見出し画像

【バーナム 人心操作の修辞学】1836年9月19日新聞

『ニューヨーク・ヘラルド』の編集者が、ジョイス・ヘスの一件はデマだと語っている。彼の説明によれば、ニューイングランド(人間のあらゆるおかしみの母国)出身の紳士が数年前にワシントンにいたことがあった。
この紳士がバージニア出身の男と西部を旅行したときに、ケンタッキーのパリ近郊の農園を経営するW・M・ボーラーと知り合いになった。旅行者等は、ボーラーの所に30年間も寝たきりの盲目の黒人の老女がいることを知った。彼らが彼女に面会すると、ほとんど生きるミイラだった。
面会の帰りにニューイングランド出身の男はバージニア出身の男に言った。
「彼女を極めて高齢の女性として展示すれば、この生き物で一儲けできるかもしれない」このアイディアはバージニア出身者をその気にさせ、二人はボーラー氏と交渉することした。話を聞いたボーラー氏もこの賭け話に一口のることになった。
 彼女は六十五歳くらいだったが、彼らは百十歳とかなりの高齢に設定した。当初は高齢の黒人に過ぎなかったが、最後にはワシントン家のジョイス・ヘスということにした。大変な苦労してレッスンを受けた結果、彼女はワシントンの習慣、外見、その家族に関する質問に正確に受け答えることができるようになった。
この狡猾な紳士たちは、このジョイス・ヘスのデマで三十二万ドルを稼いだ。

『アレクサンドリア・ガゼット』一八三六年九月十九日号

出典:Alexandria Gadget Sep,19 1836

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?