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【覚書】ジェニー・リヴィングストン監督『パリ、夜は眠らない。』(Paris is Burning, 1990)

 ジュディス・バトラーの “Gender is Burning” を読む。これは、米ドラッグ・ボール——マドンナのボーギングはここで生まれたダンスの剽窃である——の様子を記録したジェニー・リヴィングストン監督によるドキュメンタリー『パリ、夜は眠らない。』へ向けた擁護論だ。
 まずこの映画を批判したのはb・フックスである。フックスは、白人レズビアンとしてのリヴィングストンが、そこで、黒人ドラッグ文化を帝国主義的に搾取していると批判した。これに対し、バトラーは、かかる立場を監督が自覚していることは明白であって、ボール自体も支配的タームの換骨奪胎を敢行する場として描かれていると本作を評価したのだ。
 この論争における理はフックスの側にあると私は思う。バトラーがいう程には、監督が映画のファリックな仕掛けに自覚的であるようには見えないからだ。即ち、バトラーは、映画の無意識的領域まで映画の意図に帰して評価してしまう。無論、ドラッグ・ボールそれ自体に対するバトラーの読みは刺激的だが。

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