コスメカウンター
ずっと憧れのコスメカウンター。
そこに行けば、綺麗になれると思っていた。
デパートの大抵1階にあるその売り場は、いつも化粧の匂いと黒い服の美人のお姉さんしかいてはいけない場所だと思っていた。
コスメの値段も普段1000円以内で買っているのに、その10倍もする。
私は美人じゃないと自覚してるので、あの場にいる人間ではないと思っていた。
コスメにも憧れはあるが、気恥ずかしく卑屈に思っているのでなんの知識もない。
だから憧れは募るばかり。
コミュ障の私は、何を喋っていいのかわからないし、明らかなハイブランド品が並ぶカウンターにはそぐわないカッコをした自分。
浮いているので、そもそも行く気が沸かない。
※
ある時、勇気を振り絞ってコスメカウンターに向かった。
その日は、美容院帰りで髪の毛が可愛かったから、自信が持てた。
そして、憧れのブランドのコスメカウンターを覗いた。
物色をしつつ、店員さんの動向を伺う。
相手にされてないみたいで、お客さんがいない店内でも話しかけられない。
滞在時間が長かったからなのか、ようやく、話しかけられた。
「何をお探しですか?」
緊張しきっていたので、チグハグな会話だったと思う。
どうにかコミュニケーションを成立させ、一番安かったアイブロウとサンプルが入った袋を手にぶら下げお店を出た。
ガチガチに緊張していたので、気づけば呼吸が止まっていた。
※
そして今日。
それ以来ぶりのコスメカウンターへ。
今回は目的があって、向かった。
いつもはスルーしてたけど、やっぱり今日も美容院で可愛くしてもらったので、思い切って店内へ。
目当ての品を物色するも、種類が多すぎて何を選んでいいのか分からない。
お手上げだ。
そんなとき、店員のお姉さんに話しかけられた。
そこでは驚愕なことを伝えられる。
「どんな風にメイクをしたいですか?それによって、商品が違うので教えて下さい。」
意味がわからなくて固まった。
どんな風に??
「例えば、艶を出したいとか、崩れにくいとか、肌をカバーしたいとかですね。」
考えたこともなかった。
世のメイクをする人は、そんな事を考えながらメイクしたりコスメを選んだりしている…の?
私も混乱したが、お姉さんも困惑していた。
きっと、このコスメカウンターに来る人はメイクが好きで詳しくて目的がはっきりしてる人が来る場所なのだ。
そう思い知らされた。
何とか、したいメイクを伝え、それならばとオススメコスメのテスターを塗り感想を言う。
タッチアップが出来ないので、その場で即決できない。
代わりに試供品を頂いてきた。
悩む時間は今月末まで、頂いた試供品を使うときは、
「どういう風にメイクしたいか」を考えて使ってみよう。
私にとって、あの場所は気後れする憧れの場所だけど、自分次第では身近な場所にできるのだと思う。
どうしてそれが出来ないのかは、自分が良く分かっている。
だからやっぱり、少しは勉強した方が良さそうだ。
憧れに近づきたい。
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