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🎬オルカ ネタバレ注意⚠️感想

※この感想にはネタバレが含まれています。


こんなにも悲しみの深い映画だっただろうか?
子どもの頃、45年前に見た『オルカ』は、その約2年前に公開されモンスターパニック映画ブームを起こしたあの『ジョーズ』と同じジャンルに位置した映画だと思っていた。当時は確実にそれを期待して観にいったのだが、今観るとシャチと登場人物の感情が悲し過ぎて心を揺さぶられてしまった。

当初巨大なホオジロザメをシャチが食い殺すというシークエンスもあるし、製作者もこの時期『キングコング』を作ったディノ・デ・ラウレンティスだったので、『ジョーズ』にケンカを売った単純なモンスターパニック映画だと思い込んでしまっていたが、大きな勘違いだったし、この映画の悲しみはなかなか子どもには理解できなかったのだろう。

冒頭幸せに暮らすつがいのシャチの映像にエンニオ・モリコーネの物悲しい名曲がかかり、これから起こる悲劇を暗示する。

カナダ・ニューファンドランドで漁師をするノーランは漁船の借金の返済などのため、一攫千金シャチを生捕りにして水族館に売ることを思いつく。それが全ての間違いだった。
ノーランの撃った麻酔銃はつがいのメスのシャチに命中、船に引き上げられたメスは受胎しており、ショックで赤ちゃんを死産してしまう。
まだ生きているのに海に捨てられたメスのシャチは船のスクリューに自ら突っ込み自殺を図る。
少なからずショックを受けるノーランだったが、船員1人をオスのシャチに襲われ、早くこのことを忘れてしまおうとするのだが、海ではオスのシャチのノーランへの復讐が始まっていた。

ある日突然幸せな生活を奪われたシャチが怒るのは当然で、ノーランの短絡的な行動には同情の余地はない。
ただノーランも身籠った妻を酔っ払い運転で殺されていて少なからず自分とシャチを重ね、自分なりの落とし前をつけようととどこかで決心をしているように見えるところはかつての西部劇の男同士の決闘を思わせる。

そんな短絡的だが、筋を通そうとするノーランをリチャード・ハリスが地味ながら味わい深い人物として好演している。

シャチの復讐はノーランの寄港した村の他の漁船の破壊、あげくはオイルタンクの炎上にまでエスカレートし、女性船員の足を食いちぎる事態にまで至ってしまう。

決戦を決意して海に出るノーランに女性海洋学者のレイチェルが同行する。レイチェルはそもそもノーランにシャチの生態を教えた罪の意識を持っていて、なんとかノーランを助けようと考えている。

シャチに吸い寄せられるように進んできた北極海。シャチも氷にはばまれ、海面に上がり呼吸することができない海。
シャチはレイチェルを除いた全ての人間、そして最も憎むノーランを残酷に殺し復讐を遂げる。
しかし復讐のあとに残ったものは?
シャチは北極海をさらに氷の厚い方向へと泳いでいくところで物語は終わる。メスと子どもを失ったときから、復讐は自分の死で終わることを決心していたかのように。
そんなシャチの気持ちが痛々しく悲し過ぎる。

誰も幸せにならない復讐の物語を、海を感じさせながらもマカロニ・ウェスタンの復讐劇を思わせるエンニオ・モリコーネの悲しみに満ちた音楽が感情を揺さぶる。

モンスターパニック映画として宣伝され、当時確かにそれを期待して観に行ったのだが、年月が経過して観ると、突然幸せを奪われた者の悲しすぎる復讐とその先に待っていた絶望だけが支配する結末に胸が詰まってしまった。
必見の名作。

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