見出し画像

【Zatsu】闇深な自販機11

おまかせ兄王子とその手下は残像拳の使い手だった。こちらの攻撃はくうを切り、体力だけがじりじりと奪われてゆく。完全に手玉に取られ、焦りが焦りを呼ぶ。
進退窮まったおれたちは、しかし一瞬のスキをついてその場を離れ、何とか逃げおおせた。


2023.03.05(Before)

「フフフ、おれたちの動きが読めまい」
おそるべし残像拳……


うのていで逃げかえったおれたち。戦利品といえば聞こえはいいが



自販機きゃつは追ってくる様子もない(そりゃそうだ)。
しかしこのままでは……どうすればいいんだ?

そのとき、あっちゃんの声が聞こえた。
「あなたはいまだ、幻影を追いかけているのかもしれない」
「いまだに幻影を追いかけているだって? ま、まさか!?」

おれの脳裏に、ひとつの可能性が浮かび上がった。


2023.03.07

奴らは余裕の表情でこちらの出方をうかがっている


そして決戦の日――

2023.03.09

鶏「こうなったら、とことん付き合うコッコよ」


よお、ツインズちゃん。右上をファンタに入れ替えたようだが、ツマラン小細工だ。


あのとき、おれが幻影にとらわれて自分を失いかけていたまさにそのとき、あっちゃんの一言がおれに謎を解かせた。
まったく、やってくれるぜ。
つまりこういうことさ。
かつて出会ったおまかせ王子は30円だった。そして今回、オマエに再会したとき、兄王子50円がそばにいた。しかも、残像拳を駆使する。
確かに最初は面食らった――。
しかし、こぶしを交えることでようやくわかったんだ。
兄王子よ、お前自身もまた幻影であると。


だとすると、敵の本体は……?


そこだぁ~! いっくぞおぉらああぁぁ!!!


オラオラオラオラオラオラオラオラーー!!! チャリン、ガッコン、チャリン、ガッコン……


はあ、はあ、はあ、か、勝った



おれが必死に戦っているさなか、背後を通る通行人の視線が痛かった。けれど、それすらも些細なことと思わせるだけの圧倒的な達成感がここにある。ようやく、戦いに終止符が打たれた。


持ち手がちぎれそうな重さ。しかし、どんだけ売れてなかったんだ、サンガリアのラムネ?


おめでとう、joshくん。ナイスファイト! 圧巻のラッシュだったわ。


残像拳の使い手たる兄王子、かれ自身もまた残像であった。
すべては幻影。おれは幻影を相手に右往左往していただけだったんだ。
そして、それらをすべて陰で操っていたのは、おまかせ王子30円。
そう、最初から敵は奴だけだったんだ。


見上げる空の日差しがまぶしい。終わった。これで世界に平和が訪れるといいのだが。


あまりの本数にすぐ飲む気になれず、いろいろ実験してみる。これでしょ、ホストクラブとかでよく見るやつ?


そうそう、おれは去り際にメッセージを残してきたんだ。

オーナーさん、あんたの挑戦状、なかなかこたえたぜ。

だが、最強の刺客はもういない。

謎は解けたんだ。


おれはメッセージを残してきた。


オーナーさん、ありがとう。それでは失礼します!!



そして、物語はすべては終わった……かに見えたのだが。



<次回予告>
激闘の末、敵の本体を打ち破ったjosh。
しかし物語はこれで終わらない。
水面下で進行する不穏な企み。
そして運命的な邂逅とは。

次回 闇深な自販機12
『恩讐の彼方に~2023春』
おたのしみに



この記事が参加している募集

#ご当地グルメ

15,953件

#イチオシのおいしい一品

6,388件

#創作大賞2024

書いてみる

締切: