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OODAループを授業で回す

OODAループとは

現在、ビジネスの世界で注目されているのが「OODAループ」です。

「OODAループ」とは、アメリカ空軍パイロットのジョン・ボイド大佐が提唱した、迅速な判断が求められる問題解決のための考え方の1つです。

英語で、
Observation(観察)
Orientation(判断)
Decision(決定)
Action(行動)
の頭文字をとったものです。

戦闘機のパイロットは、戦闘が始まれば意思決定の連続です。
そのプロセスが、このOODAループです。

PDCAでは対応できない

一方、サイクルを回す、という考え方には、「PDCA」があります。

PDCAは教育の世界でもすっかり定着しました。
もともとPDCAとは、アメリカで考案された品質管理の方法でした。

それが、ビジネスの世界で使われるようになり、2000年前後から文部科学省が教育改革のキーワードとして使い、現場にも定着してきました。

しかし、IT革命で情報が瞬時に世界中に伝わる世界となり、PDCAでは問題解決のサイクルが対応できなくなってきました。

私たちの授業や学校生活も同じです。
問題に対して、状況が刻々変化する中でその都度、より最適な判断をしていく必要があります。
計画(PLAN)から始まるPDCAの考え方では、対応できません。

学校はえてして、なにか改善する必要があると、「では、来年度一年かけて検討しましょう。」と言われます。

特に授業で子どもは、計画通りの反応をしてくれるわけではありません。

OODAループを授業で回す

では、具体的にどうやってOODAループを回すのか?

例えば、「投げる」運動の指導。
ボールを投げてカゴに入れる活動で見てみましょう。

小学部高学年で、下手投げはできるAくんです。

そこで、より遠くに、強く投げるため、上手投げを目標にしています。

はじめは先生が見本を見せ、模倣させます。
ぎこちなさはあっても、形はできました。
実態把握=観察⓪〉

「さあ、一人でやってごらん」と、カゴに向かって投げると、入れやすい下手投げになってしまいます。
〈観察①〉

ここで、模倣だけではできないことがわかります。
本人の身体意識や身体図式、運動企画の未獲得さから、カゴの方を工夫することに方針を変えます。
〈判断①〉

次の手は、カゴを高く上げる、カゴを遠くに置く、カゴの角度を変えるのオプションがあります。
そこでまず、カゴを高く上げてみることにします。
〈決定①〉

1度目は、下から投げて、カゴのお尻に当たってしまいました。
下からでは入らないとわかり、2度目は、頭の上に腕を上げ、「上手投げ」になりました。
〈行動①〉=〈観察②〉

目標は、「より遠くに投げる」です。
そこで、カゴを高く挙げたまま、投げる位置から少し離してみます。
〈判断②〉

どのくらいの距離まで投げられるか考え、カゴ2つ分離れてみます。
〈決定②〉

「さあ、カゴに入れよう!」と投げさせると、やはり自分では楽に投げられる下手投げになってしまいました。
〈行動②〉=〈観察③〉

…と、授業の中で、刻一刻と変わる状況に、素早く判断して、手を打っていくことが求められます。

大切なのは、目的

ただし、ここで大切なことがあります。

授業の中で、次々と手を打てるのは、目的が明確だからです。

「カゴにボールを投げ入れる」のは、子どもの目的です。

教師の目的は、投げる動作の次の発達段階を目指すことです。

それが、コントロールよく遠くに上から投げる、という目標になります。

子どもと同じ「カゴに入れる」ことを目的にしてはいけません。

OODAループを回すために

このように、授業では、すべての場面がOODAループとなっています。

空軍のパイロットは、OODAループを的確に速く回さなければいけません。
そのためには、機体、戦術、航空力学など、専門的な知識は不可欠です。
そして、その知識を的確に行動に結びつけられるスキルが必要です。

では、教師にはどんな知識とスキルが必要でしょうか。

知識の一つは、教科を深く、分析的に理解すること。
もう一つは、子どもの心理を読むための、教育心理学の知見。

スキルは、子どもの動きを引き出す提示の仕方と指示。

これらが揃えば最強のOODAループが回せます!

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