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ANSER2


7月末を持って、無期限休業をしてしまう、行きつけのお店を紹介した際に
『このコロナ状況の1つの題材として、
フィクションでライトノベルにしたいのですが』
という相談(打診)を受けて、すぐに書き上げていただ来ました。
今更ながらですが、紹介とANSERを。
https://note.com/yohi55/n/n5e01d0eac29e

https://note.com/jonnnnnyucom/n/n070af06544b2

俺が、どんな時でも昼でも夜でも受け入れてくれた、
【寄れた】場所

飲めない俺でも、
お酒が進む場所。

指定席は、短いカウンターの一番端。

荷物を起き、座る時には、
バーテンダーのユキが、いつも2つのグラスに氷を入れて何食わぬ顔で、
「どうします?Jonnyで良いですか?」
と聞いてくる。

なぜ2つか。
それは、プチセットメニューに【ちょい飲みセット】がある。
内容は、好きなドリンク2杯とシェフの気まぐれ2品がついて1,500円で提供される。
基本的に1杯で満足できる安上がりな人間なので、1杯余る。
その1杯をユキに飲んでもらっていた。

2品はシェフのもっちゃんが気まぐれで出してくれた。

おすすめはピクルスとお肉(赤身の)天ぷらを気を使わせてよく出してくれた。

そして、何よりのグランドメニューでここぞっていう時と、予算がある時は…

【イチボ】

丼にしてもらい、ワインソースをかけてお腹を満たしていた。
俺が、ガツガツ食べる姿をシェフは嬉しそうに見ていた。

彼らと付き合い始めて約2年半。
当たり前のようになっていた。

恋に敗れた時も寄り添ってくれた。

仲間との飲み会もここでやった。

しんどい時も…

そこに俺はいた。

4月になり、政治の指示・指導の元、自粛を余儀なくされた。
自分の職場も命を優先にという指導の元、基本外出禁止でリモートワーク。

5月になり少し緩んだが、
結局ランチ営業しか当分の間しないということだった。
オフィス街ということもあり、
常連さんたちは、リーズナブルでコスパの高いランチを食べに来る。

ランチ担当の女優・モデルを目指す、夢あるサキはいつもニコニコとしている。
俺が行くと、
「今日の週替わりは、豚の角煮ですよー」
と聞いてもないのに元気に言ってくる。

結局ランチどきでも人はまばら。
近所の会社も基本はリモートなんだと言う。

このお店は幾度となく困難が降り注いでいた。
その度に俺は、「今だけだから」と。

前の店長の時は、
スタッフが示し合わせたようで、開店当初からいたシェフのもっちゃんと、店長でなんとか乗り越えた。
そのあとも、スタッフには恵まれず…
店長は病気になり辞めてしまった。
ダブル店長として、もっちゃんとユキでなんとか1年目を乗り越えた。

その間もいろいろあったが、お店を回すことに関しては、スタッフがレギュラーになりつつ、乗り越えてきていた。

そして、今回の新型コロナウィルスだ。

病むのは体だけではなかった。
精神と欲求がコントロールできなくなってしまう。
未知との敵を迎えた。
目に見えない小さな小さな…本当小さな【ヤツ】を相手に、
現時点で、人類は振り回されている。
その影響は…居心地の良い俺のテリトリーまでも。

6月中旬のある日のランチ。
ディナータイムに寄ってみた。

ユキともっちゃんが、神妙な面持ちでバーカウンターに立っていた。
客は俺だけだった。
ディナー再開して5日間。
久しぶりの客が俺だった。

「ジョニーさん…」
俺は察した。
「閉めるの?」
先に言ってしまった。
「はい…親会社の決定で、6月いっぱいで無期限の休業という判断が下されました。」
「2人はどうするの?」
「稼げないので、辞めて探します…」

誰も責められないし、
怒りのやり場がない。
そんな時は、
「どうせ、俺だけだろ!奢るから飲もうよ」

ジョニー割りとハイボールとビールで乾杯した。

「二人が夢に向かうならどんな判断でも応援するよ。」
その日の別れ際に伝えた。

最終日はランチ営業のみということだったが、
打ち合わせが立て込んでいて、ランチが摂れないことはわかっていたから、
営業が始まる前に会いに行った。

店に入ると開店前の準備でテーブルを拭いたりサラダバーの準備をしたり、
トイレ掃除をしていた。

「忙しいところごめんな。ちょっとランチ来れそうになくて。」
「え?そうなんですか?」
とユキとさきが言う。
「だから、記念に写真撮りに来た」

店内の雰囲気が映る場所を探して、4人で撮った。

俺以外の3人は活き活きしていた。
まるで、次へのステップに向けて振り切るかのように。

「本当、今までありがとうな。これは俺からの気持ち。本当はちゃんとしたプレゼントを用意したかっただけどさ。」
と昨夜書いた【手紙】を手渡した。

「手紙なんてもらったことなーい」
とユキとさき。
「自分ももらったことありません…」
もっちゃん。

「これからをがんばれよ。」


いつも閉店までいるから、階段を降りて下まで見送ってくれたことを俺は思い出していた。

過去を恨んでも仕方ない。
彼らにとって、素敵な未来を俺は願うばかりだった。

本当にありがとう

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