宴会する縄文人

令和６年度春の企画展「宴会えんかいする縄文人」の図録です。

注口ちゅうこう土器や台付だいつき土器など煮炊にたき以外に使われる土器や儀式ぎしきなどについて紹介します。

はじめに

令和6年4月13日（土）から6月23日（日）まで開催している春の企画展「宴会する縄文人」です。

縄文時代中期から晩期までの、だいたい5000年前～3000年前に使われた注口土器を中心に展示しています。

縄文人は宴会をしていたのか？
みなさんの縄文人に関するイメージはどんな感じでしょうか。
教科書に書かれている感じだと未開の部族のようなイメージでしょうか。
毎日、動物を追いかけ、その日暮らしで、およそ娯楽ごらくや精神的活動なんて無縁の生活を行っていた原始人？って感じでしょうか。
しかし、縄文人は、現代人と同じホモサピエンスです。我々と全く変わらない知能で集団生活を営いとなんでいるのです。

そんな縄文人の行っていた宴会を、注口土器を中心とした、煮炊にたき以外で使われたであろう土器や儀式ぎしきに使ったであろう道具、装飾品そうしょくひんから紐解ひもといていきます。

縄文人はどんな宴会を行っていたのでしょうか？

注口土器とは

注口ちゅうこう土器どきの定義として、「注そそぎ口ぐちのついた土器」ということが挙あげられます。
そして、液体えきたいをためいれて、ほかの器うつわなどに移すための入れ物ということです。そして、液体は水、ジュース、お酒といったものが想定されます。

縄文時代の注口土器は、注ぎ口の付く場所によっても分けられます。

1. 土器上方、口縁こうえん部ぶにつくタイプ

2. 土器半ば、胴部どうぶにつくタイプ

3. その他、土器上部に片口状かたくちじょうになるタイプ

があります。

１の上方に付く注口土器
元屋敷遺跡出土　縄文時代後期前葉

２の胴部につく注口土器
元屋敷遺跡出土　縄文時代後期前葉

３の片口になるもの

また、器の形状でも分けられます。

1. 鉢形

2. 壺形

3. 注口土器独自の器形

4. 他にない独自な注口土器

5. 小形の注口土器

１，２は鉢、壺として注口部を持たない器形が存在するのに対して、３，４に関しては、顔面表現があったり、環状をしていたりといった注口土器にしかない器をさしています。注口部がない状態の器がないということです。
また、大きさを縮小したものもあります。使うとなると実用性を欠くようなものとなります。
器種として独特な器形があるということは、縄文人にとって、なくてはならない土器になっていることが分かります。

１の鉢形の注口土器
下クボ遺跡出土　縄文時代中期後葉

２の壺形の注口土器
元屋敷遺跡出土　縄文時代後期後葉

３の注口土器独自の形
元屋敷遺跡出土　縄文時代晩期前葉

４の注口土器の中でも独自の形のもの
元屋敷遺跡出土　縄文時代後期後葉

５の小形のもの、高さ4㎝ない大きさです
元屋敷遺跡出土　縄文時代後期

このように、ひとくちに注口土器と言っても、さまざまな器形、大きさ、独自性があります。
ただし、どの注口土器も非常に丁寧ていねいなつくりをしています。
液体が漏もれにくいようになのか、ミガキがかけられて、文様もきちんと割付わりつけがされています。無文のものもありますが、テカテカになるくらい器面きめん調整ちょうせいで磨みがき上げられているものが少なくないです。
もしかすると、注口土器は土器づくり名人のような縄文人によって作られていたのかもしれません。
そして、縄文時代の時期や地域によっても、組合せが変わるので、各形状けいじょうによって使い分けられていたのかもしれません。

以下、新潟県にいがたけん北部域ほくぶいきの縄文時代各時期の注口土器を紹介していきます。

R6春の企画展関連遺跡位置図

新潟県村上むらかみ市の奥おく三面みおもて遺跡群元屋敷もとやしき遺跡、アチヤ平だいら遺跡、下したクボ遺跡、沼ノ沢ぬまのさわ遺跡、脇ノ沢わきのさわ遺跡、同じ村上市内の上野かみの遺跡、熊登くまと遺跡、高平たかだいら遺跡、長割ながわり遺跡、胎内たいない市分谷地わけやちA遺跡、新発田しばた市貝屋かいやA遺跡の11遺跡から出土した注口土器などが展示されています。

縄文時代中期の注口土器

約5,500年前～4,400年前の時期を縄文時代中期と呼んでいます。

ここでは縄文時代中期中葉（火焔かえん型土器がたどきの時期）、約5,000年前の村上むらかみ市高平たかだいら遺跡出土の注口土器と縄文時代中期後葉、約4,700年前の奥おく三面みおもて遺跡群いせきぐん下したクボ遺跡、アチヤ平だいら遺跡、そして、新発田しばた市貝屋かいやA遺跡の各遺跡から出土した注口土器を紹介します。

縄文時代中期中葉の注口土器

縄文時代中期になると、東日本、特に東北地方南部を中心に注口土器が登場します。この時期の注口土器は、主に深鉢ふかばち形、鉢はち形であり、土器上部の口縁部こうえんぶに注そそぎ口ぐちがつくものが大多数です。

ここで紹介する注口土器は、縄文時代中期中葉の高平遺跡出土の注口土器です。

村上市高平たかだいら遺跡出土の環状かんじょう注口土器
縄文時代中期中葉　大木だいぎ8a式土器