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父からDV?

母はちょっと話が大きくなっていく人でした。
それも、ボケる前から昔の事を何度も何度も気に入った話はしょっ中出てきます。

その何度もの話の中で、父が私に暴力を振るった!という話がありました。
もちろん、聞いている私も、父も暴力の“ぼ”の字もありません。

父は温和な人で、手を上げることなど一度もなかった人でした。
ただ、九州男子で、家事全般何も出来ません!
出来ていた家事は、お風呂掃除と、電球が切れた時の交換です。あとは猫のトイレ掃除だけです。
出来ない分、隠居生活では、母の運転手をしていました。

で、その話というのが、私が小学生の頃、夕方まで近所の家族と私一人、一緒に出掛けていた事がありました。
確かお祭りに連れて行ってもらったような記憶があります。
夕ご飯にラーメンを食べさせてもらい、お土産に、そのラーメン屋の有名な「餃子」を持たせてくれました。
そこの「餃子」は、子供の私ですら知っていてる、美味しいと評判の物でしたから、初めて食べられる事を楽しみに持って帰りました。

家に帰ると、父も帰ってきていて、晩酌の準備を母がしていました。
母から、「社宅のお風呂が終わるので早く入っておいで」と、急かされ、アパートの端にある社専用の銭湯に、「餃子」を置いて、入りに出かけました。
心は噂の「餃子」の事ばかりでした。

噂の餃子



急いで入浴して帰ると、なんと、父の酒の肴として、「餃子」は消えていたのです。

父は毎晩晩酌


私の口はすでに「餃子」でしたから、泣いて怒りました。
父を揺さぶって怒ったのです。
その時、父も、食べてしまった事の申し訳なさと、もうどうしようもない事実とからか、泣きながらしがみつく私を振り払いました。
私は当時は、とてもチビで、120cm位しかなく、軽かった為か、吹き飛んでしまったのです。
それを見ていた母が、父の暴力と思ったようです。

度あるごとにその時の話しをする母でしたが、なんとなく話す度に大袈裟になっていきました。
振り払ったから、投げたから、投げ飛ばしたから、突き飛ばしたになっていきました。

しかし、元は、母がお風呂を急かさなければ、また、父に酒の肴としてもらってきた「餃子」を出さなければ起きない事件でした。

年取るほどに、同じ話しを繰り返す母でしたが、いい話の時はうなずけるのですが、こんな話では、他人に聞かされません。
何が面白いのか、「餃子」を巡ってのDVだなんて、情けない話です。
いつ、忘れてくれるかいつも願っていました。
父も、黙ってまた始まった。としか思っていなかったようでした。
流石にこの話しを子供達に話した時には、腹が立って、母を私が叱りました。
子供達は、いつも優しいおじいちゃんは、剣道も強いし、本当は怖い人なのかと思ったみたいで、そんな事は一度も無かった事を強調して、フォローしました。

そんな両親も天に召され、こんな話も私の思い出の中だけです。

つい最近、食べ損じていたその有名な「餃子」を初めて食べてみました。
なかなか、食べる機会が無かったからです。
はっきり言って、普通の餃子で特別美味しいとは思えませんでした。
(子供達は、私が作る「餃子」の方が美味しいと言ってくれました)
あんなに父と揉めるほどの物ではなかった事に
ちょっとガッカリでした。

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