追憶 インターナショナルアーケード 59 josh 2022年9月24日 20:11 1964年、東京オリンピック開催に合わせて整備された新橋から有楽町へと続くガード下「インターナショナルアーケード」は、奇しくも60年後の東京オリンピックを機にその姿を消した。日比谷や銀座のすぐ隣でひっそり息づいていたトウキョウの記憶。 JR新橋駅から線路沿いに有楽町方面へ歩いてみる。たいした距離じゃないので歩いすぐなんだけど、雰囲気がちょっと普通じゃありません。完全にバックストリート。大通り沿いはにぎやかでオシャレな店も多いんだけど、ひとたび裏に入ると開発期の香港さながらです。 線路の下へ入るため、途中で高架をくぐる。ガガン、ガガン、という列車の通る音に思わず上を見る。 高架下でAPPLE INという妖しいショップを離れたところから撮影。 高架下を有楽町方面へ歩いていると、狭い通路が。市場によくある職員用通路みたいな感じです。この上を電車が走っているはず――なんですが、思ったより周囲は静か。シーンとしています。 ふと見ると、黒い車が無数にある。左右ともズラァーっと。あれ、ちょっとココやばいのかな。どれもこれも、黒一色。この状況って公用車かもしくはそちらの方々?……気持ち歩調が速くなります。 任侠エリアをぬけると、青みがかったアジア裏通り的な通路が延々と続きます。遠近法がいかにも効果的。ここもシャッター街のオンパレード。土曜だからというわけじゃないよな。退廃的なアジアっぽさに混じって―― 突然フレスコ画みたいなのが現れたりする。ここらへんがインターナショナル。けっこう年季が入っていますが、いつのものか不明です。かつて昭和の時代にはこの通路も活気が溢れていたんでしょうか。いまとなっては冷たい無人の通路と化していて、明らかに浮いています。 お店か個人宅かわからないところもある 自転車が置いてあったりして人が使用している形跡は見て取れるけど、ここまで歩いてきて、まだ誰にも遭遇していません。前にも後ろにも、誰もいない。土曜の夜に、都会の真ん中で俺ひとり。 注意を促す掲示板を発見。この通路の上には新幹線も走ってるんだから、そりゃそうだよな。爆破テロリストには格好の場所です。だったら、この通路自体を何とかしたほうがよさそうなもんです。 事務所のドアを発見。みんなJRと聞くと大企業でさぞかし立派な、って想像しがちだけど、事務所は案外こんななのかもしれませんよ。 歩いていると、上へ続く階段が。えっ、2階あったの? 人の気配がないことを確認しつつ階段を登ります。別に悪いことしているわけじゃないだけど、他人のマンションへ忍び込んでいるような錯覚にとらわれます。見つかったら怪しまれるんじゃないかと。 階段の踊り場の窓から外をのぞく。おもてもあやしさプンプンです。 2階は会社の事務所などが並んでいるようです。現存する会社なのかどうかは別として。ここもまたシーンとしていて、なんともいえない緊張感がある。寂しいっていうよりも、普通じゃない雰囲気なんだよね。異世界みたいな空気が満ち溢れている。 そんななかJRっていう文字を見つけただけで、ホッと安心します。雰囲気的にはJRというより国鉄というカンジです。ここ労働組合の東京本部なんだな。JR東海本社は名古屋のセントラルタワーズっていうでっかいビルに入っているんだけど、かたや労働組合は……。まぁ大きなお世話ですな。ちっちゃく「ユニオン」と手書きで書いてあるのがカワイイ。 2階の窓から1階をみる。だれもいない。 2階に入っているテナントの会社の郵便ポスト(?) 雰囲気的には新聞社というより昔の病院みたいです。この会社をネットで検索すると以前はハングルのページに飛ばされたんだけど、いまは公式サイトがそもそも消えているみたい。 歩いていると通路が右に折れ、下へ続く階段が。なんか学校みたいです。ちなみに、2階のこの先を進んでいくと―― 行き止まり。扉がありますが施錠されていて開きません。興味はあったんですが、ちょっとやばい雰囲気だったので、無理にトライせずおとなしく階段を下りることにしました。あえて写真は撮りませんでしたが、左のシャッター手前にある会社も、なんだか堅気でないようなカンジがして……。 ((;゚Д゚)) 誰か覗いてる?! いや、気のせいか。でもどうして壁に穴が? ふたたび1階を歩いていくと、向こうのほうにようやく出口が。あぁ、やっと出られる。 壁には大きな横断幕が。インターナショナルというか、無国籍っぽさは伝わってきましたが、とりあえず貴重な体験だったなと感じ入りながら大通りへ。 と思ったら、通りをはさんで向こう側、コカコーラの自販機の隣にさらなる通路を発見。まだあんのかよ。どうしようかと思ったけれど、とりあえず行くことにしました。通路の上を走るJR高架の鉄骨がまるで背骨のように見えます。 入ってわかった。道幅が極端に狭いです。通路脇には途中でいくつか引っ込んだところがあり、おっちゃんが立ってたりしてマジでビビる。東京危険地帯です。ハザードマップがあったら真っ赤だぞ、ここらへん。天井はありません。むき出しの鉄骨がそのまま天井の代わりになっています。ここ、ほんとうは通路じゃなくて、たんなる路地なのかもね。それにしちゃこの閉塞感は尋常じゃない。 途中で警備体制の整った扉を発見。ジュラルミンのような金属でできています。「入口 インターナショナルアーケード」というシールが貼ってある。ここが? まったく意味不明です。 飲み屋の入り口。営業はしていない様子です。防犯カメラも設置されているし、警察官立寄所でもあるらしいけど、不安感はぬぐえない。 そして、そして、ようやく出口。遠くには、なじみのある居酒屋の看板も見えます。かすかな雑踏の音。かすかだけれど、確実に癒される瞬間です。 有楽町へ。駅周辺のネオンがまぶしいです。人がいる。声がする。人間賛歌ですよ。劇団ひとり的な笑顔を浮かべつつ、駅へと向かいます。いまなら、みんなに優しくなれそうな気がする――あ、酔っ払いみっけ。 この記事が参加している募集 #この街がすき 46,259件 #写真 #この街がすき #新橋 #有楽町 #近代建築 #ガード下 #インターナショナルアーケード 59