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理念・ビジョンの共有、スタッフが自分の強みを認識する「小さなサロンの“強いチーム”のつくり方」/Laughful(東京都渋谷区)

オーナーの自分と、スタッフがもう1人いれば、それはもう、“チーム”だ。オープン3年目、4名の小さなサロンが、チーム力アップに奮闘中。みんなでサロンを営む意味を模索する。

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厳しい時代を生き残るためのチームワーク

美容の経営プラン編集部・小池入江(以下:小池) 私たち編集部が『Laughful』のことを知ったのは、サロンのホームページ上で展開している中村さんのブログがきっかけでした。そこでまさに、サロンの“チームワーク”について、考察を述べられていたのです。

中村拓郎(以下:中村) はい。2019年の夏に書いた記事ですね。実はその半年ぐらい前から、チームワークについて深く考えるようになり、関連書籍を読み漁っていたんです。当時、スタッフは僕を含めて4人(現在と同じメンバー)。オープニングスタッフである安田(悠人店長)には、店長を任せるようにもなっていました。

小池 スタッフが増え、“組織”となったことで生まれた課題の1つが、チームワークだったのですね。

中村 そうですね。僕ら4人でやっている意味って、一体、どこにあるんだろう?と。シェアサロンや面貸しではないのだから、僕らは1つのチームであるべきなのに、そうはなっていないな、と感じたんです。

小池 スタッフの仲は良かったのですか?今はとても雰囲気が良いように見えますけれども。

中村 一貫して仲は良いんですけれど、人間関係がうまくいっているということと、チームワークがいいことって、全く別の話ですよね。チームワークって、人が一緒にいることによる足し算でなく、力と力が掛け算で組み合わされることで、1人では成し遂げられない大きなパワーを発揮できることだと思うんですが、当時の僕らは、ただ気を使い合っているだけで…しかも、相手に気を使っているものだから、それぞれの力がちょっとずつそがれた状態で足し算されていて、「このままじゃダメだな」と思いました。

小池 なるほど。実際、そういうサロンは多いと思いますし、そうなってしまっていること自体に経営者が気付かないケースも多そうです。

中村 これからの時代は、お客さまにとって、本当に“かゆいところに手が届く”店でなければ生き残れない時代です。そこで生き残るためにも、ただ売れっ子スタイリストになれる人材を育てるのでなく、僕を含めた4人を、『Laughful』というチームとして高めていこうと考えました。それがサロンの強みになるはずだ、と。

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“理念・ビジョン”の共有と、強み発見

小池 チームワークという課題に、中村さんはどのような方法で取り組んだのですか?

中村 大きく2つあります。まず、日頃からスタッフとの会話の中で、サロンの理念やビジョンについて頻繁に触れ、改めてみんなで共有するようにしたこと。もう1つは、「ストレングスファインダー」というワークショップに取り組んだことです(参考/https://www.gallup.com/)。

小池 理念やビジョンの共有は、チームワークの向上にも効果があるのでしょうか?

中村 はい、ありました。根気強く語っていると、みんなに、「僕らは同じ理念やビジョンのもとに集まっている仲間なのだ」ということを念頭に置くクセがつくんです。すると、いつしかスタッフ側から、理念やビジョンにまつわる言葉が出てくるようになる。そうすると、おのずと「その実践のために力を合わせていこう」という空気になり、モチベーションも抱きやすくなったように感じています。

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初めて4人でストレングスファインダーを行なった際の結果。自分の強みを書き入れたホルダーを身に付けて、自分たちについてディスカッションする。

お互いの“使い方”を知り、チーム力を発展させる

小池 なるほど。そして、ストレングスファインダーとは?“強み発見”という意味のワークショップですね。

中村 これは、回答するのに、1人40分ぐらい要するペーパーテストを受けると、自分の強みがランキング形式で出てくるというものです。

小池 自分やチームメンバーの強みを知ることで、チームワークが高まるのですか?

中村 そうなんです。言うなれば、チームメンバーの“使い方”がお互いに分かるようになる、というメリットがあるんです。例えば、当時の僕は回復志向や未来志向が強かった。前を見て、足りないところを補おうとする意識が強いということですね。店長の安田はポジティブ思考と最上志向が強くて、理想が高く、すごく前向き。一方、後から『Laughful』に入社してくれた2人は、共に共感性が高かったんです。これは、うちではお互いに納得の結果だったんですが、客観的なデータとしてそれが示されると、たとえネガティブなことであったとしても、相手に対して、「ああ、だからこの人はこういう時にああいう反応をするんだな。分かってあげよう」と納得できるんですね。そういう確認の積み重ねによって、うちでは、スタッフ間の“フォーメーション”のようなものが確立されました。

小池 フォーメーション?

中村 どういうことかと言うと、店長の安田が、持ち前のポジティブ思考で何か新しい提案を思い付き、まず他の2人のスタッフに投げ掛けて、2人の〝共感?を得ながら、その内容をもんでいく。そうして精度が高まったものを僕に投げ掛けてくれて、僕がそれを実際に経営的メリットがある形にしていく…という具合に、サッカーでいうところのフォーメーションができ上がってきた、ということです。フォーメーションって、個の力を最大限生かして、チーム力を引き上げるためのものですよね。新しく、まだまだ未熟なサロンですが、チームワークの糸口がつかめた、と感じています。

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『Laughful』中村拓郎 代表

スタッフから見た『Laughful』

安田悠人店長
スタイリストかアシスタントか、または担当か担当じゃないか、という立場の違いを超えて、お客さま全員を“自分のお客さま”と思って接するためには、チームワークがポイントになると思います。

岸裏夢加さん
言動の内容には共感できても、コミュニケーションの方法が自分の感覚と違うと、チームがうまく機能しないことがあると思います。でも、お互いのタイプを理解しておくことで、すれ違いが防げるようになりました。

成田明紀子さん
ワークショップを通して、客観的なデータを元に、コミュニケーションについてお互い腹を割って話し合うことで、チームとしての関わり方の指針ができました。

<サロンデータ>

Laughful(ラフル)
代表者:中村拓郎
所在地:東京都渋谷区神宮前
創業年:2017年
店舗数:1店舗
従業者数:4人
カット料金:7,700円~
URL:https://laughful-hair.com/

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※本記事は、『美容の経営プラン』2020年10月号に掲載

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