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朝のバスと大学生の詐欺師

長らくnoteを書いていなかったけれど、ちょうど時間もあるし、先週はちょっと面白いことがあったから書き記しておきたい。

わたしは毎回バスに1時間ほど揺られて大学に行く。大学に行くバスは5つくらいあって、ちょっとずつルートが違うため、すべてかかる時間が違う。1度街の中でバスとバスを乗り換えて、その5つのなかから一番早く着くものに選んで乗る。最近は村上春樹の新刊を読み進めているのでたまに時間がかかるバスにわざと乗ったりするが、たいてい酔うので、だいたいいつも所要時間が短いものを選ぶ。
先週もいつもと同じように早く着くバスに乗り込み、これからの授業の予習をしていた。数学の要素が入っているため、文系人間であるわたしにはかなり見知らぬ言葉が多くてハードルが高く、なんだなんだと見返していた。
そのとき、がっと体が前のめりになる。わっと声が出て、座っていた席の前のガードに上半身が倒れこむ。なにが起こったかわからない。すぐさまイヤフォンを外す。周りの状況を確認する。バスの前方ガラスが割れていた。どうやら前のバスにぶつかったらしい。心臓がバクバクいっている。運転手が、みんな大丈夫?と聞いてくれ、大丈夫と答える。こんなことが本当に起こるんだ、と思う。割れたグラスを見つめながら、まあ生きていてよかったなと思う。どきどき。

その日の夕方、大学から恋人と帰るために、恋人を待つ。
空が紫に染まっていくのを見つめる(どうしてこの国の太陽は、日没のときに紫になるのだろう)。運転手にも大丈夫?と聞くべきだったかな、と今朝の事故を思い出す。
そんなとき、前をインド系の男性が通り過ぎる。少し目があった気がするが、大して気にも留めず、またぼーっとする。すると、彼が戻ってきて、なにやら話しかけてきた。イヤフォンを外す。今日二度目だ。
「hey do you have a bank account?(ねえ君、銀行口座持ってない?)」
詐欺だ。
直感したわたしは、
「Nope(持ってない)」
とすぐさま答える。
こんなキャッシュレスな国で銀行口座を持っていないわけがないだろう、とわたしも彼も思いつつ、わたしは必死に持っていない口実を、彼はそれをきいた口実を話す。話が長くなるのでわたしたちの口実たちは割愛するが、わたしが口座を持っているし、彼はわたしからお金をだまし取ろうとしていた。断言する。大学でこんなカジュアルに詐欺をする奴がいるとはなあ、と感心してしまった。
そんな彼には後日ショッピングモールで再会したが、どちらも知らないふりをした。また詐欺されなくてよかった。

こんな小説の始まりのようなタイトルをつけておいて、ただの日記です。この国に来てからもう1年ちかく経つけれど、まだまだスリリング。こんなことが起きる生活、フレッシュに楽しんでいきたい。交通事故と詐欺を楽しんでいきたいというのはかなり無理があるけれど、それでも。



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