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【映画評】藤井道人監督『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』(2023)。

 Netflixの総集編後半。脚本の神山健治による押井守もどきの観念の入れ子構造(ミザナビーム)には正直飽きたしもうどうでもよいのだが、主人公らがアフリカ系アメリカ人キャラクター、スタンダードを最後まで「おもしろ」と渾名し小馬鹿にし続けたことは見逃せないし許せない。既に総集編前半で草薙が彼の記憶を消していた(書き換えていた)のもいただけない。そのことは、AI開発の背後にあるのは所詮、白人至上主義だとするヤーデン・カッツの主張を想起させるし、「ファンタスティック・ビースト」シリーズ(2019-)においてなされる魔法族(の19世紀的貴族・選民主義)によるマグルに対する記憶操作(消去)にも繋がる所作だ。
 実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)におけるホワイトウォッシュ問題——草薙素子をハリウッド女優スカーレット・ヨハンソンが演じた——もここに繋がってくる訳で、日本でそれが取沙汰されないのは、「日本人」が自分達を無意識裏に「白人」になぞらえているからに他ならない。草薙素子やシマムラタカシが背負わされている無自覚のナショナリズム(名誉白人性とでも言うべきか)に目を向けたい。

〈参考文献〉:ヤーデン・カッツ『AIと白人至上主義—人工知能をめぐるイデオロギー』庭田よう子訳、左右社、2022年。

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