厚生労働省が発表 公的年金の中長期的見通しを示す「財政検証」の結果
みなさんこんにちは。よこちょうです。
さて、先週7月3日に、厚生労働省から「令和6(2024)年財政検証結果」が公表されました。概要は以下から閲覧可能です。https://www.mhlw.go.jp/content/001270476.pdf
前回から「働き方」をテーマに、、とお伝えしましたが「年金マスター」を目指すよこちょうとしては、この話題を避けて通る事はできません。
7月4日付の日経新聞朝刊では1面トップ記事のみならず、解説や特集記事まで掲載されており、話題の重要性を物語っています。
また、以下の通り各社からも記事が出ています。
記事をまともに読むと難しい所もあるかと思いますので、気になる所を中心に少し考察してみたいと思います。
【ポイント1】用語「所得代替率」
これから年金系の記事を読むにあたり、この言葉は絶対覚えておいた方が良いかと思いますので、最初に少し説明を。
簡単に言うと、「年金生活になった時に、収入が現役世代の手取りのどの程度か」という事です。
この用語を使う際、「40年会社勤めをした会社員の夫+専業主婦の妻」をモデルケースとして想定しています。(まあ、このパターンもかなり減っているので、現状を鑑みるとどうかとは思いますが。)
つまり、老齢基礎年金(夫+妻)+老齢厚生年金(夫)の家庭が、現役世代の何パーセントもらえるかです。
これを、将来の経済状況の想定からどうなるか見ていることになります。
ちなみに、2024年度の現役世代の手取りは37万円だそうです。モデル年金は22万6千円で所得代替率は61.2%で、前回検証(2019年)から0.5%下がっています。
今後、この所得代替率が「少なくとも50%を下回らない」ように決まっており、成長率や出生率など各種統計を基に政策が検討されていきます。
【ポイント2】言及されている数字の「前提となるシナリオは?」
今回のレポートを見ると、以下の要因により、それぞれのパターンでシナリオが組まれています。(先に示した財政検証の概要資料内、スライド2に詳細が記載されています)
人口の前提
出生率、死亡率はもとより、海外からの入国超過数(もちろん海外からの在住者なども年金の支払い義務がありますので)が考慮されています。労働力の前提
若年層が減ったとしても、高齢になっても働く方が増える事で、労働人口および年金徴収額のシナリオが変わってきます。経済の前提
日本経済自体が「高成長」「成長」「横ばい」「マイナス成長」の4つでそれぞれシナリオが検討されています。
ニュースや記事などで、例えば「年金制度が事実上破綻」という刺激的な文章があったとしても、これはもっとも悲観的な、過去30年と比較してのマイナス成長が発生した場合、国民年金の積立金が2059年度に枯渇してしまうという事を表現しており、結論として実際にそうなる訳ではない(仮に経済やそれ以外の要因が悪かったとしても何らかの対策を行うため)ので、このあたりは過敏に反応しないようにしないといけないと思います。
【ポイント3】「国民年金の65歳までの納付」は見送り
厚生労働省の資料側には特に触れられていませんが、上記NHKのニュースの動画や新聞記事などを見る限りでは、武見厚生労働大臣の発言として、財政検証の結果として、「国民に追加の保険料負担を求める状況にないと判断した」と報じています。
先に示した財政検証の概要資料内、スライド8および9に数的根拠が示されていますが、給付水準を担保するための有力案である事は間違いないです。しかしながら、60歳から65歳までさらに5年間追加で納付という事は当然ながら、
国民年金第1号被保険者に関しては、5年で約100万円の追加負担
国民年金第2号被保険者(サラリーマン)に関しては、65歳までの労働が当たり前になる
国民年金第3号被保険者の優遇はそのまま65歳まで続く
という事で、やはり65歳以降の事より、「負担」が前面に出てしまい、国民には理解されにくい策である事もまた事実かと思います。
でも正直、これは選挙対策でもあるでしょうね。この逆風下で更に負担を強いる事が難しいのは厳しいのは分かります。個人的には、タイミング的に前に向けて進めていく政策ではあると思うのですが。
【ポイント4】いくつかの施策の見直しについての言及が欲しかった
正直、以下の施策についてはやるやらない以前にベースとなる分析を進めていくべきかと思います。
加給年金
年金の繰り下げを阻害していると思われるこの施策は、正直廃止しても良いかと思います。現状どれだけの対象者がいて、どれだけ支出しているのかなど数字を示して頂きたかったです。女性のみの制度の見直し
現状、女性のみと規定されている制度があります。
基礎年金だと寡婦年金、厚生年金だと中高齢寡婦加算、あと上の加給年金は女性しかもらえないという事ではないですが、年下の妻が居ないともらえない制度です。現状共働きや主夫など、家庭のあり方も多様化しており、制度として見直す時期には来ていると思います。国民年金3号被保険者
人数比率が下がっているのは理解できるのですが、それに伴いどう対応していくのかなど、もう考えても良いのではと思います。
やはり、国民年金第1号被保険者の方の妻は、普通に1号被保険者として毎月支払わないといけない事への不公平感や、3号被保険者を維持するために年収を抑えて働くなどの弊害はかなり大きいと思います。老齢「以外」の年金の受給状況の開示
公的年金は、老齢以外に「障害」や「遺族」といった、国として最低限の保障を担保する目的も持っています。
これらの受給権者の数、財政状況なども開示して欲しいし、検証もして頂きたいと思います。
今回お伝えした内容につきましては、厚生労働省の資料のみならず、各報道も、今後しっかりチェックしていきたいと思います。
また、当然国が行う保証ですので、あくまで最低保証というところではありますので、自助努力(つまり年金の3階部分)もプランニングしていく必要性を痛切に感じます。
今回は、ビッグニュースのため特別版でお送りしました。 次回以降、また「働き方」に軸足をおいてネタを考えたいと思います。
お楽しみに!
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