冬花火

間宮征四郎

 あの停留所を通過して、バスが左折する。瞬間、許しがたいほど鮮やかなイルミネーションが窓いっぱいに咲った。黝いものが激流の如く心に押し寄せてくるのを感じる。自壊し、渦を巻き、のたうちまわった。そして或る衝動が蠢く。約束を果たさねばならない。どうもそうらしい。
 大通りを通過するまでの約二十秒間では手紙の内容を読破するに至らなかったが、目をしばたたく間も無くはっきりと、自分の使命が分かった。彼女ほど憎らしいひともそういない。便箋にクッキリと浮かんだ涙の灼けあとがそう教えてくれる。
 私の指は自ずから降車ボタンへ伸びていた。
 
 翌日、朝刊にて「A市大通りで発火事故」との報あり。

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