人を育てる 〜ほめる? 叱る? それ以上に大事なこと〜
⚠️長文注意 4,000文字あります
あと、「愛情」関係の答えを連想した方
すみません、そういう話ではないです。
質問です。
ほめるにせよ叱るにせよ、それが「人を育てる」という目的で行われるとき、どうなったら成功と言えるのでしょうか?
ほとんどの場合、「何かができるようになる」だと思います。(ちなみに「〜しなくなる」は「〜しないという行動ができるようになった」ということです。)
つまり「何かができるようになる」ためのサポートとして「ほめる」「叱る」という行動をしているわけですよね?
では、「ほめる」「叱る」という働きかけは、何かができるようになるための最短距離でしょうか?
もちろん場合によりますが、私にはそうではない場面が多いように見えます。
今日はその辺を図解してみようと思います。
A. 「ほめる」「叱る」のメリットデメリット
まず、ほめること、叱ることで何が起こるのかを確認します。
ちょっとネットで調べたところで言うと
まず「ほめる」のメリット
自信がつき、やる気が出るのでチャレンジする。そして成功体験(困難克服体験)が積み重なれば自己肯定感も上がり、ますます成長する。
ちなみに私はマイペース人間なので褒められても別に心に響きません。「これは相手が喜ぶ行動だ」と認識すれば無理のない範囲で配慮はしますが。
「ほめる」デメリット
・褒められたことにフォーカスし、褒められないことはしなくなる。
・褒められることが当たり前になると、逆に褒められないと落ち込み、自力でメンタルを立て直せない。
・失敗を恐れてチャレンジ出来なくなる。
あくまで私見ですが、「困難克服体験」をさせてそこを褒めるのが成功ポイントのような気がします。
次に「叱る」のメリット
「自分の足りない部分や改善すべき部分に気づき、行動の変化や成長する機会につながる」だそうです。
・・・いや、それ叱るとかではなくて普通に打ち合わせで内省促せば良いのでは?変にプレッシャーかけたら心に染み込まないから長期的に見て成長には貢献しないでしょ。
「叱る」デメリット
・テンションが下がり、パフォーマンスも低下する。
・ミスを恐れてチャレンジ出来なくなる。
・ミスを隠ぺいするようになる。
・周りの雰囲気も悪くなる。
うん。「ほめる」「叱る」、どちらも使い方が難しそうですね。
B.ほめると叱るの間にあるもの
では次に、「ほめる」と「叱る」の位置関係を5段階に分けて整理してみます。
「ほめる」「普通」「叱る」の3段階のイメージがあるかもしれませんが、ここは解像度を上げていきましょう。
① ほめる
ここでは「すごい」という興奮を伝えることとします。滅多にないので頻度少、興奮しているので感情高、理性低とします。加減が分からなかったり「ほめる」ことをテクニックとして使う場合ここに分類される気がします。
② 承認する
ここでは「OKを出す」「良いことを良いと指摘する」こととします。一般的にはこれも「ほめる」に含まれると思いますがここでは別扱いとします。ちょっと良いなぐらいの感じで頻度、感情、理性ともに中程度とします。
「激励」などもここに分類します。
ただし「上手にほめる」人は、ここを使っている割合が高いと思います。
③ 普通に話す
日常会話から業務指示まで、特にほめるでも叱るでもない会話全般です。
④ 注意する
「悪いことを悪いと指摘する」「このままいくと問題になるから治しときな」という感じで、伝える側としては怒ってはいないが内容的には相手を威圧するもの。受け手から見るとこれも「叱られた」となるかもしれない。
⑤ 叱る
明らかに「指摘する」という範囲を超えて大声を出すなど一方的な状況でもはやまともな会話が成り立たない。
頻度は当然「少」、ですよね?
さて、冒頭で「育てる」とは「何かをできるようにする」ことだといいました。
ではこの①〜⑤の中で、「何かができるようになるための打ち合わせができる」状態はどこでしょう?
私は、あまり感情的にならずにある程度理論的に話ができる②〜④だと思います。
C.「何かができるようになる」ことと「ほめる」「叱る」の関係
最後に、何かができるようになるまでの手順を確認しましょう。
図にするとざっくり以下の流れになると思います。
a.課題の明確化
↓
b.解決に向けた情報収集
↓
c.解決案策定
↓
d.解決案を試行し、ブラッシュアップしながら方法論を固める
↓
e.量をこなして方法論を技術として固める
さて、ここに「ほめる」と「叱る」はどう関与するのでしょう?
まず「ほめる」から。
「承認する」は全ての過程で関与できそうですが、「ほめる」は結果に対してなのでdからeにかけての「結果が出はじめたタイミング」でしょうか。うまくいきかけているものを後押しするもの、と言えそうです。
では「叱る」は?
たぶんトンチンカンなことをしているから叱られると思うので、aからbの部分、「これをやらなきゃ」という部分へのサポートだと思います。これは「注意する」もおなじですが、こちらは話の進め方により各段階で指摘をもらうことが可能。
ちなみにもし、叱られた内容が「結果が出ていない」というだけで分析も示唆もないという場合は叱る側の能力に問題がありますね。そんな叱られ方をした方、ご愁傷様です。
さて、これらを踏まえてもう一度、
何かをできるようになる手順を確認します。
ここでは「承認する」は「良いことを良いと指摘する」、「注意する」は「悪いことを悪いと指摘する」から、ここではまとめて「指摘する」と書きます。
a.課題の明確化
↓ ←叱る、指摘する
b.解決に向けた情報収集
↓ ←指摘する
c.解決案策定
↓ ←指摘する
d.解決案を試行し、ブラッシュアップしながら方法論を固める
↓ ←ほめる、指摘する
e.量をこなして方法論を技術として固める
となりました。
…おや?「ほめる」「叱る」より圧倒的に「指摘する」のほうが出番が多いですね。
D.「何かができるようになる」とティーチング、コーチング、モチベーティング
今度はCの「何かができるようになる」と、育成スキルである「ティーチング」、「コーチング」との関係を見てみましょう。
ここでの各言葉の定義は下記の通り。
ティーチング(図では「T」と表記する)
具体的に技術や方法論を「教える」
ひと通りの仕事をこなすのに足りない部分がある時に有効。
コーチング(図では「C」と表記する)
現在の状況と方法論を「整理して」、どの方法論を使うかを「選ばせる」
ひと通りの仕事ができたうえで、さらに上を目指す時に有効。
モティベーティング(図では「M」と表記する)
やるべき「目標」と方法論を整理して、仕事に対する「やる気を出させる」。
成果量を上げたい時に有効。
さてこれを先ほどの図に当てはめてみると…
a.課題の明確化
↓ ←叱る、指摘する、「T」、「C」、「M」
b.解決に向けた情報収集
↓ ←指摘する、「T」、「C」
c.解決案策定
↓ ←指摘する、「T」、「C」
d.解決案を試行し、ブラッシュアップしながら方法論を固める
↓ ←ほめる、指摘する、「T」、「C」、「M」
e.量をこなして方法論を技術として固める
要するに
「ほめる」「叱る」はモチベーティング、
「指摘して考えさせる」がコーチング、
「指摘して足りない部分は教える」がティーチングってことですね。
E.まとめと結論
今までの話をBに当てはめてみます。
① ほめる
できたことを強化する場面で使用する。
上手く使えば他のことに対してもやる気が出るという大きな副産物があるが、乱発すると効果が出なかったり逆に挑戦をやめたりする可能性がある。
そもそも結果を出してくれないと褒めようがない。(経過を褒めることはできるが、結果に結びつかないことが何度も続くとマイナスになるので、そこは「ほめる」ではなく「励ます」が良いのではないか。)
② 承認する
目的地にたどり着いたことを「ほめる」のに対して、「承認」は今までの道順が正しいからこのまま進みなさいという後押しを与えるもの。使用場面も多く使い勝手が良い。
ちなみに結果に対しては、受け手は
認める=評価する=ほめる
と受け取ることが多いはず。
③ 普通に話す
ほめる叱る関係なく、リラックスした雑談で相手の温度感が測れたり、定時経過報告から「指摘」に繋げたりする。見落とされがちだが全体のバランスを左右する重要項目。
④ 注意する
使用頻度の高い「普通に話す」から繋げて「注意を促す」ことで、デメリットの多い「叱る」機会を減らせる可能性のある超重要項目。
ここで心理的マイナスをできるだけ小さくしながら未来に目を向けさせることができるかどうかが全体の成否のカギであろう。
ちなみに「注意する」は「仕事に厳しい」ということで、企業としてはやらなければならないことでありこれはハラスメントには当たらないはず。
⑤ 叱る
努力の方向性がずれている時に使用、正しい課題設定と解決案策定を促す。が、そもそもしっかりした打ち合わせができていれば使用する事態にならないはず。
「注意する」が「仕事に厳しい」のに対して
「叱る」は「人に厳しい」。「世の中が厳しい」のは仕方がないが、同じ船に乗った仲間に対して厳しい必要があるのか?
使用場面も少なくデメリットも多いのでとても扱いが難しく、個人的には使う理由が見つからない。
というわけで、私の結論は
◯ ほめるとか叱るとか気にしてるヒマがあったら打ち合わせや依頼の精度を上げなさい。
◯ 「叱らない」は叱るという行為をしないことではなく、「叱る必要がある事態の発生を未然に防ぐこと」
◯ 「ほめる」は、できる人はやれば良いけど
テクニックとして付け焼き刃でやっても失敗するリスクがあるから、それよりも大事なのは「打ち合わせ」でしょう。
テクニックとしてではなく、相手の良い所探しをしたうえで自然と褒めたくなっちゃうことだけ褒めればいいと思うよ。
ということになりました。
みなさんはどうお考えですか?
長文完読ありがとうございました。
人が育つことでみなさまの未来が
どんどん輝きを増していきますように
ではまた
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