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【映画評】シドニー・J・フューリー監督『エンティティー/霊体』(The Entity, 1982)

 不可視の霊に強姦される若い母親(カーラ)という性的描写ばかりが取り沙汰される本作だが、これはまごうことなき幽霊屋敷映画である。但し、もはやゴシック風の幽霊屋敷は登場せず、質素で近代的な賃貸住宅(右上図)がその舞台となる。
 興味深いのは映画の後半にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で展開される霊体捕獲作戦だ。大学の実験室にはカーラの家がセットでそっくりそのまま再現され(左図)、さらにそこに監視カメラ等々最新のテクノロジー機器を設置し、霊(音・温度・臭い…)という不可視の存在を記録しようとするのである。
 似たような記録実験が例えば『ヘルハウス』(1973)や『ポルターガイスト』(1982)でも行われていたことを想起したい。登場人物らはそのとき、映画の中における映画撮影隊と化している。そこでは、心理学者や霊媒が監督のような役回りを請け負うことになるだろう(右下図)。

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