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箱の中の夜 【詩】【ポエム】㉘


夜更け。

思い出のある曲を聴くと  眠れない

子守歌にならない曲を聴きながら 思う

”青春時代に叶わなかった夢は どこに埋葬まいそうすれば いいのですか”


本を開けば耳が寂しくて

音楽を聴けば 目の前が寂しくて


「プライドが邪魔をするから 生きづらい」

なんて ふざけないで


そんなもの とっくに その辺の道に捨ててきた


そうしなければ 生きてこられなかったから


君の声が  わたしを死神から遠ざける

したたり落ちた 涙の温度が  わたしを覚醒させる


箱の中で 声は響く

数えきれない  大量の箱の中で。


【後記】

ミュージシャンの人は、ライブハウス等の事を、「ハコ」と呼んだりする。

私は 高架を走る電車で外を眺めている時、大概、梶井基次郎の短編小説「ある崖上がけうえの感情」を思い出す。

電車の窓からは、夜はマンションの沢山の窓の向こうの家の中が よく見える。

私だったら しっかりカーテンを閉めるけれど、夜でも電気を付けた状態でカーテンを開けっぱなしていて、中が丸見えな部屋が結構、ある。

その部屋のひとつひとつにドラマのような日常が、箱の数だけ有るのだ。

梶井は、この短編小説の中で、崖の上や電車の窓から他人の部屋を覗き見るのが楽しい、といった趣旨の事を書いている。


そして、私は いつか 丸善書店に行ったら、梶井の「檸檬れもん」のように『本棚にレモンを仕掛けて、逃げる』という悪戯いたずらをしてみたい、と思うのだ。

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