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『YOUR TIME』の感想&解説

本当に最後の時間術だった『YOUR TIME(ユア・タイム)』のレビューです。まず最初に本書ですが、私にはしっかり効果がありました
本書の内容を1ヶ月実践してみましたので、そのあたりもふまえてレビューします。


◆基本情報

・ページ数:274ページ
・所要時間:約2.5時間
・内容:時間感覚のズレを治す/「時間感覚タイプ別」の時間術

◆最初に所感

・実践することに配慮した文章構成で読みっぱなしにならない
立てた計画と実際の結果にズレがなくなった
・時間が足りないと焦ることが減った

本書では多数の時間術を紹介しつつも、それがどんな人に合っていて、どんな人には効果が薄いのかを解説しています。

私自身も本書の時間術を1ヶ月実践した結果、時間の使い方が大幅に改善されたと感じています。

◆本書のポイント

●時間術はほとんど効果がない!?

スケジュール帳、ToDoリスト、if-thenプランニングなど世の中にはたくさんの時間術があるにも関わらず、未だに多くの人が時間が足りない悩みを抱えてます。

時間術の真実
・万人に効果がある時間術は存在しない
・時間の効率を求めると生産性はむしろ下がる

万人に効果のある時間術が存在しない理由、それは

時間感覚のズレには人それぞれ異なる原因があるから

Aさん「あれもこれもやらなきゃ…やることが多すぎて何も進まない!」
Bさん「締め切りまであと1週間もあるし、1日くらい遊んでも平気だよね」
Cさん「やらなきゃいけないと頭ではわかってるけど、腰が重い・・・」

上の3人では作業が進まない点は同じだとしても、原因は全く違います。

骨折している人に風邪薬を処方してもケガは治らない様に、時間術もタイプによって合う合わないがあります。

ならばそれぞれの時間感覚タイプに合った処方箋を出そうというのが本書のアプローチです。

●そもそも時間感覚とは

人間には「視覚」「聴覚」等とは違い、「時間を感じ取る感覚器官」があるわけではありません。それでも私たちは「時間の流れ」を感じています。

私たちが時間の流れを認識しているのは過去から現在、現在から未来の「変化率」を脳が瞬時に計算しているからです。

・いまAという状況なのはBしたからだという過去を計算
・AすればBという結果になるだろうという未来を計算

このように人は自分が体験した経験などから予想される、確率の高い変化を常に脳内で算出し続けています。

本書ではこの、
脳が未来を計算するしくみを「予期」
脳が過去を計算するしくみを「想起」
と定義しています。

「時間感覚のズレ」というのは「予期」と「想起」のズレということです。

・「1週間後、プレゼンをしている自分の姿」を予期する
・「過去に似たような作業にどれくらい時間がかかったか」を想起する

この感覚にズレがあると、
「締め切りまでまだまだ時間がある」(予期が薄い)
「これは大変な作業だから腰が重い」(想起が誤っている)
といった誤った認識が生まれます。

予期と想起にはそれぞれ以下の4タイプがあり、4×4の計16タイプの時間感覚に分類されます。

・予期が「濃い」/「薄い」
・予期が「多い」/「少ない」

・想起が「正しい」/「誤り」
・想起が「肯定的」/「否定的」

たとえば

「予期」が薄くて少ない人
「将来の自分を自分ごとと捉える」ことが出来ないため、計画的にものごとを進めるのが苦手。

「想起」が誤りで肯定的な人
実際は手こずったはずの過去の体験を「スムーズにできた」と誤認しているため、計画の見積もりが甘い。

このような16タイプそれぞれに応じた処方箋を提案し、予期と想起のズレを正しく調整するのが本書の目的になります。

●時間感覚タイプ診断

本書では4×4の計16タイプの時間感覚タイプに応じた時間術を提案しています。

以下の特設サイトに時間感覚タイプ診断があります。
5分かからないので先にこちらをやってみるのが良いと思います。

ちなみに私は「容量超過×怖がり」になりました。

容量超過(予期が多くて濃い
常に複数の作業に追われている。
時間の使い方はうまいが常に作業内容に不満を抱いている。

怖がり(想起が正しくて否定的
失敗や批判を恐れて作業に取りかかるのが苦手。

なお、時間感覚タイプはタスクの内容や環境によっても変わるため、ある程度主観による判断も取り入れて良いそうです。

(例)単純作業は想起が「肯定的」だがクリエイティブな作業では「否定的」
(例)仕事では予期が「濃い」がプライベートでは予期が「薄い」

◆本書の時間術(一部抜粋)

私が実際に試したものも含め、一部を紹介します。

1.プレコミットメント(予期が「濃い」人向け)

予期が濃すぎる人は少しでも目標から外れた行動をするとストレスを感じ、人生の満足感を得られない傾向があります。

また、いろいろなものを犠牲にし過ぎたり、燃え尽き症候群に陥り本来の目標すら達成できないケースがあります。私もこれに当てはまりました。

予期が濃すぎると陥りやすい症状
・不健康な食事
・運動不足
・人間関係のトラブル

プレコミットメントとは「遊びの予定を事前に決めてしまう」ことです。
キャンセル料が高いホテルを予約する、友達と予定を決めてしまうなど、取り消しがきかない予定を立ててしまいます。

これにより生産性にこだわり過ぎ、目先の欲求を犠牲にする体質を改善する効果が期待できます。

また、個人的には先々の遊びの予定を組み込んでしまうことで、モチベーションの向上、それまでにタスクを終わらせないといけないという締め切りの前倒し効果もあったと感じました。

2.障害プランニング(予期が「多い」人向け)

予期が多すぎる人は頭の中に浮かぶイベントの数が多すぎて容量超過に陥ります。その結果、脳のリソースが分散しタスクをこなす事ができなくなります

予期が多すぎると陥りやすい症状
・「これやる価値あるのか?」と気持ちがぐらついて作業が進まない
・「あれもいい、これもよさそう」と色々な方法に手が伸びて長続きしない

障害プランニングは「どんな問題が起きるか」を考えて事前に対策をリストアップすることです。
想定するトラブルは自分の作業を中断させるものならなんでもよく、

・同僚に仕事を頼まれる
・スマホのゲームをしてしまう

など考えられるだけ全てリストアップします。

次にそのトラブルが発生したらどうするかを、事前に決めておきます。

・同僚に仕事を頼まれる⇒自分の作業が遅れていたなら必ず断る
・スマホをしてしまう⇒使用時間を制限するアプリを入れる

このように想定される問題と、その時の自分の行動を事前に決めてしまうことで、不測の事態による思考のフリーズやモチベーションの低下を防ぎます

3.タイムログ(想起が「誤っている」人向け)

想起が誤っている人は、本当は1時間かかったタスクも「30分くらいで終わったはず」など事実を誤認しているため、スケジュール作成の段階から無理な計画を立てて破綻している傾向にあります。

タイムログは自分が時間をどう使ったかを記録する方法です。

全ての行動を、アプリなどを使ってどれくらい時間がかかったか記録する

実際にかかった時間が客観的・数値的にわかれば、スケジュールを立てる時に「類似したタスクにどれくらいの時間がかかるのか」を見積もれるため、現実的に無茶なスケジュールを組むということがなくなります

タイムログはやることはシンプルですがかなり効果があったと感じます。

4.ごまかし率を計算する(想起が「肯定的すぎる」人向け)

想起が肯定的すぎる人は、過去の記憶の解釈が過度にポジティブなため、根拠のない「全部うまくいったパターン」の計画を前提にしてしまいがちです。

想起が肯定的すぎると陥りやすい症状
・実際は誰かの助けによって間に合ったという事実に気づいていない
・不慮のトラブル(うまくいかないパターン)を想定に入れていない

「ごまかし率の計算」の方法は先ほどのタイムログの応用です。

① タスクを始める前に、そのタスクにかかる「予想時間」をメモする

② 実際にタスクを行う、その際にタイムログをとる

③ 「予想時間」と「実際にかかった時間」を比較して、何倍の時間がかかったか(ごまかし率)を計算する

④ 次回計画を立てる時は、自分の予想時間に先ほどの「ごまかし率」をかけた時間を確保する

これにより「余裕をもったスケジュール」を立てることが可能になります。

◆補足

本書の時間術はまだまだありますが、自分にあったものを1つ実践してみるだけでも十分な効果を感じられると思いました。

また、時間感覚タイプは作業内容によっても変化するため、もし特定の時間術が効果がなかったとしても、「この作業には合ってない」だけかもしれません。

「このタスクでは自分はどのタイプに当てはまるかな」と立ち止まって考えてみるのも大事そうです。

また本書の後半では

・そもそも時間はみんな1日24時間しかない
・時間効率を追求してもいずれは24時間を使い切り、頭打ちちする
生産性を上げるには効率化の考え方自体から解放されるべき

といった内容も書かれていますので、常に時間に追われている感覚のある方は是非読んでみてください。

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