見出し画像

父母が認知症と診断されてしまった…相続に備えるポイント

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
本日のコラムは、家族に認知症と診断された方がいる場合に起こりうる相続問題に関してお伝えいたします。
認知症患者は、2025年には700万人に上るといわれています。高齢者人口の約2割程度。もはや身近な問題としてどのご家庭にも起こりえることと言えますので、何かあったときのためにしっかり準備をして臨みたいものです。


まずは遺言の作成を考えましょう

遺言を作成する場合は、遺言能力が必要となります。
遺言能力とは、簡単に言えば「その遺言によって自身の財産や権利がどのように配分・処分されるかを正しく理解できる能力」のことです。
単に遺言を作成できるかどうかだけではないため、医師の診断に加え日常の言動などから総合的に判断されます。
はっきりとした定義が決まっておらず、過去の判例を紐解きながら一例一例対応されているのが実情です。残された家族に争いが生まれないようにするために、公正証書遺言にして残しておくのがベターでしょう。診断された後でも、進行度合いによって早めに手を打っておくのがよいでしょう。
仮に、成年被後見人となった場合でも、民法第973条では次のように規定されていますので作成は可能です。

民法第973条(成年被後見人の遺言)
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2.遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

後見制度の活用

財産管理や身上監護のことを考えると、家族の支援も必要となりますから、後見制度を活用されるのがよいでしょう。後見人が選任されていると、本人が行う法律行為は、後で取消すことが出来ます。例えば、不必要に高額な商品を購入してしまってたり、自宅にとって必要のない契約を交わしてしまっても取消すことが出来ます。ただし、日常生活に関する行為は対象外となります。

後見人が選任された場合でも、後見人が勝手に財産を管理・処分するのではありません。あくまでも後見人のために管理することとなります。例えば、医療費や施設への入居費などをねん出するために本人の財産を使うことが可能です。
よって、例えばお子様であっても、財産を自分以外のものに使うことを後見人が認めることはありません。
上記は法定後見と言われる制度ですが、あらかじめ契約によって成立する任意後見制度も存在します。こちらは契約行為であるため、意思能力が必要ですから認知症になる前に検討しておきたいですね。

近年では、後見人が選任されることで本人の意思決定権が失われるのではという指摘から、本人の意思決定を支援する方向性へ大きく制度自体も変わろうとしているようです。

地域支援とアドバイス

家族は地域の支援リソースや法律相談を積極的に利用することが推奨されます。まずは、各自治体に設置されている包括支援センターを訪ねてみましょう。介護のことの相談や、法律の専門家への道もつなげてくれるはずです。
認知症の家族を支えることは、ときに大きな負担となり得るため、自己の健康と心のバランスを保つことも忘れてはなりません。家族内でよく相談して、抱え込まないようにすることも大切です。

まとめ

認知症の家族が相続に関係する場合、適切な支援と理解が不可欠です。家族全員で情報を共有し、適切な法的支援を受けることで、認知症の家族も尊重され、平和的な解決を見出すことができるでしょうし、家族はより強固な絆を築くことも期待できるでしょう。

身近な相談から複雑な手続きまで、お問い合わせはくろさわ行政書士法務事務所まで。無料相談いつでも受け付けております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?