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小説「生きてさえいれば」。

「生きてさえいれば」という小説を読んだ。
まだ大学生の自分にとって非常に読みやすいラブストーリーだ。
フィクションだけあって非常に複雑な過去や人物の関係性が描かれている。
徐々に惹かれ合うというよりはある出来事をきっかけに一気に結ばれていく描写が個人的には印象的だった。
キャラクターの描き方も独特で語彙力豊かな文字から届く人物像は現実にいる人を思わせる。
こんな人が実際にいたらいいなと思わせる、そんな人物像だ。
私は男だから純粋に登場人物である牧村春桜(まきむらはるか)というキャラクターに取り込まれた。
妄想を起こさせる描写や展開が多く、儚くも興奮と刺激のある作品だ。
あまり小説を読む方ではないがかなり楽しませてもらった。
エロティックで過激な描写もいくつかあるのだが、なかなか男には堪らないシーンも多い印象だ。
台詞の一つ一つやストーリーが凝られていて全く遠慮も隙もない作品だ。

非常に読んでいて面白かったので著者について調べてみた。
この小説を書いたのは小坂流加という小説家でデビュー作及び代表作に「余命10年という作品がある。
最近、映画にもなっている。
ちなみにこの映画は先日拝見したが、小説はまだ読んでいない。
この小説家の小説は「生きてさえいれば」の他に「余命10年」しかないのでそっちも読んでみようと思う。
作品がこれしかないのは筆者が難病を患っており、「余命10年」の文庫版の編集後、病状が悪化し、亡くなってしまったからだそうだ。
「生きてさえいれば」は、亡くなった後、両親が見つけることができたので世に出すことができたようだ。
このことから並々ならぬ思いを持った人にはすごい物が描けるんだと感じた。
もちろんこの人の執筆の才があることが前提であるが。
いずれにしてもエンタメとして楽しませてくれる一方で、それ以上に多くのことも学ばせてくれる。
タイトル通り「生きてさえいれば」と思わせてくれる。
いくつか印象に残った言葉がある。

「人は、どんなに悲しいことがあっても、どれほど絶望しても、ひとつの感動や、ひとつの喜びや、ひとつの恋で生きられる」

「生きていなくちゃ、悲しみや絶望は克服できない。生きて時間を進めないことには、感動や喜びや恋に出会えない」

言っていること自体はシンプルだが個人的には刺さる言葉だ。
人は辛いことがあっても一瞬の幸福のために生きることができる。
生きてさえいればきっとそんな瞬間が待っている。
ゆえに簡単に命を放棄しては勿体無い。

生きていなければ、悲しみや苦しみを払拭することはできない。
生きていなければ幸福に出会うことはできない。
死んでしまってはそこで本当の幸を見つける旅が閉ざされてしまう。

そんな筆者のメッセージが込められている。
人生はほんとうの幸を見つける旅。
旅を続けなきゃ永遠にそれは見つかることはないのだ。

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