見出し画像

今年読んだ本 振り返り

今年読んだ本:36冊
お気に入りの読み返し:1冊+Harry Potter シリーズ全巻

 趣味に時間を費やしすぎる罪悪感からの逃避のため、母国語を半封印することにした一年。下手に言い訳を与えたせいで「これは勉強、これは勉強……」と言いながら現実逃避した時間が増えたような気がする。特に原語版で再読したHarry Potterシリーズを読んでいる時の自分は現実逃避の極地にあった。Booktuberとかブックレビューブロガーの方々が言う読書のEscapismとはこういうことかと思い至った。

Harry Potter シリーズ全巻読んだ


 Harry Potterシリーズを読み返して一番よかった〜!!と思うところは、やっぱりJ. K. Rowlingの面白い言葉遊びを浴びるように味わえたこと。呪文はもちろんのこと、魔法族が使う道具やシステムの名前一つ一つにクスッと笑えるようなもじった言葉が使われている。これらの多くは日本語版への翻訳の過程で消失している。日本語版は日本語版で、印象深い言い回しがかなり工夫されていて、魔法族のちょっとかなりへんてこな世界観をうまく表現しているんだなと感心したりした。
 子供から大人まで楽しめるのがHarry Potterシリーズのいいところなので、幼い頃読んだ人にはぜひもう一回読み返して欲しい。好きな話、好きな登場人物が全く違って楽しい読書になるはず。私はハリーが一番かっこいい!と思って憧れた子供だったけど、今は完全に子供の成長を見守る姿勢でしか読めない。今回の読み返しで一番好きになったのはロンの母・モリーとドラコの母・ナルシッサの対比。モリーがハリーのことを「自分の息子と同じ」と言うほど寛大で深い愛を見せたのとは対照的に、ナルシッサは"one and only"なドラコを助けるためにハリーを生かし、主君を裏切る。ヴォルデモートとの対決では愛が重要なテーマとして描かれているので、ナルシッサの愛(故の裏切り)をヴォルデモートが予想できなかったのはハリーの生死を分けるポイントとしてふさわしいなと思いながら読んだ。ナルシッサは悪役サイド(デス・イーター)として登場するけど、彼女の愛って結構共感できるものだと思う。替えの効かない愛する人のために他人を犠牲に…という決断は、私には「ふつうの人」の弱さに見える。勇気ある主人公にはなれないけど、極悪人にもなれない。こういう悪役、大好き。
 Harry Potterシリーズは現行のペーパーバックコレクションがお手頃かつデザインが可愛いのでおすすめ。

アジア文学を知った年


 母国語を封印したことで思わぬ出会いがあった。「アジア文学、アツいぜ!」という話は随所から聞いていたので、いつか読もうとは思っていた。私は母国語以外だとまともに読める言語が英語くらいしかないので、必然的に読む本は英語で執筆されたものか英語に翻訳されたものに限定される。しかし英語で執筆・翻訳されるアジア文学の多いこと!市場が1億人弱のの日本語に比べれば読者層も多様かつ数も大きいし、そりゃ翻訳も進みやすいか。何より英語で英語圏向けに書ける著者がそこそこいる。多様な民族理解の需要が大きいからか、様々なバックグラウンドを持った著者の「自分たちのルーツってこうで、現代人はこう言う葛藤を抱えていて…」という欧米読者を想定した現代文学に出会うことが多かった。去年(?)読んだ We are All Birds of Ugandaはまさにこの系統(のヨーロッパ-アフリカ文学)。電子書籍で買ったけど、大好きな作品なので読み返す時は紙の本で買い直そうと思っている。

https://www.amazon.co.jp/We-Are-All-Birds-Uganda/dp/1529118662


 私がすっかり惚れ込んでしまったAnuk Arudpragsamさんも作品は英語、母国語(タミル語)のそれぞれで発表しているらしい。私が手に取ったA Passage Northは2021年のBooker Prizeでショートリスト入り。スリランカの歴史(特に2000年代の内戦について)を図書館で調べながら読んだ。せっかく私もアジアに生まれアジアで育ったアジア人なので、変化と繋がりを同時に深く感じることのできるアジア文学には来年も積極的に触れていきたい。


 短編だと、今年のThe New Yorkerに掲載されたShuang Xuetaoの"Heart"がすんごい好き。The New Yorkerは週刊少年ジャンプの定期購読と引き換えに購読契約を始めたけど、結局ジャンプは呪術廻戦の続きが気になりすぎて毎週買ってる。

2023年のリーディング・チャレンジ

 今年はThe Booklist Queenさんのリーディング・チャレンジ・リストを使わせてもらった。埋まったリストは28/52 !基本は自分が気になる本を読みつつ、リストに当てはまりそうな本があったら本棚に加える、と言うスタンスでチャレンジ。

 他の人が作ったリストに従うと、自分では触れることのないジャンルや著者に行き当たりやすいのが魅力。私は好きな出版社のホームページやお気に入りの賞の受賞作品、Booktuberのおすすめを中心に本を見つける(そしてAmazonで注文する)ことが多いので、本屋のランダムな出会いよりジャンルが偏りやすい。10代の頃に、本屋に通って内容も知らぬままあれこれ本を手に取っていたような、偶然の出会いが恋しくもある。

The Booklist Queenさんの2024年のリーディング・チャレンジ・リストはこちら。

 いくつか抜き出してみると、以下のような感じ。
13. Title Starts with “B”: 今年のTitle Starts with “A”より難しそう。
26. Bottom of Your To-Read List: これ、去年もあったけど積読解消に助かるお題。
47. Genre You Don’t Usually Read: 私も爆流行りしてるラブロマンスに手を出すべきか。

来年の目標

① アフリカの国を舞台にした本を読む

 現在積読にしている"Africa is not a country"に加え、アフリカ大陸に位置する国々を題材にした本をフィクション・ノンフィクション問わずたくさん読みたい。と言うのも、今年は学会やら何やらでそちらの出身の方とお話しする機会がそこそこあったのだけれど、相手の故郷の気候も地理も文化もほとんど知らない…というのはかなり失礼ではないかと焦ったから。できれば信仰とか食とか、文化的なものがわかる著作に出会えるといい。
 今年読んだところでいうと南アフリカが舞台の"Disgrace"(J. M. Coetzee)が当てはまる。

② 自伝を読む

 これは今年やろうとして全然達成できなかったこと。J. S. Millの自伝とか、買うだけ買って本棚の肥やしになっている。今年出版されたものだとヘンリー王子の"Spare"がすんごい話題になったけど、これもまだ読んでいない。何年か前に読んだアウグスティヌスの告白録もちゃんと読み返したい。

 これを読もう!と計画する時は調子がいいのだけれど、調子が良すぎて遂行可能性の低い読書計画を立てがち。なぜ学ばないのか。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?