サロンコラム無料配信第2弾!「野球人口減少を解決する方法」第3回 『クラブとしての価値提供』
第3回「クラブとしての価値提供」
「野球人口減少を考える」の第3回目は「部員のレベルに合ったサービス」というちょっとビジネスチックなお話をしたいと思います。
野球人口減少の理由で忘れがちなのが、「野球クラブとしての価値提供」の部分であると僕は思います。
部活動の場合は、学校教育の延長線上にあるので、指導者はいわば「サービス残業」と言えます。野球部に入るための満足を得るために高校に入っているわけではありません。
ですから、野球部における理不尽な扱いなどに対する不満はクレームとしては成立しますが、学校のサービスに当たるとは考えにくいので、部員はその扱いを受け入れざるを得ません。
「こっちはボランティアでやってやっているんだから、殴ろうが、蹴ろうが文句言うな」と言いたいわけでもないのですが、学校=部活のことではないので、甘んじて受け入れざるを得ない状況であるのは理解できると思います。
おそらく、これが部活動以外でも普通に考えられてきたのではないでしょうか。
部活のように、ほぼボランティアでやっているのだから、部員や、その親はこの状況を受け入れろと言う感覚の中、指導をしてきたから問題が生じてきた。
もちろん、地域のクラブはパパさんコーチが年々変わっていく仕組みなので、そうならざるを得ないのは間違いなくあるのですが、そうした高圧的な指導から不公平な選手起用までを考えたときに、「野球をやる価値を感じない」と思われてしまったのが、野球人口減少の遠因ではないかと言うことです。
丸坊主に、お茶当番、昨今は筒香嘉智(メジャーリーガー)の発言によって、さも野球人口減少の全てがこれらのことが野球少年やその保護者に影響を与えたかのようになっていますが、クラブの価値を提供できなかったことに起因することに気づかなければいけないのではないでしょうか。
僕は、この丸坊主やお茶当番、大した問題ではないと思っています。
この問題を引き起こしているのは、繰り返し僕が訴えている、さまざまな違いのある子どもたちが同じ壇上に上がっていることに問題があるのではないかということです。
これは第2回の「早生まれ」の話とも通じてくると思うのですが、学童〜高校生までにおいて「早熟」があるということを考慮に入れないといけない。この「早熟」にはたくさんの意味合いがあります。
一つは身体的なもの。前回で上げましたように、早生まれの子とそうでない子の身体的な違い。二つ目は、その身体的違いが及ぼす技術レベルの違い。そして、3つ目がモチベーションの違い、です。
学童においてはこの3つ目を理解しないといけない。
「誰もがプロや甲子園を目指しているわけではない」という話をよく聞きますが、これは学童レベルでも同じことがいえ、「誰もが野球が好きなわけではない」のです。
例えば、未就学児や小学校低学年の子どもが今やっていて楽しいものに関して野球「100%」の子もいれば、野球「50%」公園での砂遊び「30%」、ミニカー遊び「20%」な子もいるわけです。逆に野球のパーセンテージが一番低い子もいる。
友達がやるから、なんとなく野球を始めたというくくりの中でも、モチベーションの違いが出るわけです。
モチベーションの差は成長スピードの差に影響すると思います。そして、技術の差も開いていく。
そうしてさまざまな子どもたちがいるにも関わらず「地域」で人員を募集してしまったら、どうなりますでしょうか。当然、選手のレベル、モチベーションに差が出てくるのではないでしょうか。
その中で、丸坊主に、お茶当番というのがあるのです。
お茶当番は本当に悪いの?
これは厳しい指導についても同じです。砂場で遊びたい気持ちの子どもに、怒鳴り散らしても頑張らないでしょう。逆に、モチベーションが高い子どもにはプレッシャーがかかる言葉をかけた方が伸びる場合もあります。
しかし、それらの子が同じ壇上にいたら、「クラブとしての価値提供」は不安定になりませんか。
上の子に合わせれば、下の子たちはついていけない。
下の子に合わせれば、上の子は面白くない。
こんなクラブで野球がやりたくないとなり、そもそも野球嫌いになり、他のスポーツに気持ちが向いていく。それが野球人口減少の遠因になったのではないでしょうか。お茶当番は悪くないんです。丸坊主にしても然り。
うちの甥っ子は小学校の時、補欠でしたけど、進んで丸坊主にしていました。きっかけは命令されたからだったけど、なんだか楽しくなってきて、丸坊主の方がいいやと思ったそう。
以前、ある少年野球教室のイベントに参加した時にい、練習の厳しいチームを辞めた子どもが参加していて、その親が「お茶当番も嫌だった」という愚痴をこぼしていて、その子どもが話題になり、記事なったりしていました。
その時に、僕はすごく違和感がしたんです。
子どももそうでしたが、お母さんも、すごく大人しそうな方で、、、、
こんな親子が厳しい野球チームになんか言ったら、馴染めるわけない。子供よりお母さんの方が馴染めないって思いました。「お茶当番が悪い」って結論づけられてましたが、僕はその時に、モチベーションの差が子にも親にもあって、それが異なるところでやったって苦しいだけだろうなと。これって、お茶当番が悪いのではなくて、どんなレベルの子も同じところにいることが問題じゃないのかなと思った次第です。
部員数の増加がもたらすこれからの課題
今、いろんな記事を見ていくと、「部員不足」のチームと「部員増加」のチームの二極化が進んでいると思います。旧態依然としたチーム方針のクラブは衰退していくだろうし、一方でしっかりと先を見た取り組みのチームは部員数を増やしていくと思います。
しかし、増えたからといって良いと僕は思いません。
クラブに選手の数が増えれば増えるほど、選手個々の違いも生まれやすいということを頭に入れなければいけません。
部員数がいたら、それだけの「価値提供」を全員にできるのか。ここが問題になってくるということです。
クラブチームの現状ではそれほど多額の月謝をもらえないかもしれません。ということは、つまり、部員が増えてもスタッフを増やすことはできないということです。
その中で、どうやって価値提供していくのかを考えないといけません。
第1回目に書きましたが、部員数が急激に増えた高校は練習を厳しくします。篩にかけるためです。それをしてきたから、野球から離れる子が増えた。
二極化して、部員数が増えたら増えたで、部員全員のニーズに応えることができるのかまで考えないといけないのです。
正直、そこまで考えているクラブが多いようには思えません。
プロに行くような子だけではなくて、技術的にも身体的にも、そして、モチベーションにおいてもさまざま異なる選手に対応して指導ができるか。
これは今の野球界が大事にしなければいけない視点なのではないかと思います。
本日は以上です。
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