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クリニックTEN渋谷をプロデュースするTEN EXPERIENCEの新たな挑戦


TEN EXPERIENCE立ち上げの背景

――はじめに、TEN EXPERIENCE(テン エクスペリエンス)立ち上げの経緯を教えてください。

TEN EXPERIENCEは、「誰もが感動する“滑らかなかかりつけ医療体験”を日常に」をビジョンに掲げて、2023年7月に創業した医療系スタートアップです。

私始め創業メンバーは、2021年5月に開業した「クリニックTEN渋谷」のプロデュース・運営支援に携わってきました。

クリニックTEN渋谷では年間3万人を超える患者様から大変良い評価(口コミ)をいただきました。また医療者の知人からも仕組みについて問い合わせをもらうことが増え、多くの医療従事者にとって集患・口コミが課題であることを感じました。そこで、クリニックTENでPoCとして開発/運用してきたシステムや運営モデルを外販しようと、TEN EXPERIENCEを立ち上げました。

――そもそもクリニックTENの構想は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

私は新卒から10年以上経営コンサルティングファームやメガベンチャーで自動車産業、モビリティにおける売上何百億・何千億円といったスケールの商品やプロダクトの企画・経営に携わっていました。

世の中にインパクトのある事業だったので、達成感ややりがいはもちろん感じていました。ですが、「いかに世の中にインパクトを出すか」起点に逆算して価値づくりをすると、どうしてもスケーラビリティやスピード感が優先になってしまい、結果、事業の根底にある価値の部分が置いてけぼりになるような課題感を感じていました。

改めて「どんな領域(お題)」で、「どんなプロセス」で事業をつくっていきたいんだろう、と考える中で、自分や自分の周りの人たちに徹底的に向き合う形でQOLが本質的に高まる事業にコミットしようと思うようになりました。

サウナ友達であり後にクリニックTEN立ち上げを共にする医師と壁打ちしていたところで、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(前野隆司・著)という本を勧めていただきました。そこに「社会的な関係性はコントロールできない。だが健康は自分でコントロールできる。どういう環境においても自分が健康であることが幸せに寄与する」といった内容が書いてあってハッとさせられました。

当時の生活を振り返ると、朝から夜遅くまで働いて食事もおざなりで、断片的ににわか健康ネタを試しては辞めてを繰り返し、自身の健康と正しく向き合えていませんでした。

これから自分や同世代の方々が当たり前のように健康と向き合えるリテラシーやコミュニティを手にできれば幸福度は高まっていくし、社会的な伸びしろもあると感じました。それが、医療の領域に初めて足を踏み出したきっかけでした。

――ご自身の「健康をおざなりにする生活」が原体験になっているのですね。

そうですね。そして、それを解消すべく専門家である医療者・医師にアプローチしようとしたときに、明らかにそこに構造的な課題があると見えてきました

それは、医療に対するアクセシビリティです。そもそも現代の日本では、不調を感じたときにお医者さんにかかるまでの障壁が多すぎる。たとえば、いま平日のこの瞬間に渋谷でお腹が痛くなったとします。すると、

  1. 近くの病院・クリニックを調べるも、患者目線では似たり寄ったりで判断がつかない

  2. 予約導線が複雑、もしくは電話などでしか予約ができず隙間時間で対応できない

  3. 予約ができても予約時間に開始せず、いつ終わるのかもわからない

  4. 診察が始まっても後ろに何十人もが待っていて丁寧な相談はしにくい

  5. 診察後も支払い待ち、薬局にいくとまた処方待ち

といった障壁がある。それを乗り越えられるときしかそもそも医療にはかかれません。
こういった障壁を乗り越えられない多くのケースで「我慢するしかない」となり、結局病院・クリニックにそもそも行かないという選択をする状況に陥ってしまっています。

――そういった状況では、クリニック側にもペインがあるのでしょうか?

はい、クリニック側のペインも深いです。集約すると、「集患」と「運用負荷」の2つの課題があります。

前提として、保険医療機関が定められた保険点数(価格)の中で経営・運営していこうとすると、一般的にはとても多くの患者さんを診察することが求められます。

さらに今後は、賃料・施工費などの初期費用、医療広告などのマーケティング費用、従業員の採用費用などさまざまな費用が高騰していくことが見込まれます。

診療点数の削減等も見通される中で、より多くの患者さんを診るためには「集患」が非常に重要な時代になっていきます。また、保健医療を諦め自費診療に切り替える場合にも同様に、いかに患者さんを集めてくるかも課題となります。

加えて、来院される患者様の年齢層は幅広く、受付・受診のパターンも多岐にわたり、操作するシステムもバラバラ…となると、当然運用の負荷がかかります。

たとえば受付事務ひとつとっても、高齢の患者様が多くいらっしゃることが理由で、患者体験をまったくDX化できていないケースがあります。そういった場合、事務スタッフが受付・問診表の管理・院内連携・支払い・電話応対等を行う必要があります。先にお話した「とにかくたくさんの患者さんを診る」運営モデルの場合、受付事務の運用負荷は甚大です。

また、それらのマルチタスクをこなせる事務業務のスキルを重視するあまり接遇面がないがしろになるとクレームにつながり、「集患」のボトルネックになるという負のスパイラルが働きます。

こういった構造・運営モデルが前提のままでは、どうしてもアクセシビリティは担保できず、結果的に「通院する障壁」につながってしまうのだと感じています。

TEN EXPERIENCEがローンチしたオールインワンシステム「Fanka」

――それらの課題を、どのように解決しようと構想してきたのでしょうか。

TEN EXPERIENCEでは、保険医療機関の経営モデルそのものをアップデートしていくべく、

①「待たない」体験で患者満足度を最大化(ファン化)
②強固な患者基盤を構築することによる集患・増患
③徹底した患者DXを推進することによる業務/スペースの効率化

の3つを実現するオールインワンシステム「Fanka」と仕組みを提供することにフォーカスしています。

先ほど患者側のペインとして「予約が煩雑」「予約してもいつ終わるかわからない」ことを挙げました。従来のクリニックでは受付から処方箋受け取りまで30~120分かかっていましたが、クリニック側にFankaを導入してもらい、患者側がWeb予約・事後オンライン決済に対応できれば、それらの時間を短縮でき患者体験が向上すると考えました。

また、待ち時間を短縮し患者の体験を向上させることで、クリニック側のペインとして挙げた「集患」の課題もクリアできます。+αの効果として、患者さんが主体的にGoogle Map等に口コミを投稿してくれるようになり、さらなる集患も見込めます。

「業務の負荷」についても、オールインワンシステムで解決できると想定しました。たとえばFankaでは、オンライン予約の管理はもちろん、問診表の管理・院内連携・支払い対応をすべてFanka内で完結できます。LINE連携もできるため、患者さんとのコミュニケーションに必ずしも電話は必要なく、電話対応の時間は大幅に削減できます。

さらに予約~支払いまでをFankaを使って一括管理でき、スタッフの業務負荷が小さくなれば、結果的にさらに患者さんの待ち時間を短縮できる可能性もあり、よりいっそう満足度向上につながります。

そして、オールインワンシステムによってWeb予約 / 問診回答率が高まり、受付業務の大半を自動化できると考えました。事後決済比率が高くなり、請求やレセプト業務を現場以外の場所に集約できる――つまり、クリニックにレセプト担当者が常駐せずとも、リモート等で対応できるようになり、効率化が図れると考えたのです。

――TEN EXPERIENCEでは、グループ医院である「クリニックTEN渋谷」を開発拠点とし、いち早くオールインワンシステム「Fanka」を導入し運営を行ってきました。実際に成果は出たのでしょうか?

はい。手前味噌ながら、一定の成果は出たと感じています。

まず、LINE予約・オンライン決済などを実現することで、診察開始までの待ち時間を平均1分59秒(2023年10月現在)、受付から新診を15分まで短縮できました。

スムーズな患者体験を提供できた結果、クリニックTEN渋谷院の口コミは700件を超え、実満足度スコアは、ラグジュアリーホテルを超える15ポイントとなっています。


業務の最小化については、数値でお見せできる変化は生まれていないものの、1日100~150名の患者様を平均2人の事務スタッフで対応できているのは、LINE予約・オンライン決済ができているからこそだと感じています。

クリニックTEN渋谷とTEN EXPERIENCEが協業することで生まれる価値

――TEN EXPERIENCEは、2019年頃から構想をはじめ、2023年8月に対外的にもサービス提供をスタートしました。医療機関向けSaaSとしては「後発」とも言えるタイミングで飛び込んでいこうと思ったのはなぜですか?

予約システムは存在しているものの、患者さんやクリニックの本質的なペインは解決できていないと思ったからです。そもそも予約システムを導入するクリニックの比率はまだまだ高くはなく、いわば「黎明期」。導入を実現しているクリニックの中にも「患者さんがWeb予約したいというから」という理由で始まったがゆえに、予約機能を単体で使用し、ツギハギな運用でカバーしているところも多くあります。

私たちが「誰もが感動する”滑らかなかかりつけ医療体験”を日常に」を掲げて、実現したいのはもっと先の世界。実際、後発どころか「まだ早すぎるのでは?」と言われることの方が多いんです。

クリニックTEN渋谷を開発拠点とし、システム屋ではなく、開業医・医療者の方々とこれからのかかりつけクリニックのブランディングや体験づくりを担って参ります。クリニックのプロデュース・運営とシステム開発を一挙に担っているからこそ、現場のイシューを一人称として捉え、それを解決するためにあらゆるアプローチをとることができます。

――「現場のイシューを捉え、解決する」というと?

たとえば、何らかのシステムを導入してWeb予約が1日100人分取れるようになったとします。「Web予約に対応してほしい」という患者さんの声に応えることができ、それによって集患ができたことにもなるのですが、キャンセル率が10%あったとしたら、1日10人分の空き枠ができてしまいますよね。

キャンセルは、クレジットカード番号を事前に入力してもらったり、24時間以内の予約には「以降のキャンセルはキャンセル料がかかります」とアラートを出してもらったりするだけで防げるのですが、逆にこれを新規患者を増やす初期のフェーズでやってしまうと、予約数が伸び悩んでしまう。

フェーズによってシステムの使い方もチューニングが必要になるわけですが、チューニングを前提にしていないプロダクトだと、やりたいけどそもそも機能としてない、設定が複雑すぎてクリニックの職員では対応できなくなっています。機能はあっても痒いところに手が届かず、結局一つひとつのクリニックにフィットしていないユースケースは多く見受けられます。

当社は、プロダクトが使われる現場を一緒に立ち上げ、リアルタイムでプロダクトを運用し、クリニックと開発側がワンチームで一緒PDCAに回せる体制となっています。真の意味でイシューを解決できるプロダクトとは?を常に考えられる体制を作れていると思っています。

――クリニックTEN渋谷、TEN EXPERIENCEがワンチームとなりオールインワンシステムを開発したことの良さは、他にもありますか?

3年後、5年後を見据えた開発・検証を今のうちから行えることです。

通常は、勿論ヒアリングなどはクリニックに対して行いつつも、実質的にできあがったプロダクトや機能をクリニックが導入し、クリニックからのフィードバックを踏まえて改善をしていく…という流れが一般的です。つまり、検証・改善ができるのは今目の前にあるプロダクトということです。

一方TEN EXPERIENCEでは、5年後こういうプロダクトにしていきたいというロードマップを引き、5年後を見据えた検証を今のうちからクリニックTEN渋谷でやっておく、ということができます。開発拠点・ブランド拠点としてのクリニックTEN渋谷と連携してるからこその強みだと思っています。

地に足を付け、ひとつずつ次世代型のモデル作りを

――TEN EXPERIENCEの今後の展望を教えてください。

マクロ的には、日本の医療予算・医療制度のキャパシティを超えて久しく、一方テクノロジーの進展が加速する中で、5~10年時代で淘汰されるもの、しっかり安定・成長するものがますます二分化される時代がやってきます。

医療業界は先人の方々が脈々と積み上げてきた基盤があり、かつ人の生命に関わることもあり、変化がものすごく起こりにくい業界です。我々はそんな環境下にある医療機関と同じ目線・スタンスを持ちながら、医療機関側のロジックで変革を促し、医療機関の体験や経営モデルをアップデートしていくことが、TEN EXPERIENCEの大きなミッションだと思っています。

これまでクリニック側がDXできていなかった大きな要因に、患者さんの高齢者比率が高く、変えられなかったことがあります。一方で、高齢者に合わせたシステムのままだと集患しきれず、運営負荷も非常に高いため、経営的に困難を抱えるクリニックも増えてきています。

我々は実際に高齢の患者様も含めてクリニックTEN渋谷でDX化できたことを応用し、さまざまな地域、診療科に展開できるよう、ひとつずつ次世代型の経営モデルを実装していきたいと考えています。さらに、他社、自治体などのパートナーシップも含め、よりスケールの大きな座組を作ることで、展開スピードを上げていければと思っています。

――現在のTEN EXPERIENCEには、どのような方がマッチしていると思われますか?

TEN EXPERIENCEは、日本の社会課題解決に資するプロダクトであり、事業を作っています。そのため、参画頂く方々には我々のミッションの共感、さらにその未来を一緒に作る覚悟は必須だと思っています。

その上で、医療現場にハンズオンで入りながら、手を動かし、汗をかくことで、イシューの解像度を高め、かつてないアプローチで課題解決を伴走するような泥臭さ・気概も必要です。これは、営業やCS等現場やクライアントに近いチームに限らず、エンジニアや事業開発・営業等全職種に求めたいマインドセットですね。

併せて、SaaSスタートアップとして、0→1から毎月非連続に成長していく、年間でプロダクトや組織フェーズが大きく変わるような環境下で、プロフェッショナルとして成果にコミットすることと、次のフェーズではアンラーニングして新たなチャレンジにまたコミットしていく素直さを両立できるような方がフィットすると思われます。

そんな世の中の課題とその本質に愚直に向き合い、解決に向けて泥臭く、非連続に成長していける人。TEN EXPERIENCEでは、そういう仲間を求めています!


TEN EXPERIENCEのことをもっと知りたいと思って下さった方は、ぜひ1度カジュアル面談でお話させてください。下記フォームよりご連絡をお待ちしております。

https://forms.gle/BgHuEQGM3bFnNW419


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