東南アジア行きの深夜便がたくさん飛んでいるみたいだ。行き先はバンコク、ホーチミン…みんな、このあと行く予定の街。ビジネスマンの姿も多く、ようやく海外との往来が動き始め、活気を取り戻しつつある乗り場の様子に嬉しくなる。

ほとんど人のいない出国後のターミナル

しかし、目的のゲートに到着すると思ったよりも人が少ない。他の行き先の飛行機に比べ、この日のシンガポール便はなぜか空いているようだった。いつものように窓側の席を予約したが、横一列人がいないのはラッキーである。外を眺める。滑走路までゆっくりと移動する中、飛行機たちの格納庫の前を通過した。暗闇の中でライトに照らされた沢山の機体たちが規則正しく並んでいる様は、まるで出番を待ちながらゆっくりと眠っているかのようにも見えて愛おしかった。これから飛び立つ飛行機の窓から、地上で作業をしている人たちの姿を見るのが好きだ。同じ地上にいるのに、既に別の国にいるかのように不安定な存在になってしまったぼくらとは、なにか決定的な隔たりがあるように感じてしまい、いつだって胸が苦しくなる。もう後戻りはできないわたし。旅に出るしかなくなってしまった、日本にはいないあわれなわたし。不意に、一気に加速してゆく感覚。飛び立つまでのほんの数秒の間に感じる音が、速さが、ぼくの意識を確実に異国に運んでゆく。「修行」のさなか、あれだけ何度も沖縄に飛びながら飛行機を堪能したつもりでいたが、これは全く異なる何かのように感じた。国際線は緊張感が違うんだ。飛び立つ、そしてすぐに東京を俯瞰する。時刻は深夜一時だというのに、この街はなんと明るい。夜の東京はこんなふうに赤くほのかに発光し、オレンジ色につつまれているのか。そんなこと意識したこともなかったな。しかし街はぐんぐん遠ざかってゆき、東京タワーが見えたと思った次の瞬間、すべては黒い雲と重なりそのまま見えなくなってしまった。

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