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難しい言語、やさしい言語(2)

 更新に半年近くかかってしまいましたが、前回の記事は以下でお読みいただけます👇

文法は複雑でも発音は簡単な方が「やさしい言語」

 今回は、言語の難易度を比較する2つ目の基準「発音」について書いていきたいと思います。

「この言語は難しい」というときの理由として、「発音が難しい」というものがあります。

 例えば、中国語は発音が難しい、ベトナム語には声調が6つもある、チェコ語にはノンネイティブにはほぼ再現不可能な音がある、等々。

 一方で、発音が比較的簡単と言われる言葉は、たとえ文法が複雑であったとしても、全体として「やさしい言語」という印象を与えるのではないかと思います。

 個人的には、「発音が比較的簡単」、つまり「母語にある音のレパートリーに近い言語」は、「やさしい言語」と言えるのではないかと思います。

 というのは、「自分の発音が通じなくて、コミュニケーションができない」という体験は、結構トラウマものだからです。

 文法は頭の世界ですが、発音は身体の世界です。

 特に、私たちの骨格や口の周りの筋肉は母語仕様になっているので、いきなり外国語に適した動きをせよといってもなかなかうまくいきません。

 結果、どんなに矯正しても訛りは出てしまうし、完璧にネイティブのように聞こえるレベルに到達するのは本当にごく一部の人間だけです。 

 ただでさえ日本人は間違いを恐れる完璧主義的な傾向を持っているので、ネイティブから悪気なく「え?」という顔をされるだけで自信を失ってしまいかねません。

 発音に自信がなくなると、話し出せなくなってしまうので悪循環です。

 「文法が難しいけど発音は簡単な言語」と、「文法は単純だけど発音は難しい言語」の2つがあるとしたら、僕個人としては前者の方を「やさしい言語」と考えます。

 母音の発音が比較的簡単な言語が「やさしい言語」

 更に大事なのは、子音と母音のうち、母音の発音が比較的簡単(=母語にあるものに近い)であることです。

 子音は主に舌と歯と唇の話ですが、母音は口の開き方全体の話です。

 舌と歯と唇がどのように接するかは、まだイメージしやすいです。一方で、「アの口をして「オ」」とか、「曖昧に口を開いたイ」とか言われても、口の開き方は人それぞれなので、なかなかここ!と言った正しい口の構えをするのが難しいです。

 しかも、母音は子音よりも長く残る音なので、この母音の音がうまく発音できないと、訛って聞こえてしまいますし、母音の微妙な口の開き方で意味を分けている言語にとっては、誤解を招くもとになってしまいます。

 したがって、母音が正確に発音できること、つまり、母語の持つ母音と数が近い言語の方が、「やさしい言語」と言えると思います。

 この点で日本語の母語話者は非常に不利です。

 というのも、日本語には母音が5つしかないのですが、多くの言語の場合母音はこれよりも多くあるためです。

 英語は16~26個の母音があるので、これを正しく発音し分けるのは至難の業です。

 文法の項(前回)で、英語は文法よりも語法が占める割合が多く「難しい言語」であると書きましたが、発音の面においても、英語は「難しい言語」に入ると思います。

 一方で、スペイン語は、母音の数が5つ、イタリア語も母音の数は7つ(といっても実際はほぼ5つ)なので、文法は複雑だとは言っても「やさしい言語」と言えると思います。

 発音は容姿のようなものなので、「綺麗ですね」と言われやすい言語の方が自信に繋がります。発音だけで学ぶ言語を選ぶとするなら、日本語に近い音を持つ言語を選ぶと良いと思います。

(3に続く)

 

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