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松永英樹[ABBEY]×内田聡一郎[LECO]/サロンの 「これから」をイメージする

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かたや16年目、かたや3ヵ月目。オーナー歴は大きく違えど、経営者としての責任を日々ひしひしと感じる気持ちは同じ。サロンの「これから」を語り合うと、自分の真の姿が見えてくる。今回は、こちらの2人の熱いお話をご紹介します!

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松永英樹[ABBEY]マツナガ・ヒデキ

1969年生まれ。長崎県出身。東京マックス美容専門学校卒業後、PEEK-A-BOOを経て、2002年独立。BAPE CUTSを展開後、’07年、東京・青山にABBEYをオープン。現在、4店舗、従業者数67人。

内田聡一郎[LECO]ウチダ・ソウイチロウ

1979年生まれ。神奈川県出身。国際文化理容美容専門学校卒業後、神奈川県内1店舗、東京・原宿のVeLO/veticaを経て、2018年3月、東京・渋谷にLECOをオープン。現在、従業者数7人。

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――松永さん、ABBEYは今年でオープン16年目を迎えるそうですね。

内田 すごい! すごすぎる。心からリスペクトします。

――実感こもっていますね(笑)。

内田 経営者になってみて分かりました。10年以上続いているサロンがどれだけすごいかってこと。

松永 ウッチーは今…?

内田 やっと3ヵ月たちました。毎日が戦いです。

――松永さんが今の内田さんと同じ、独立3ヵ月目のとき、サロンはどんな状況でどういう心理状態でしたか?

松永 僕、すごくつらかったんです。ABBEYの前身となるBAPE CUTSは、僕が経営トップで、NIGOさん(A BATHING APE創業者)に役員として入ってもらったサロン。内外装にも徹底的にこだわった店でしたから、初期投資でざっと1億円はかかっていたんですよ。

内田 1億円!

松永 スタッフ15人でスタイリストは僕を含めて4人でスタート。4人が持っている売上を計算すると、返済額は大きいけれどなんとか回していけるな、と思っていた。ところがふたを開けてみたら、僕のお客さま以外はあんまり来ていただけなくて、言うなれば、僕1人で15人を養っているような状態になってしまったんです。

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内田 のっけからリアルなお話で、ドキドキしてきました…。

松永 (笑)。僕もこれまで経営を語る機会がほとんどなかったので、あんまりこの話をしたことがないんですよ。で、その状態がしばらく続いていたある日のミーティングで、スタッフがごく低レベルな不満を語り始めて。カチンときた僕が「僕の考えに賛成できないなら、明日から来ないでほしい」というような趣旨のことをぴしゃっと言ったんです。まあ、普段からやる気のなさそうだった2人くらいは辞めてしまうかな…とは思っていたんですが、次の日ね、いきなり6人辞めてしまった(笑)。若い子には集団心理も働きますからね。期待していた子たちも出ていっちゃったんですよ。

内田 ……。

松永 ショックだったけれど、もう人手がないから、僕1人で月間500万円以上のお客さまをやりながら、みんなと一緒に朝も夜も掃除をしたりして。そうこうしているうちにめきめき組織が強くなっていったんです。実際、そのスタッフ数だけでも何とかなったし、当初より人件費も下がりましたから無駄なものがなくなって、すごくいい状態になった。みんなめちゃくちゃ頑張ったし、その後もいい子たちが入社してくれて、1年後には経営が軌道に乗り始めました。最初の1年は本当にきつかった。家族に人相が変わったって言われましたから(笑)。でも、その時の経験があるから、今何も怖くないです。

内田 すごいエピソードを聞かせていただいて、興奮しています。人相が変わるっていうの、よく分かります。今、僕がその状態です(笑)。VeLO/veticaにいたときは守られていて、自分のことに集中できていた。自分に直接に関わるスタッフの教育はきちんとしていたけれど、経営者になってみて、スタッフ全員の細かいこと全てについて“ケツモチ”しないといけないことが、ここまで大変なんだっていうことを実感しているところなんです。それに、何から何まで自分の決定で動くことのプレッシャーがすごくて、毎日、寝る寸前までいろんなことを考えています。僕は何でもディレクションしたがりなところがあるから口を出しちゃうんだけど、そうするとスタッフの自主性が育たないし…。

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松永 うーん。今はスタッフや幹部に任せていることも多いから大丈夫だけど、僕も悩んだよ。

内田 あと、僕が撮影とか、セミナーとか対外的な活動をすればするほど、スタッフの労働時間が長くなって、心身ともに負担がかかってくる。独立するときに、「人が辞めない店をつくる」って宣言した――これは、僕自身への戒めの意味もあって言って回ったことなんですけれど――のに、スタッフのワークライフバランスが全然取れなくなっていて、こんなことでいいのかなって。でも、僕が発信し続けてきた姿を見て、「一緒に働きたい」と集まってきたメンバーだから、それをやらなくなったら本末転倒なわけで…。そんなことをぐるぐる考えて、自己嫌悪に陥っています…。

松永 僕が一つアドバイスできることがあるとしたら、スタートアップ期の今は、まだ仕事とプライベートのバランスって、そこまで考えてあげなくてもいいんじゃないかなってこと。全員で頑張って、全員で成長して、全員で喜んだらいいんですよ。そうしているうちに組織がしっかりしてきて、次のステージにステップアップするんだと思います。

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――独立後数年は、対外的な活動を控える人も多いのですが、内田さんは違いますね。

内田 スタッフのためにも、舞い込むものは一切断らず、全てやろうとしている部分があります。「これから」に向けたスタッフのモチベーションを支えるのって、今は「僕」の存在でしかない。発信することをセーブしたら、彼らが見てきた僕ではなくなるわけで。今はそういう時期だな、と。僕自身は成功したい欲も全部やりたい欲も強いので(笑)、ぜんぜん苦じゃないんですけれど、“スタッフにとって”という観点ではバランスが難しいですね。

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――オーナーである「自分」の存在で全員をモチベートしていくのは、スタッフ数が増えて組織が複雑になると、だんだん難しくなっていきます。

松永 芯となるメンバーをどう育てるかがポイントじゃないでしょうか。幹部や、幹部同士の人間関係がとても重要。

内田 松永さんと、ABBEYの幹部の中村さん(副社長の中村章浩さん)、小田嶋さん(副社長の小田嶋信人さん)って、すごく仲がいいですよね。だって、毎日、一緒に出社しているって聞いたことがあります。

松永 そうそう。実際、仲いいし、SNSを通して、そこをしっかり出すようにはしていますよね、僕は。

内田 ブランディングの意味もあるんですね!

松永 対外的に、という以上に、スタッフが僕たちをどう見るか、ということを意識してはいます。だってやっぱり、お父さんとお母さんの仲がいい家庭って、子どもが安心して伸び伸びと成長できるし、素直ないい子に育ちやすいと思うんですよ。職場におけるお父さんとお母さんって、幹部のことですよね。サロンを長くやっていればいろんな時期があるけれど、幹部同士がリスペクトし合って、なんだかんだ相手のことが好きだっていうことって、結構大事だと思うんです。そして、そういう関係を築けているならば、そのことをスタッフにもしっかり伝えたほうがいいかなって。

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――出店などの将来計画についても、幹部間で話し合うんですか?

松永 話し合うけれど、細かい計画は正直、立てていません。規模拡大――美容室経営では、基本的に出店のことを指すと思いますが、それってかなりシンプルなことだと思っています。サロンがお客さまでいっぱいになって、それが元で失客が広がるぎりぎりのところまで待って、バンッと店を出すから、既存店も新店も満席になって、次の発展につながっていく。今年は出店の予定があるので、スタッフのモチベーションもいっそう高まっています。

――内田さんは、計画を綿密に立てるタイプ?

内田 僕は規模を大きくしたいな、と思っているので理想はありますが、計画はしていません。出店に関しては、松永さんと全く同じ考え。どうしようもないほど店が混むようになって出店するから成功するし、それが一番簡単で確実なやり方なんじゃないかと思います。スタッフを定着させて、しっかり育てるっていうことですよね。そのスタンスをぶれさせないことが大切なのかな、と。

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――将来計画にせよ何にせよ、この業界の経営者の仕事は、スタッフを育てることに尽きるのかもしれませんね。

松永・内田 そうですね。そしてそれが、本当に、本当に、大変。

内田 鳥羽さん(VeLO/veticaの鳥羽直泰代表)にしたら、僕も育てるのがすごく大変な奴だったと思う…。今、痛感しています。

松永 ウッチーには、身体にだけは気を付けてほしいけれど、ある意味、今が一番勢いがあっていい時期だよ。僕も負けないように、ガンガン働かなきゃって思っているもん。やらない理由がないよな、って。

内田 松永さんのキャリアと実績でそう言えること自体が、本当にすごい。今日、お話しして、僕ももやもやが晴れてきました。頑張ってやっていきます! ありがとうございました。

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日々、満席でもうどうしようもなくなったら店を出す。出店って本来、シンプルなものだと思います

松永英樹

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「スタッフが辞めない店をつくりたい」自分自身がそこから逃げないように、宣言しています

内田聡一郎

『美容の経営プラン』2018年8月号

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