超短編小説 白い髭の老人
誰も信じないだろう。だから僕は誰にも言っていない。
まだ10代の頃だった。神社の手水で気配を感じた。ふりむくと凄い白い髭の老人が立っていた。
鋭い目つきでこっちを見ている。とりあえずそこからどくと、「望みは叶う」とつぶやき去っていった。
僕の望み、それはいったい何だろう。お金持ちになることか。幸せな生活か。有名になることか。一体、何が叶うというのだろう。
これからなのかな。
就職して結婚して仕事や家庭に追われその老人のことなど忘れていた。
子供も大きくなって就職して結婚した。どうやら孫ができたらしい。
気がつくと定年。振り返るとごくごく普通の生活だった。
あの老人ことを思い出した。十分幸せな人生だった。そんな生活を送れたのは、あの老人のお陰なのかもしれない。
神社に行くと空に何かが光って消えていった。
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