COVID-19の公衆衛生対応におけるミスを指摘したFox Newsの記事は、正確な情報と根拠のない主張が混在しています。

詳細なレビューは非常に長いので、取り敢えずポイントだけ掲載します。
詳細なレビューの和訳は適宜追記していきますのでご了承くださいm(_ _)m。

【主張】

  • 自然免疫の方がワクチン接種よりも保護力が高い。

  • 30歳以下の予防接種を受けていない人の死亡リスクはゼロであった。

  • 布製フェイスマスク、学校閉鎖は、子供にとって利点はゼロで、害もあった。

  • ワクチンの投与間隔をあけることで、ワクチンの効果が高まり、副作用のプロファイルが低くなる。

  • 公衆衛生当局は、ウイルスが人工的に作成された可能性があることを知っていた。

【主張源】

・執筆者:Marty Makary,
・媒体情報:Fox News (2022/03/16付の記事)
記事のアーカイブ:https://archive.ph/k40Ts

【主張の評定概要】

不正確:

  • ワクチン接種を受けた若年層がCOVID-19で死亡するリスクは非常に低いのですが、リスクはゼロではありません。

誤解を招く恐れあり:

  • 感染やワクチン接種による免疫反応のレベルや持続時間に関する研究はまだ限られています。

  • 以前の感染から回復しても、COVID-19に対する防御が保証されるわけではありません。

説明が不十分:

  • フェイスマスクが子供達に害を与えるという兆候はありません。むしろ、学校での感染やウイルス拡散のリスクを減らすかもしれません。

  • SARS-CoV-2が人工的に作られたことを示す証拠はありません。

ほぼ正確:

  • 学校閉鎖は、子供達の教育的進歩や幸福に影響を与えます。

  • 投与間隔が長いと、mRNA COVID-19ワクチンに対する免疫応答が強化され、副作用が軽減されます。

【要点】

COVID-19のパンデミックは進化しており、SARS-CoV-2に関する知識も不足していたため、パンデミックの初期段階における政策決定は非常に困難なものでした。科学者が発見し、新しい知識を得るにつれて、公衆衛生政策もそれに応じて変化していきました。公衆衛生当局が「医学的ドグマ」に従ったという記事の主張とは逆に、彼らはウイルスに関する我々の進化する知識に基づいて、政策を適応させ、必要な場合には政策を逆転させることさえしたのです。これはまさに科学的方法の適用であり、ドグマとは正反対です。科学者達は、自分達が最初に立てた仮説を裏付ける証拠がないことに気づいたら、それを認め、その新しい証拠を世界の理解に取り入れるのです。しかし、証拠を集めるには時間がかかります。だからこそ、政策も追いつくのに時間がかかるのです。

【レビュー】

2022年3月16日、Fox Newsは、ジョンズ・ホプキンス大学医学部の外科腫瘍医であるMarty Makary氏によるこの意見書を掲載しました。記事の中でMakary氏は、公衆衛生政策に関して、COVID-19の大流行を通じて保健当局が犯した「COVID-19に関する10大ミス」と思われるものを列挙しています。

ソーシャルメディア分析ツールCrowdTangleによると、この記事はFacebookで15,000以上のインタラクションと2,500以上のシェアを獲得し、特にMakary氏が記事をシェアしたTwitterでは、その数が多かったそうです。

Makary氏が公衆衛生当局のCOVID-19ガイダンスに疑問を呈したのは、今回が初めてではありません。例えば、2021年2月にWall Street Journalに寄稿した意見書の中で、Makaryは、米国は2021年4月までに集団免疫に到達するという主張をしましたが、この主張は当時は裏付けがなく、不正確であることが判明しました。また、Wall Street Journalの2つ目の意見書では、フェイスマスクが子供達の「血中二酸化炭素濃度を上昇させる」と主張しました。Health Feedbackは、以前のレビュー(こちら、こちら、こちら)でこの主張を取り上げ、同様に不正確であることを明らかにしました。

Fox Newsの記事には、フェイスマスクが子供に害を与えること、ワクチン接種よりも感染誘導免疫がCOVID-19をよりよく防ぐこと、ワクチン接種を受けた成人がCOVID-19で死亡するリスクはゼロであることなど、不正確で誤解を招く、裏付けのない主張がいくつか含まれています。

Makary氏の発言の中には、SARS-CoV-2に関する現在の知識に基づいて正確に述べられているものもあります。しかし、公衆衛生政策を批判する中で、Makary氏はCOVID-19パンデミックの初期段階における複雑で急速に進展する状況についても触れています。

公衆衛生のガイドラインと意思決定は、科学的な証拠に依存しています[1]。しかし、医療システムを圧倒する恐れのある新型ウイルスに対する理解の不足から、公衆衛生当局はしばしば高いレベルの不確実性に直面しながらも意思決定を行わざるを得ませんでした。このため、SARS-CoV-2に関する現在のより広範な知識に基づいて過去の政策を評価することは、誤解を招く可能性があります。

以下では、Makary氏の科学に関する主張を分析し、論文で取り上げられた政策に関する科学的証拠の要約を提供します。
➡お手数ですが、詳細は各々をクリックしてご確認下さい。

【結論】

Makary氏の論文には、COVID-19のパンデミックに関する正確、不正確、裏付けのない、誤解を招く主張が混在しています。これらを総合すると、COVID-19に対する公衆衛生の対応はエビデンスに基づくものではなかったというメッセージを伝えていることになります。これは誤解を招くものであり、科学的データが乏しい、あるいは入手出来ない場合の公衆衛生上の意思決定の複雑さを考慮していません。

パンデミックの初期には多くの不確実性があったため、公衆衛生政策は新たな証拠の出現とともに変化し続けました。それらの政策のいくつかは、現在では間違いであったと見なされるかもしれません。そして、科学的な調査によって、いくつかの政策が間違いであったかどうかが明らかになるでしょう。COVID-19に対する公衆衛生の対応を評価することは、将来の脅威に対する備えを改善するのに役立ちます。

【参考文献】

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