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025 若年性の病気を患っている夫を退院させて自宅に連れ帰るまでの道のり

……と言っても、私の友人とその夫の話

五十歳代後半、定年間近
仕事で失敗することが多くなり、思い立って診察を受けると
若年性のアルツハイマー型認知症

友人も本人も
この診断を受け入れるのに随分と葛藤があったという

発病してから数年間は自宅で暮らす。
私の友人は仕事を続けていたので、彼は日中は独りで留守番。
其れなりに穏やかに暮せていたが、症状が進むに連れ、暴言等が激しくなり、徘徊等の回数も増え、大学病院へ強制的に入院することになる。

この時はまだまだ自分を認識できる時もあり、大学病院では発病してからの自分の日記を研修生に公開したり、研修生から質問を受けたりして、治療と研修にとても協力的であった
彼なりに、自分が変化していくことと向き合っていたのだろう

大学病院では3か月間過ごしたが、まだ症状は落ち着かない。3か月で退院しなくてはならないという縛りがある為、止むなく転院することに

この病気の患者としては若すぎるし体力も有るので、老人の施設はどこからも利用を断わられ、行き先は精神科という選択肢しか無かった

私立の大きなA病院の精神科に転院

入院初日、
「症状が落ち着いたら退院させて家に連れて帰りたい」と友人は伝えたが、doctorには届かなかったようだ

病院の環境にも慣れ、薬の治療も本人に合うもので進められ、暴言などは無くなり、穏やかに過ごす日々。

友人は、外泊(一時帰省)を希望し続けるが許可はなかなか降りない。
何度も何度も希望を出し、主治医とも話し合いの場を求めたが、なかなか実現せず。
主治医と話せ、外泊許可が降りるまで1年かかる
一泊二日の外泊
それも夕方から翌日の午前の早い時間までと、慌ただしい一時帰省(外泊)
丁度1年前の事だ

本人も家族も、外泊を希望しているのに、なぜ許可しない、できないのか!

その後も何度も何度も外泊させたい旨を伝え続けるが、コロナを理由に面会すらできない時期が数ヶ月も続く。
このA病院での面会は、ガラス越しに様子を伺う(姿が見える)部屋に入れてもらえるだけで、ガラス越しに会話は出来るのかもしれないが、手を握る等の接触は出来ないスタイルだという。

友人は「家で一緒に暮らしたい」という希望は訴え続けてきた。

しかし、毎回言われることは
病院「治る病気では無いのですよ」
友人「それは十分わかっています。その上で希望しているのです」
病院「退院は許可できません」
これ以上の会話はなりたたなかったようだ

退院を許可できない理由は言ってくれないのだそう

友人は、退院させたいと希望する自分の考えは間違っているのだろうかと悩んだそうだ。
別のB病院の扉を叩き、悶々とした心の内を吐き出したところ、彼女の脊中を後押ししてもらえることになった
色々な職種のサポーターとも繋がることができた

そんな中、彼はコロナに感染してしまった。
閉鎖病棟で建物から一歩も外に出られない(病院の庭の散歩すら許されない)状態の彼がなぜ、感染してしまったのか!

隔離室に閉じ込められること3日間。
感染により体力が奪われたことは否めないが、ほぼ寝たきりになってしまった。
感染前までは病室内を歩行していたのに、「転ぶかもしれないから」と車椅子に縛り付けられ、立ち上がる気力も奪われた。

コロナを理由にした面会制限が解かれて数カ月ぶりに会った彼はすっかり別人だったと。
それは、彼の病気の特性から仕方のないことと友人は理解していた。

しかし、コロナに感染して3日間隔離室で過ごした事実は知らされていたものの、感染させてしまったことに対しての謝罪は無かったこと、車椅子生活になったこと、立ち上がる気力も無くなったこと、食事はほぼ流動食を全介助で食べていたことは知らされていなかったと、友人は嘆き憤慨していた。

友人はリハビリを希望したが、リハビリは全く考えていないとの回答。この病気はどんどん出来なくなるのが当たり前だからリハビリは不要!という考えのようだった、と友人は更に嘆いている。

退院させたい旨を伝え、何度も何度も面会を希望してきた友人に、スタッフは「車椅子で病院の庭を散歩してみては?」と提案してくれたそうだ。
しかし主治医は許可しない。
理由は
「入院患者が近隣住民の目に触れるようなことは出来ない」
「他の入院患者が窓越しに散歩している姿を見て興奮するかもしれないから」
そして、
「そんなにいっしょに居たいのなら、体育館を貸してあげましょう」
何と言う屈辱だ!と友人は泣いていた

既に味覚も、妻のことも子どもたちのことも忘れてしまっている彼
しかし友人の、家で一緒に暮らしたいという思いは変わっていない

相談に行ったB病院と、入院中のA病院とを繋げたのは友人だ。
入院中のA病院側がこのことをどのように感じたのか
A病院はしぶしぶB病院に紹介状を書いてくれたが、その時のdoctorの言葉は酷いものだったと。
「紹介状を書くが、B病院が受けるはずがない。どうせ断られるんだから、退院させたいなんて思いはやめて、ココにずっと置きなさい」
私は想像した
彼は六十歳代半ばでまだまだ若いから、入院を続けるなら随分と長い期間になるだろう。体力も有るからか、高齢者に処方する40倍もの量の薬を処方されていた時期もあった。それは病院側からすれば担保にもなるのだろう…と

紹介状を受け取ったB病院は快く引き受けてくれた。B病院の後押しもあり、つい先日、二泊三日の外泊が実現したのだ。
送迎タクシー
電動ベッド
車椅子
玄関には簡易スロープ
1日に3回来てもらうヘルパー
等など、準備を整えて。

しかし、A病院は、外泊の前後に念を押したそうだ。
「今回の外泊は、退院を見越したものではないですよ」と。

それでも友人は怯まない
退院後のサポート体制を着々と進めてきた
月水木………9:00から60分ヘルパー
      13:00から30分ヘルパー
                  16:00から30分ヘルパー
火金…………デイサービス
月に1回…ショートスティ
もちろんハード面も

5月10日に退院できる予定までこぎつけたが、果たして本当に退院させてくれるのか!と友人は心配している





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