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【Zatsu】闇深な自販機10

春の陽気を思わせる青空の下、あたりは言いようのない緊張感に包まれていた。待ちくたびれたよ、「おまかせ」クン。お茶のフェイクをかませるとか、嫌いじゃないぜ、そういうところ。


2023.03.4(before)

王子よ、いよいよおでましか
しかし、そこには兄王子の姿も……



「ヴゥーン……」自販機がうなる。
「フッ」鼻をひとつ鳴らすと、次の瞬間、おれは地面を蹴っていた。
「初手、参るッ!」


2023.03.05

前回のお茶がまだ入っている。がんばっても、がんばっても、飲みきれないんです😮‍💨 中身を出して身軽にし、さっそく出発です


鶏「とりづかいの荒いご主人様だコッコ」


到着した先には……


おまかせツインズのおでましだ。さて、いきますか!


まず、どうしても気になる50円のコイツ。いったい何者なんだ(なんとなく……)


やっぱりね。おまかせの覆面があっさりはがれた瞬間。こんなに意外性のない正体もめずらしいな。おれの表情もスンッとしたままです。


となると、こちらのマスクも


ああ……


しかし、おれはひとつの仮説を立てていた。
「おまかせ」とはどういう意味か。

ふつうは見本の下にあるボタンを押すと、おなじ商品が出てくる。自動販売機とはそういうものだ。返品できないという特性がある以上、これは避けて通れない。

しかし、そこをあえて覆面をかぶせての「おまかせ」だ。

文字通りに受け取るならば、中にいろんな商品が混在していて、何が出てくるかは時の運、神のみぞ知る。
自分が選ぶんじゃない。
まさに、「おまかせ」ってわけだ。

ヒュー♪ なるほどね。小さな口笛ひとつ。
オーナーさんも粋なことしてくれるぜ。

オーケイ、ならばその運命のルーレット、回してもらおうか!




って、ちがうのかよ😠💢 結局ラムネしか出てこない


――しかしそのとき、奇妙なことに気が付いた。いや、気が付かされてしまった、といったほうがいいのかもしれない。


おまかせ兄王子の左側、空位のはずなのに販売ランプがともっている。ネエ、だれ? だれかそこにいるの?


ボタンを押すと、Ramu Bottle出現。なんでお前がそこに?


期せずして生まれたペア


おいおい、よく見たら兄王子とドデカミンのあいだも光ってる?! くっ、どこだ。チキショウ、敵の姿が見えない!


ボタンを押すと、ドデカミン出力


ってことはこっちも……


やはりそうか。わかったぞ、空位は右隣に実体があるんだ。いや、だったらなんで見本入れてないんだよ。


仕組みはわかった。しかし、いったいどうなっている。
実体のない空位のランプが光るとは。そして右隣の本体が姿を現す。
こんなのまともじゃない、いったい何が起きているんだ。


まさか……残像拳!!



ゴゴゴゴゴゴゴ……


だ、だめだ。レベルが違いすぎる。こんなの勝てるわけ……いったんここは退くしかないッ!


超然とこちらを見下ろす王子たち


joshくん、ひとまず体勢を立て直しましょう


完全に翻弄され、いいように手玉に取られたふたり。
「オーナーさん、やっぱりあんた、ただものじゃない」
命からがら逃げのびたものの、次の策が思いつかず途方に暮れる。
「しかし、残像拳、まさか幻影があらわれるとは」

そのとき、あっちゃんの声が聞こえた。
「あなたはいまだ、幻影を追いかけているのかもしれない。あなたが戦うべきはだれ?」

「戦うべき相手って、そりゃおまかせツインズに決まっているさ。でもやつらの幻影に惑わされて……ま、まさか!!!」

それはひとつの仮説にすぎなかった。しかし、試してみる価値はある。おれは確かな手ごたえを感じながら眠りに落ちていった。


<次回予告>
兄王子とその手下は残像拳の使い手だった。
いちどは幻影に翻弄されたjoshとあっちゃんだが、秘策を持って再度ツインズへ挑む。
ふたりの目論見は成功するのか。小銭は足りるのか。
そして、ファイナルバトルの行く末は!?

次回 闇深な自販機11
『双子の薔薇は哀しみの香り』
おたのしみに



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