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元祖平壌冷麺屋note(16)

以前、オープンしたての、から揚げ屋さんで、白い店内が羽蟻に襲撃されていて、店主さんが「こわい、こわい」と体を縮めていた。「飛ぶ生き物」「羽のある生き物」が大嫌いらしかった。

冷麺屋でもお世話になっている、害虫駆除の業者や、虫除けの方法を教えた。そして、虫は「バグ」だから、この空間がマトリクスだとしたら、エラーが生じているだけなので、感情移入せずに、バグは速やかにエージェント・スミスのようにデリートするだけです、とマニアックな持論をぶった。

「あっ、唐揚げは、大丈夫なんですか?」もう飛ばないから大丈夫です。
「帽子に羽蟻がとまってますよ」ひいい!

という、ほとんど初対面のノリではないやり取りをしていると、先客の中国人の方が笑いをこらえていた。彼は、お子さんが近所の幼稚園へ通っているとのことだった。自分も在日コリアンで、娘がいることを話すと、お互いに親近感がわいて、名前を紹介しあった。

「趙です。」ボクも「張」なので日本読みが同じですね。三国志だと、趙雲子竜と張飛翼徳、おお、二人とも劉備軍じゃないですか。桃園の誓いで、もう義兄弟ですね。と、盛り上がった。

すると、趙さんが、悪戯っぽい目で店主さんの方を見たので、視線を移したら、また、羽蟻が帽子に乗っていた。指差すと「ひいい」と、やはり怖がっていた。

蟻で怖がるのべきは、二種類だけですよ。まずは、ヒアリ。それから、キメラアント。奴らは、人を食べることもありますからね。

「なるほど。って、それ、ハンターハンターじゃないですか!」

ところで、店主さんのお名前は?と劉備軍を代表して尋ねた。
「◯◯ガミです」

神様でしたかあ。おそれいりました。ところで、虫は神の使いじゃなかったっけ。

後日、羽蟻は霧消していた。ただし、趙さんがご来店した時だけ、数匹、現れたとか。それ以来、羽蟻は「趙さんのスタンド説」が浮上している。

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