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「国境を超え、医療現場が抱える世界共通の課題に挑戦」3.9兆円の巨大市場をリードする、ジョリーグッドの医療VRとは。

創業から9年。VRで医療を変革し続け、多くのチャレンジを続けているジョリーグッド。改めて、代表取締役CEOの上路に、これまでのジョリーグッドがどのように事業を進めてきたか、そしてこれからどうしていきたいのかを語ってもらいました。VRが解決する医療・医療教育の課題とは?その課題解決の裏には、ジョリーグッドが持つチャレンジ精神と、個人とチームを高める価値化への取り組みがありました。


VRを活用してこれまでにない医療教育とデジタル治療を実現

ージョリーグッドの事業について教えてください。

我々は、VRとAIのテクノロジーを使って医療へのアクセスを加速しています。具体的には、事業は大きく2つで、1つはVRを活用した医療スタッフ教育のプロダクト、もう1つはVRを活用した患者の治療やリハビリを支援するプロダクトです。

1つ目の医療教育については、全国の医科大学に導入されているほか、国の事業も20から30程度行っています。最近では海外でも医療教育へのテクノロジーの導入が進んでおり、医療の国際交流を加速しています。

2つ目のデジタル治療については、大手製薬会社と業務提供し、精神疾患や生活習慣病を持つ人に対するVRでの治療を提供しています。一般的に、スマホやタブレットのアプリを使ったデジタル治療と言うと、治療や診断の「補助」の役割が多いですが、我々が提供しているのはVRコンテンツによる「治療」そのものです。

ーこれらのサービスのうち、まず医療教育に関わるサービスについて聞かせてください。具体的に社会のどのような課題を解決していると考えていますか?

大きく2点あります。
まず、現在医師をはじめとする医療人材が枯渇しています。その理由の1つとして、医療教育が効率よく行われていないことが挙げられます。そもそも医療教育は患者を治療している現場で経験値を積むことが何より重要で、いかに現場に立って見て体験するかが肝になります。しかし近年、新型コロナウイルス感染症が蔓延した影響もあり、病院に院外の者が入れず立ち会い実習(臨床実習)ができなくなっています。そもそも医師になるためには2,000時間から3,000時間の臨床実習が必要ですが、とてもクリアできる状況ではありません。

このような医療教育の課題を踏まえ、どこにいても現場で実習をしているかのような経験を積めるリアリティを有する我々のVRが評価されているのだと感じています。従来の臨床実習は手術室や病室に足を運んで行うため、物理的な移動が必要でした。VRによって、実習の半分程度は移動が不要になり、VRを使った実習にも現場での臨床実習と同様に単位を与えようという動きが出てきています。こうした動きは医療教育を加速すると考えています。

また、医療のあり方が変化することで、別の医療教育の課題を現場が抱えるようになりました。
昨今の医療の現場で重要視されている考え方に「チーム医療」があります。これまでの医療は、1人のゴッドハンドと呼ばれるような凄腕の医師によって難しい手術や治療が行われるのが普通でした。しかし、近年は1つの手術に、メスや機械出しの看護師や麻酔科医、生命維持管理装置を操作する臨床工学技士など、5人から10人程度のスタッフが関わり、チーム全体で患者の医療に責任を持つことが主流となりました。

そのような体制変化がある一方、チーム医療の問題も表出しました。それは、チームでの連携が崩れることによって医療事故が起きてしまうことです。特に救急医療は、ほんの一瞬の判断が生死を分ける世界です。そのような一刻を争う現場においては、スタッフ同士の阿吽の呼吸やアイコンタクトが非常に重要で、チーム全体でその一瞬一瞬の連携や判断を適切に進めていかなければなりません。とはいえ、たくさんのスタッフが集まったチームでは、それぞれ学んだ学校や資格が異なり、受けてきた教育や思想もバラバラで、いきなりチームとしてよい連携がとれるわけではありません。かといって、現場さながらの連携を練習で身につけようとしてもその方法がありませんでした。

我々のVRでは、自分が執刀医に「憑依」した感覚になれるという特徴がありますが、執刀医だけでなくチームの看護師や臨床工学技士の目線にもなることもできます。違う立場で同じ現場を体験してみると「自分がこれをしているとき、看護師はこうしているんだ」と体験を通して分かるようになり、深い議論やチーム医療の学びにつながっています。こうしたチーム医療の経験は、バーチャルを通してしか出来ないのではないかとも言われています。今、この時代の最適な練習方法としてVRが高く評価されています。

ー医療が抱える教育の課題がよくわかりました。もう一つの事業である患者の治療を行う事業に関してはどういう課題に向き合われていますか?

この事業は、うつなどの精神疾患を持つ人や発達障害を持つ人への治療にVRを活用しています。精神疾患や発達障害を持つ人は、人とのコミュニケーションに苦痛や困難を感じている人が多くいるのですが、人と接する上での適度な距離や人の顔を見ることを練習しようとしても、対面で至近距離に近づくような練習はなかなか難しいものです。そこで、人と人との距離をリアルに再現できる我々のプロダクトを活用し、実際に目の前に人がいるかのような感覚で適度な距離感を体験し、人と対面で向き合う練習をしていただくようにしています。

VRによるリアルな体験を積み重ねていくことで感覚として染みつき、患者の社会復帰につながるリハビリができると思っています。

「革命的なプロダクトだ」日本の医療現場の課題に深く刺さったプロダクトは、わずか1年で世界にも受け入れられた

ーお客さまの反応や医療VR教育市場の可能性について教えてください。

我々のクライアントは医療機器メーカーや医師ですが、説明の際にはまずゴーグルをかけて体験してもらいます。すると「今まで私が講義でいろいろ演技をしながら説明してきた苦労はなんだったんだ」という驚きとともに絶賛をしてくださいます。講義だけでなく、医学生や研修医に対する説明でもロールプレイングなどの準備が非常に大変なのですが、「このVRがあれば自分がした経験をそのまま伝えている感覚になれる、革命的なプロダクトだ」という声をいただいています。

さらに、我々のVRは数百人の医学生・研修医に一度に体験させることができます。今までの臨床実習では手術室に入れるのはせいぜい5人から10人程度でしたが、一度に大人数に体験を提供できるので教育効果として非常に効率がいいと評価されています。

世界の医療教育市場は急速に成長しており、あと5年ほどで22兆円の市場規模になるといわれています。VRは医療教育に不可欠だと見なされていて、その医療教育市場のうち17%程度に相当する3.9兆円が医療VR市場と予測されています。
個人的には、VR機器が進化し今のようなゴーグル形式ではなく、もっと薄いメガネをかけているだけのような利用体験になっていくだろうことを考えると、臨床実習の多くがVRで完結できるようになると予想しています。そのような機器の進化によって、医療VR教育市場に占めるVRの存在感や市場規模も、現在の予測よりさらに大きくなるかもしれません。

ー非常に大きな市場で挑戦していることがよく分かりました。去年から海外にも進出していると聞きましたが、現状の事業の状況はいかがでしょうか?

巨大市場に位置するジョリーグッドですが、事業としても数年後には今の数十倍~数百倍というような急角度の成長ができる手応えを感じています。2022年から海外進出をし始めていて、この1年でアジア、欧米に対して実績が出つつあります。最初の計画では、顧客開拓に3年程度かかるのではないかと想定していましたが、わずか1年で実績が出るまでに到達し、我々自身も非常に驚いています。我々がこれまで解決してきた医療現場における課題は決して日本固有の課題でなく、国境を超えた世界共通の課題であることが確認できた1年でした。

人口の多い東南アジアの国や新興国と呼ばれる国などでは、病院がまだまだ少ない状態です。そのような国では、国策として医療および医療教育を加速していこうという流れが出てきています。しかし、政府として巨額の投資がされているものの、何をすればいいかわからないという国も少なくありません。そのような国にアプローチすれば我々のVRを積極的に導入してもらえるのではないかと思います。最近では、タイでレベルが最も高い国立マヒドン大学に我々のVRが導入され、保健省などの政府も絡んで導入を推し進めています。今やどの国においても国が主体となって、人の生命を支える医療を推進しています。

我々は今後もグローバルな市場を見据え、世界共通の医療教育の課題に挑戦していきたいと考えています。

ーVRを活用した会社は他にもあると思いますが、プロダクトの観点でどのような点が違うのでしょうか?

VRにはCGと実写映像があるのですが、我々は実写映像で人物に憑依できるような撮り方をしていることが特徴です。さらに、そのような映像を、我々が作って納品するのではなく、エンドユーザーである医療関係者自らが医療行為を撮影し、教育映像として弊社のプラットフォーム上でシェアし、医療関係者でその知見を共有しあえるようになっていることがポイントです。それによって手術や看護師向けの病室の機器・設備の扱い、高齢者の家を訪問して行う訪問診療・在宅医療のコンテンツなど、さまざまなシチュエーションが共有され、いつでも自分が学びたい内容をVRで体験できるプラットフォームとして提供されています。
本当に医療の進化を加速したい人たちにとって、最新の医療現場や機器の使い方などの情報を大学や病院内だけで留めていても意味がありません。業界全体が医療の進化に追いつき、現場を最新の状態に保つために、熱意ある関係者によって日々プラットフォームにコンテンツが拡充されています。

高い労働生産性を実現し、「価値化」された組織にしたい

ー今後ジョリーグッドをどんな会社にしていきたいですか?

一言でいうと強い会社にしたいと思っています。強い会社は、価値化された会社とも言い換えることができます。ユーザーの課題を解決したときに非常に高い金額であっても支払う価値があると思っていただけるか、そこに納得感があるのであればそれは価値化された会社と言えます。

日本企業は「価値化」をせず、ただ遠慮をして金額を下げるということをしてしまいがちですが、我々はあえて価格を高く設定しています。なぜなら、それに見合う高い品質のプロダクトをこだわり抜いて作っているからです。
我々はこの分野のパイオニアとして、医療VR教育をビジネスとして成立する市場として確立させ、市場を牽引する責務があると思っています。価値化にこだわり、また品質にこだわることで、この市場を作り、会社を強くしていきたいと考えています。

強い会社にする上で、我々は社員一人一人の価値化にもこだわっています。日本のサラリーマンやエンジニアは、おそらく自分がしている仕事やプログラミングがいくらの価値になっているのか意識できていないと思います。海外では、自分の仕事がいくらになったかという意識は強く、自身の給与交渉も当たり前に行われています。価格が高いということは、その仕事がいかに課題を解決したか、社会に貢献したかを示しているので、そこで遠慮をするようでいけません。

そういった考えですので、社内においても単に労力に対する対価ではなく、あくまで課題解決をしたかで評価していますし、そのように社員も個人の価値化を考えるように伝えています。実際にジョリーグッドでは成果を出している人は青天井で給与が上がっていきます。自分の仕事の価値を認識するとともに、社会に提供している価値に誇りを持って取り組めるのがジョリーグッドの特徴だと思います。

また、個々人や会社の価値化を通し、この市場自体の伸びも期待できます。価値化によって、VR業界に入ってくる人、医療に貢献したい人も増えてくるでしょう。例えば、社内のメンバーでも、選考時点ではVRに対してゲームや建築のイメージしかなかった人もいますが、面接で話を聞いていくうちに「適用する領域を変えるだけで、VRはこんなに価値があるんだ」という驚きと共に入社を決意してもらうようなこともありました。世間に知られていなくとも、実はVRで解決できることはまだまだありますし、VRがまだたどり着いていないところが我々の価値の伸び代です。

VRの可能性を見据え、共に価値化に取り組んでいただける方と一緒に、強い会社にしていきたいですね。

新しいチャレンジが自らを価値化する。チャレンジを大切にする場作り

ーそのような組織を目指す上で、会社としてどんなカルチャーや価値観を大切にしていますか?

チャレンジしやすい環境を大切にしています。医療は経験値が大事だとお話ししたように、人の価値も経験値にあると思っています。その経験値はチャレンジの数で決まると思っていて、毎日同じことをするよりも、新しく何かをやってみたり話してみたり文章を書いてみたりと、自分の中での新しい経験を積むことが大切だと考えています。

ジョリーグッドは、経験を積むために「あれもこれもやってみたらいい」と、カジュアルにチャレンジすることを大切にしており、そのような機会を意図的に作っています。合宿などの社内イベントや全社員の前での発表、対外的な発信など、その人にとっての新しいチャレンジができる場作りをしていますね。年間の貢献者を表彰するアワードやピッチコンテストなど、チャレンジを後押しする制度も多く設けています。

例えば、「Enjoy10%」という制度があります。業務時間の10%を毎週自由にインプットに当てられるというもので、あえて「自分が知らない、興味がなかった」体験をチームで行うことで、新たな気付きや発見、チームビルディングにも役立てようという人事施策です。

例えば、寿司を握ってみたり、ボルダリングを体験してみたり、これまで感じたことがない「リアル」を体験し、VRコンテンツの制作に活かすというような活用がされています。どのような体験をするかはあえて他チームが考えるようにしているので、自分の発想の枠を越えた学びを得られることがポイントですね。そのようにして得た気づきや発見を、最後はチームでプレゼンしてもらい、アウトプットとして形になるようにしています。

これまでは個人のアウトプットやチャレンジを押し上げるための取り組みを多く設けていましたが、個人の力は随分ついてきたなと感じているため、今後はチーム・ジョリーグッドとしてチーム力を上げるために取り組みをアップデートしていきたいなと思っています。

ー最後に、どのような価値観を持った人と働きたいか教えてください。

自分の成長にこだわっている人ですね。目指す目標のために何かしら自分を成長させたいという強い想いがある人がジョリーグッドにマッチすると思います。

加えて、社会に貢献したいと考えている人です。医療への貢献を考えている人はもちろん歓迎ですが、社会に貢献したいが何をすればいいのかわからないという人でも、それを知れる環境がジョリーグッドにはあると思っています。社会貢献を通して自分も成長させたい、チャレンジしたいという熱意を持った方と出会いたいですね。

新しい仲間と出会えることを楽しみにしています。